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映像ジャーナリスト 鍋 潤太郎の随筆による、ハリウッドVFX情報をいち早くお届けします。

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先日、ロサンゼルスにあるエフェクトハウス、セントロポリス・エフェクツ社が苦境に立たされた事をお伝えしたが、2003年が明けたばかりの今月初頭、同社は非情にも閉鎖に追い込まれ、5年間の歴史に幕を下ろした。

同社が入居していた複合スタジオは、ソニーの映画スタジオに程近い、カルバー・シティにある。

その一角にある、「スタジオB」と呼ばれる広大なオフィス・スペースでは、入り口にあった社名のプレートも既に外され、その扉は堅く閉ざされ、ヒッソリと静まり返っていた。百人規模のCGスタッフが出入りしていた昨今が、まるでウソのようである。

同社の膨大な機材は、近々に競売に掛けられる見通し。

ここで、(先日の記事と重複する部分もあるが)同社の歴史を振り返ってみよう。

セントロポリス・エフェクツ社は、映画会社のワーナー・ブラザーズより映画「マトリックス」の続編("The Matrix Reloaded"2003年5月全米公開予定 / "The Matrix Revolutions"2003年11月全米公開予定)を受注し、準備を整えていた。

しかし、先月、同社の親会社であるドイツのポストプロダクション、Das Werk社が倒産手続に入った影響により、ペイロール(給与)の支払いが停滞した事等を重く見たワーナーが、同社に依頼していたすべてのエフェクトショットをソニー・イメージワークス社にシフトする事を決定。

これにより、同社は2002年のクリスマスを前に苦境に立たされた格好となり、その経営は正念場を迎えていた。そして年が明けた直後、正式に閉鎖が決定した。

セントロポリス・エフェクツ社は、映画「インディペンデンス・ディ」等で知られる映画監督ローランド・エメリッヒ、脚本家&プロデューサーのディーン・デブリンらによって97年に設立され、セントロポリス・エンターテインメント社のビジュアル・エフェクツ製作部門という位置づけで、これまでにも、Godzilla / Stuart Little / The Patriot / K-PAX / Vanilla Sky /Scorpion King 等、数々の映画のデジタル・ビジュアル・エフェクツを手がけてきた。

しかし同社は2001年にドイツのポストプロダクション、Das Werk社に売却された。

最近では本欄でも夏にご紹介した"巨大なクモが人間を襲う”というB級映画「Eight Legged Freaks(邦題:スパイダー パニック!)」(写真)のCG及びエフェクトを担当したが、同プロダクション終了後はCGのキャラクター・アニメーターを大量にレイオフする等、日頃から「贅肉落とし」を推進、常に軽量化を図る等の慎重な経営姿勢も伺えていた。

筆者は、同社がインターネット等を通じ、この「マトリックス」シリーズの為の追加スタッフを募集している広告を何度か目にしており、その矢先の出来事に驚きを隠せないでいる。スタッフには筆者の友人も含まれていた為、なおさら他人事には感じられなかった。

2003年度、ハリウッド映画市場はテロ等の逆境にもメゲず、メガトン級のヒット作が続いたお陰で史上最高の売り上げを記録。ビジュアル・エフェクツを含んだ特撮関連作品の予定製作本数も向こう数年順調の伸び、という明るい兆しの中で、今回のこのニュースである。

最近、「バビロン5」で有名な中堅のファウンデーション・イメージング社が閉鎖されたばかりだが、大手エフェクト・スタジオの閉鎖は久しく無かっただけに、非情に残念な出来事である。


 


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(C)1998-2009 All rights reserved  鍋 潤太郎

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アメリカの複数メディアが報じた所によると、コダック傘下の大手デジタル・ポスト・プロダクション、シネサイト・ハリウッドが近々にビジュアル・エフェクツ(以降VFX)部門を廃止すると発表した。

これらの報道によると、現在同社では映画「Xメン2」のエフェクト及びポスト・プロダクションを鋭意進行中だが、この「Xメン2」の納品が終了後、VFX部門を廃止するとの事。

廃止の理由はまだ明らかにされていない模様で、寝耳に水のニュースにハリウッドの映像関係者はただただ驚くばかり。ここ最近、特に同部門の景気が悪いという噂があった訳でもなく、「プロジェクトが取れないらしい」等のマイナス要素の話題が聞こえて来た訳でもなかった。

筆者の同僚の1人で、過去にシネサイトでの勤務経験を持ち、今でも同社に多くの友人がいるという某イギリス人は「廃止?それはないだろう。昨日もシネサイトのエフェクトの友人に会って「Xメン2」が忙しいというグチを聞いたばかりで、そんな話は一言も出なかった」と否定的だったが、2月28日付のハリウッド・リポーター誌の記事を読んで仰天していた。業界の中でもその位、突飛なアナウンスだったのである。

コダックは80年代後半にシネオン・システムのデベロップを開始、それらを駆使して92年8月にコダックのデジタル映像センターとしてシネサイトをオープン。

フィルムのスキャン&レコーディング、デジタル・インターミディエト及びデジタル・リマスタリング等を業務の要としていた。それに付随する形で設立されたVFX部門では、得意のコンポジット及び3DCGを駆使し、数々の映画用にエフェクトを製作していた。

今回、廃止がアナウンスされたのはこのVFX部門で、これによって同社は元来の「生業」であるデジタル⇔フィルムのI/O、デジタル・リマスタリング等に専念する事になる。つまり、シネサイト・ハリウッドの全てのデジタル関連部門が廃止されるという訳では決してない。

一方、対照的なのが、同じくコダック傘下のシネサイト・ロンドンである。先日の本欄でも紹介した007の最新作「Die Another Day」でも活躍し、最近も更に人員を増強する等、ヨーロッパを代表する大手エフェクト会社として君臨中。

ハリウッドのメジャー作品の仕事で多忙な日々を送っている。同一企業グループ内でのこの違いは、一体どうした事なのだろうか。

ハリウッドでは、昨年から最近にかけて、ディズニーのTSL(The Secret Lab)の廃止、ステーションX、ファウンデーション・イメージングの閉鎖、そしてセントロポリス・エフェクツの倒産と、残念なニュースが続いたが、大手ポスプロであるシネサイトのVFX部門の廃止はこれまた衝撃的だ。

今現在、ハリウッドの映画業界は決して不景気という事はない。それどころか、昨年は興行収入が過去最高を記録する等、絶好調である。

今、巷で聞かれているのは「イラクとの戦争が始まりそうなので、海外ロケを控えて国内で撮影する映画作品が増えそうだ」というニュース位で、ここにもポスプロ業界にはそれ程のネガティブ要素は見当たらない。エフェクトを含んだいわゆる特撮映画や、大作も続いている。

それとは裏腹なこの実情との因果関係は、筆者は残念ながらまだ完全に掌握しきれていない。

1種の淘汰なのか?製作コストの高騰が原因なのか?南半球やヨーロッパに大作のポスプロが流れている為か?様々な推測だけなら簡単だが、欧米を絡めた複雑で様々な要因が絡んでいるだけに一筋縄にはいかない。

このあたりは、今後も慎重に見守る必要がありそうである。
 


 
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