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映像ジャーナリスト 鍋 潤太郎の随筆による、ハリウッドVFX情報をいち早くお届けします。

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 ○はじめに

今朝、いつものようにロサンゼルスのフリーウェイを走っていたら、「ポケモン・カー」に遭遇した。

黄色のワーゲンに装飾をほどこし、「ポケモン」に見えるようにしている、既にニュースやマスコミにも登場した「ポケモン」のキャンペーン用の車だが、道を走っている他のドライバー達が、みんな思わず指を差して喜ぶ位の“人気者”であった。

こんな車が堂々とロサンゼルスの町中を走り回る程、今アメリカでは日本のアニメーションが浸透しつつある。ここでは、“ジャパニメーション”について述べる事にしよう。

 

○     “ジャパニメーション”(Japanimation)のルーツ

日本でも耳にするこの言葉。Japanese Animationを略して出来た造語であるが、既にアメリカでもお馴染み。巷では日本のアニメに関する雑誌(写真)も発売されており、

もはや映像業界や”OTAKU”の間だけではなく、一般にも浸透しつつある単語である。だが、ここまで辿り着くには長い道のりがあった。

アメリカへの日本製アニメの輸出は1960年代から始まり、「鉄腕アトム」「鉄人28号」「エイト・マン」「マッハGO!GO!GO!」「ガッチャマン」等がアメリカのテレビで放映されていた。しかし、その頃は「日本製アニメ」である事を伏せ、英語吹き替えで地味に放送されていた。

“ジャパニメーション”の転機は、1975年の「グレンダイザー」にあるらしい。

この、永井豪原作のロボットのアニメーションが、1978年にフランスで放映された。

すると、フランスのチビッ子達に大ブレイク。それがヨーロッパに広がり、そしてアメリカへと飛び火。日本のアニメや、“東映の戦隊もの”がアメリカで売れるきっかけとなった。

アニメではないが、東映とテレビ朝日が制作した「恐竜戦隊ジュウレンジャー」は、アメリカ向けに再編集された後「パワー・レンジャー」として1993年より全米で放映され、これがまた大反響。

この番組を全米のテレビに配給しているサバン・エンタテインメント社の現社長が、1978年当時にフランスで大ヒットしたアニメ“GOLDORAK”(グレンダイザー)のフランス語主題歌を作曲した人物、ハイム・サバン氏なのである。  

○     アメリカで“人気の作品”は何か

筆者が80年代後半にアメリカを観光で訪れた時、ホテルでテレビを見ていたら「ヤッターマン」(タツノコプロ)がスペイン語で放送されていて、思わずヒックリ返った事があるが、タツノコプロの作品は、北米では根強い人気がある。無国籍風の作風が、吹き替え後も違和感が少ない為かもしれない。

タツノコプロの「マッハGO!GO!GO」は、アメリカで最も人気のある日本製アニメーションの1つであり、「スピードレーサー」の名で未だによくテレビで放送されている。

また、松本零士の「銀河鉄道999」も人気があり、テレビのサイファイ・チャンネル(Sci-Fi Channel)等で放映されているのを時々目にする。また、「宇宙戦艦ヤマト」も、“スター・ブレーザー“の名前でビデオ化され、ファンの支持も熱い。

数年前の例では「セーラームーン」が一大ブームを巻き起こした。オモチャ屋へ行けばセーラームーンの人形や玩具が並び、女の子に人気。放送の終了が決定した時も、全米でファンの猛反対運動や、放送終了に抗議する署名運動まで起こり、もう大変な騒ぎであった。

しかし、ここまではアニメファンや“OTAKU”に支持される事が多く、まだまだ一般の視聴者とのギャップは残っていた。

○「ポケモン」の超大ブレイク

  98年の9月より、ニューヨーク地区で放送が始まった「ポケモン」。それから約1年足らず。小学校では、上級生が「ポケモンカード」を下級生から脅し取る恐喝事件が発生する程の大ブレイク。今まで、ジャパニメーションといえば、一部の層に支持されるだけのモノであったが、これが一挙に一般の視聴者層にも広がった。

  スーパーへ買い物にいけば「ポケモン」、オモチャ屋に行けば「ポケモン」、映画館に行けば映画「ポケモン」の告知広告、そして道路には「ポケモン・カー」。

  もはや、全米の子供達の中で、“ピカチュウ”の名前を知らない子などいないに等しい。これは、もうホンモノである。“街を歩けばポケモンにあたる“状態の大ブレイク。

      とうとう、“ジャパニメーション”が、一般の視聴者層までに受け入れられる時代に、ようやく突入したのである。

 

