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[B-DIGITALの洗練されたデザインのロビー]
タイのバンコクに、MAYAやレンダーマンをハリウッド水準で本格的に学べるCGスクールがある事をご存知だろうか。
しかも、経営しているのは日本人女性とそのご主人だ。
タイの文部省からも認可を受け、タイのCG教育機関として最先端を行く専門学校B-DIGITALをご紹介しよう。
○ハリウッドでの経験を生かし
筆者は5月、自著「ハリウッドCG就職の手引き」のプロモーション講演ツアーの一環として、タイのバンコクにあるCGスクール、B-DIGITALを訪問した。筆者の英語による講演では、約90人の学生が聴講に訪れるなど、同スクールの盛況ぶりを物語っていた。
バンコク国際空港から車で30分、鉄道BTSの戦勝記念塔駅からも程近い便利な場所に、B-DIGITALはスタジオを構えている。
設立は2006年。ハリウッドのデジタル・ドメインで3Dアーティストとして映画「ザ・デイ・アフター・トゥモロー」「ステルス」等に参加した経歴を持つアンドリュー・ブナグ氏と、夫人の笠井睦子氏が経営している。
笠井氏自身もロサンゼルスの大手ゲーム・デベロッパーPandemic Studioで「スターウォーズ バトルフロント2」「マーセナリー」等の数々のゲーム作品の制作に参加した経歴を持つ。
そんなハリウッドでの現場経験をフルに生かし、B-DIGITALはバンコクでのCG教育分野では稀有な存在となっている。
日本を含め、アジアにはCGスクールは幾多もある。しかし、ハリウッドの現場や北米のゲーム市場で、「本場の、そして本物の経験を積んだアーティストが直接教える学校」は、筆者の知る限りではB-DIGITAL以外には存在しないのではないだろうか。
○"タイで唯一"レンダーマンを教える専門学校
インストラクターはブナグ氏と笠井氏を始めとする5名が担当。学校としては小規模ではあるが、カリキュラムは充実している。
MAYAの入門クラスから始まり、コンセプト・デザイン、モデリング、テクスチャリング、ライティングとレンダリング、キャラクター・モデリング、Zブラシによるモデリングなど、クラスは多彩だ。
「LAの美大アートセンターと同じように、伝統的な手描きのスキルや、コンセプト・デザインにも力を注いでいます」と笠井氏。
中でも特筆すべきは、ハリウッドでは定番のレンダーマンによるライティングのクラスだ。
ブナグ氏のデジタル・ドメインでの経験を生かし、学生達はレンダーマンを駆使したHDRによるフォトリアリスティックなライティング・テクニック等を学ぶ事が出来る。
また、モデリングとライティングに重点を置いたカリキュラムが、ブナグ氏のバックグランドを象徴している。
筆者の印象では、ハリウッドにある有名CGスクール、Gnomonに極めて近いスタイルとカリキュラムを採用しており、ハリウッド水準のCGをタイのバンコクで学べるという、大変ユニークなCGスクールと言える。
○タイで学校を設立したねらい
タイでは、これまで映画VFX、またはゲーム業界のニーズに合わせた、最新のカリキュラムを提供するようなCGスクールは存在しなかった。
B-DIGITALは、タイ国内だけでなく、世界で活躍できるような有望な人材を育成する事を目指しており、卒業生も既に、Gnomon, Savanah college of Art and Design, School of Visual Arts等に留学し、アメリカでキャリアを積むために励んでいるという。
○充実したカリキュラム タイ文部省の認可も
世界水準のニーズに合わせた最新のカリキュラムを提供するため、MAYAアドバンスのクラスは「ワークショップ」と呼ばれ分野別になっている。
カリキュラムの構成としては、まずMAYAの入門クラス、そして分野に分かれてモデリング、テクスチャリング、ライティングとレンダリングのワークショップを個人の要望によってピンポイントで習得できるようになっている。
授業の水準は高く、課題の量の多さもアメリカ大学レベルで、中には授業についてこれない学生もいるそうである。
スクールはオープン以来、どのクラスも好調だという。受講生は現地の大学生の他、社会人も多く、企業やNPOからの特別クラスの依頼も受けており、昨年は現地でのACM SIGGRAPHからレンダーマンによるライティングの特別クラスの要望にも対応した。
タイの美大や有名大学のマルチメデイアの学部と比較しても、MAYAのアドバンス・スキルをしっかり教えている学校は無く、B-DIGITALは最先端を行く存在だ。