○     おわりに

いよいよ、10月29日より、宮崎駿監督の「もののけ姫」が全米で公開の運びとなる。それに先立ち、名門UCLAの映画学科では、定例のスクリーニングの中で、10月初頭のプログラム※にスタジオ・ジブリの長編アニメの数々をこぞって上映し、好評を博していた。

 

※Studio Ghibli: “The Magic of Miyazaki, Takahata and Kondo"(9/30-10/10)

UCLA Film and Television Archive

Schedule of Screenings and Events

PRINCESS MONONOKE(もののけ姫)

GRAVE OF THE FIREFLIES(蛍の墓)

NAUSICAA OF THE VALLEY OF THE WIND (風の谷のナウシカ)

POMPOKO(平成狸合戦ぽんぽこ)

WHISPER OF THE HEART(耳をすませば)

ONLY YESTERDAY(思い出ぽろぽろ)

CASTLE IN THE SKY(天空の城 ラピュタ)

PORCO ROSSO(紅の豚)

MY NEIGHBOR TOTORO(となりのトトロ)

KIKI’S DELIVERY SERVICE(魔女の宅急便)

 

折しも、11月12日には映画「ポケットモンスター:ミューツーの逆襲」のアメリカ版が全米公開される。日本製の長編アニメーションが、アメリカの一般の劇場で配給されるようになる迄には、数多くのハードルがあった。

これまでは、せいぜい公開されても短館上映や、アート系シアターでの限定上映が関の山だったのが、とうとうメジャー公開される時代が到来したのである。


 


 


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(C)1998-2009 All rights reserved  鍋 潤太郎

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Pixar社   Bill Reeves氏による 「メーキング・オブ・バグズライフ」(02/11/1999)

   
筆者がカナダの彼方(自爆)トロントを訪問中、シーグラフの地方分科会であるトロント・シーグラフ主催による、Pixar 社のBill Reeves氏による講演が行われた。その内容を紹介しましょう。

 

同氏はカナダのトロント出身、Pixar社のテクニカル・ディレクター。1988年には「Tin Toy」でジョン・ラセター氏と共に、アカデミー賞の”Best Animated Short Film”を受賞する等の、輝かしい功績の持ち主であります。

 

(Pixar社のホームページには、ラセター氏とReeves氏がオスカー像を握っている写真も掲載されています)

 
この日は、たまたま帰省中のReeves氏が、母校のトロント大学にて講演するというものでした。


では、その講演の模様を、かいツマんでご紹介。

 

〇ストーリー・ボード、美術設定について

 

  「トイ・ストーリー」の時もそうでしたが、ストーリー・ボードは大変重要です。すべてはここから始まり、動きをつけ、最終的に完成となる訳です。

 

  また、手書きのイメージ・ボードも、膨大な量が用意されました。これには、各キャラクターの細部の形状や質感を「どのように見せるのか」、そして色指定などなど、 詳細に渡る設定が、事細かに且つわかりやすく、指定されています。

 

  たとえば、グラスホッパーにしても、各キャラクターによって「容姿」には様々なバリエーションを持たせてあり、これについても詳細なイメージ・ボードが用意されました。

 

〇モデリングに関して

 

  各キャラクターは、すべて最初にクレイモデルに起こしてます。これは、各アニメータにキャラクターの形状やイメージを伝える為の、最良の方法とも言えます。

 

  モデリングにはAlias Design Studioや、3次元デジタイザ等を使用しています。

 

  プロップ(映画で言う、大道具・小道具に相当)のモデリングには、かなりの時間を費やしました。葉っぱ、枝、木、等の膨大な量のプロップのモデリングをこなしました。

 

 

 

〇ライティングについて

 

  アート・ディレクション・チームによる「ライティング・スクリプト」と呼ばれるカラーの絵コンテが用意されました。これにより、ライティング・チームは、自分達がどのような方向性で各シーンの作業を進めれば良いのか、が視覚的に理解できるようになっています。

 

〇テクスチャー

 

  テクスチャー・アーチストが、膨大な量のテクスチャを製作しました。

 

 (「トイ・ストーリー」のスライドを観ながら解説)

 

  これは、「トイ・ストーリー」のウッディの例ですが、顔の皮膚、顔のハイライトマップ、保安官のバッチ、ベルトジーンズのバンプ、ジャケットの牛模様、などなど。

 

  このように、用途に応じて必要なテクスチャを用意しているのです。

 

  (「バグズ・ライフ」のスライドを観ながら解説)

 

   これは、本編の例です。

 

   この、劇中に出てくる、ねじれた形状の「木のアーチ」は、ジオメトリにテクスチャマップを施したものです。

 

   この、グランドキャニオンのような渓谷のシーンでは、三次元ペイントを多用しています。

 

 

〇レンダーマンのシェーダー開発

 

  レンダリングは、我々が開発している、おなじみの「レンダーマン」によるものです。

 

  この作品専用に、膨大な量のカスタム・シェーダーが開発されました。

 

  (スライドを観ながら解説)

 

  これは、グラスホッパーの質感表現の例です。

 

  凸凹感を出す為にディスプレイスメント・マップ用のシェーダーを開発しました。グラスホッパーには、他にも複雑なシェーダーが開発され、使用されています。

 

  また、自然界の表現にも、専用のシェーダーを開発しました。例えば地面に無数に埋まっている小石群のシェーダー等、それぞれ用途に応じて開発しています。

 

  中には、せっかく苦労して開発したのに、本編で「ものの見事」にカットされていて、とっても嬉しい思いをした事も多々ありました。(場内爆笑)

 

〇アニメーション

 

 (ビデオを観ながら解説)

 

  まず、各キャラクターが歩いているアニメーションをサイクリックで製作しました。

 

  キャラクター達の「個性」が出るようにアニメートし、これを見ただけで、そのキャラクターがどんなヤツなのか、を理解できるようにしました。

   

  これは、サーカスの1シーンで、ナナフシのキャラクターがお手玉をしているところです。このように、最初はラフな動きをつけ、調整し、最終版となる訳です。

 

〇「群れ」のアニメーション

 

  この作品には「群れ」のシーンが多く登場します。その為に、オリジナルツールの開発を行いました。1つの動きをタイミングやパターンをずらし、各キャラクタに振り分けたり、複雑な曲面の地面の上を「群れ」が歩いた際、個々のキャラクタの足が地面のジオメトリにめり込まないようにするツール、などなど。

 

  しかし、ここでも苦労して開発したのに本編で切られ、嬉しかった事が沢山。(爆笑)

 

〇質疑応答(抜粋)

 

  Q:最も苦労した点は何ですか?

  A:技術的な部分よりも、人間関係!(笑)

      大勢のスタッフが働いているし、このような巨大プロジェクトの場合、進むにつれ「いろいろな事」が起ります。それが大変と言えば、一番大変でしたね。

 

  Q:ジョブスをどう思いますか?

  A:スティーブ?(ニコニコして、しばし沈黙)。彼は、我々の優れたスポークスマンで~、非常によくやってくれています。そりゃ、いろいろ社内ではあるけど(笑)

      最近は、 Apple社 の為に時間を裂く事が多いみたいで(笑)、忙しい人ですよ。

 

  Q:「アンツ」と内容が似ている、と言われていますが。

  A:う~む。コメントは控えましょう(笑)

 

       (とは言いつつも)

 

      ディズニーのカッツッェンバーグがDreamWorksに移った事が起因するのはご想像のとおり。

 

      プロダクションがスタートした後も、どっちの劇場リリースが先か、内容が似ている、などで多少の政治的なゴタゴタがあったのは事実ですけどね。

 

      現場にはあまり関係なかったかな。納期を守らなきゃディズニーに殺される(笑)、我々にはそっちの方が重要だったし。

 

      もう、これ以上言わない(笑)ハイ、次の質問!

     

  Q:Pixarの今後の予定は?

  A:現在、「トイ・ストーリー2」が、今年の感謝祭シーズンの11月24日に、全米公開に向けて製作が進められています。お楽しみに。

 

 

  感想:

 

  全体的に、「広く浅く」の講演で、もう少し各ジャンルの深い部分が見たかったという印象は残りましたが、2時間の講演という時間的な制約等を考えると、バランスの取れた講演であったと思いました。

 

  Bill 氏は気さくな方で、講演も肩の凝らない、終始リラックスムードで行われました。

 

  文中にはありませんが、Pixarが製作した、謎のジョークビデオ(「ラセター教授」がぐるぐるメガネを掛けて、昆虫採集に出かけるというもの)が流れたり、スタッフが作ったリップシンクのテスト(放送禁止用語がビシバシ)なども流れ、楽しい講演でした。

 

  最後の質疑応答は質問者がメチャクチャ多く、僕も頑張って手を挙げたのですが、残念ながら一度も当たりませんでした。日本代表(笑)としては悔しかったです。

 

 

 

 


 
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