また、タイの文部省の認可も受けている事も特徴と言えるだろう。
○学校の今後の展望、日本からも留学可能 学費はリーズナブル
近い将来、次世代ゲームの開発に不可欠な、デベロッパーからのアウトソーシングのニーズに対応できるようにB-Digital Productionsを近々に起動させる予定だという。
タイ国内の学生はもとより、日本を含む国外の学生を増やしていく予定。近々に英語または日本語のMAYA入門またはアドバンスの「ワークショップ」短期集中講座を考慮中との事なので、ご興味のある方は是非、問い合わせてみると良いだろう。
要望にあわせてマンツーマンの個人レッスンにも対応できるという。
ちなみに日本からB-DIGITALへ入学する場合は、今の時点では観光ビザでを取得してからの渡航となるが、将来留学ビザでの受け入れ体制も考慮中だという。
気になる学費だが、現在、MAYA入門クラスは計42時間で、2万5千バーツ。タイ現地では決して安くない授業料だが、日本とタイとの為替の関係で、日本円に換算すると8万円相当(!)と、学費としてはかなりリーズナブルだ。
これに滞在費を入れたとしても、アメリカのCGスクールに短期留学する半分以下の予算でMAYAとレンダーマンが本格的に学べてしまう事になる。
しかも、教えてくれるのは元ハリウッドの現場とゲーム制作会社で活躍していたアーティストだ。
平日はMAYAとレンダーマンを学び、夜は本場のタイ料理やジャズのライブ・ハウスでナイトライフを楽しむ。そして、週末は寺院めぐりやチャオプラヤー河で観光。
そんなCG留学も捨てがたく、魅力的なのではないだろうか。
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(写真右)ヴィラッジ アンドリュー ブナグ [Viraj Andrew Bunnag]
タイで生まれ、香港、シンガポールで育つ。パリの美大ESAG Penninghenで美術の基礎を学び、卒業後バンコクでアーキテクトとして働いていた経歴を持つ。その後、米パサデナの美大Art Center College of Designにて3DCGの基礎を学び、デジタル・ドメインに入社。映画「ザ・デイ・アフター・トゥモロー」「ステルス」等のハリウッド映画に参加した後、タイのバンコクに戻り、CGスクールB-DIGITALを設立。
(写真左)笠井睦子 [Mutsuko Kasai Bunnag]
父親の転勤で小学生で日本を離れ、ロスで育つ。Rhode Island School of Designで美術の基礎を学び、卒業後パサデナの美大Art Center College of DesignのArt Center at Nightにて3DCGの基礎を学ぶ。2003年にPandemic Studioへ参加し、数多くのゲーム作品に参加。中でも 「スターウォーズ バトルフロント2」が有名。現在ご主人と共に活動拠点をタイのバンコクに移し、B-DIGITALを経営。タイでのCG教育分野で活躍中。
笠井氏のPandemic Studio時代のインタビューは「海外で働く映像クリエイター」で読むことが出来る。
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B-DIGITAL SCHOOL (2008年現在)
-CGクラスのパソコン台数は16台(1クラス生徒の人数は16人まで受け入れ可能)
-MAYA入門クラス:計42時間。
MAYAアドバンス・ワークショップ:計12-18時間。
-Autodesk MAYA, Pixar's Renderman for MAYA, Adobe Photoshop のライセンスを所有。
※未だ不法ライセンスが蔓延するタイの社会において、正規のライセンスをパソコン台数分きちんと所有しているのは「極めて稀有」なのだそう。
この記事は2008年現在のものです。学校の連絡先、住所等は予告なく変更になる事もございますので、ご了承ください。
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書かれたものを再編し、ご紹介しています。
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(C)1998-2009 All rights reserved 鍋 潤太郎
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日本でも2008年12月に公開され話題を呼んだフルCG映画「ベオウルフ」。
この作品には数名の日本人アーティストが携わっているが、ライティング・アーティストの賀山未来氏もその1人だ。
賀山氏のインタビューは、月刊CGワールド誌2004年12月号や書籍「海外で働く映像クリエイター」でも紹介されているので、ご存知の方も多い事だろう。
賀山氏は多摩美術大学美術学部プロダクトデザインを卒業後、未来技術研究所にてAliasパワーアニメーターを使った業務を中心に勤務。
その後、ハワイにあったスクウェアUSAにて、コンポジ ターとして[Final Fantasy The Sprits Within]と、[Animatrix Final Flight of the Osiris]に参加。その後、サンフランシスコある大手ゲーム会社EAへ移籍し、ライティング・アーティストと して[Lord of the Rings]3本のゲーム制作に携わった。
2006年よりロサンゼルスのソニー・イメージワークス(Sony Pictures Imageworks)へ移籍し、[Open Season]、[Monster House RealD]、[Surf's Up]、[Beowulf]に参加。現在は新作フルCG映画のライティングTDとして活躍中だ。
これまでに参加した作品
Final Fantasy : The Sprits Within (2001)
Animatrix : Final Flight of the Osiris (2003)
Open Season (2006)
Monster House : Real-D (2006)
Surf's Up (2007)
Beowulf (2007)
賀山氏が初めてフルCG映画に携わったのは、ホノルルのスクゥエアUSAで制作された映画「ファイナルファンタジー」だった。その時に出会ったアーティスト達は世界中で活躍しており、現在の職場にもハワイ時代の顔見知りが多いそうだ。
ここ数年はフルCGの映画の制作に携わる機会が多いという賀山氏だが、分業制が進むハリウッドの制作スタイルの中で、担当しているのは"ライティングTD"。
手掛ける範囲は、ライティングとコンポジットという、「絵を仕上げる」詰めの部分に相当するが、その一連の作業を担当してみて「一言でいうと、非常におもしろい」と賀山氏は語る。
分業の中での「ライティング担当」の役割は、渡されたデータや画像を尊重し、アーティスト達とコラボレーションを重ねながら、ショットの仕上がりがより良くなるように詰めていく事。
しかし、同じライティングTDでも、実写との合成が前提となるVFX映画を担当する場合と、フルCGの映画を担当する場合とでは、求められるスキルがそれぞれ異なるという。
VFXの場合は実写プレートに合わせてCGのライティング作業を進めていくが、フルCG映画の場合はセットアップをゼロから構築していく事もあり「よりセンスが問われる」という。ショットによっては、賀山氏も自分でシェーダーをカスタマイズする事もあるそうだ。
一般に、ハリウッドの大手VFXスタジオでは、市販の3Dアプリケーションではなく、自社開発ツールで作業を行うケースも少なくない。
自社開発ツールをパイプラインに組み込む利点は、カスタマイズされたプラグインなど、開発サイドからのアップグレードが頻繁に行える事、そして、常にメンテナンスが入り易く、バグフィックスが敏速に処理される点がある。
賀山氏がライティングの作業で使用しているツールも自社開発ソフトだというが、そのツールの名称はなぜか日本語の名前がつけられているのだそうだ。
さて、フルCG映画の制作では、レンダラーがその出来を左右する事も少なくない。賀山氏によればハリウッドにおける一般事例では、多くのVFXスタジオがレンダーマンを採用しているという。
その理由として、モーションブラーが美しく、レンダリング時間が速いという利点に加え、レンダーマンの経験が豊富なアーティストが数多く存在するハリウッドではプロジェクト毎にスタジオを渡り歩くフリーランスも多く、レンダーマンのパイプラインを持つ事が好都合な部分もあるという。
フルCG映画制作の現場では、アーティスト達の根気強く地道な作業が華やかなハリウッド映画を支えている。賀山氏は、その舞台裏を垣間見つつ、「才能溢れる人材に出会えるのも貴重な体験」だという。
今度もフルCG映画への参加が予定されているという賀山氏。映画館で、エンドクレジットの中から賀山氏の名前を見つけるのが今から楽しみである。
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