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映像ジャーナリスト 鍋 潤太郎の随筆による、ハリウッドVFX情報をいち早くお届けします。

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■08年、10年に買収されたVFXスタジオ2社が統合へ

 6月1日、ハリウッドのデラックス・エンターテインメント・サービスグループ(以降デラックスと表記)は、同グループ傘下にある2つのVFXスタジオ、メソッド・スタジオとCISを統合、社名を「メソッド・スタジオ」へと統一したと発表した。

 この統合により、メソッド・スタジオ(以降、メソッドと表記)は体制を強化し、ハイエンドのビジュアル・エフェクツを映画とコマーシャル市場へ提供していく構えだという。

 デラックスは、北米、欧州、オーストラリアに拠点を持つ総合ポストプロダクション・グループ。傘下にEFILMやCOMPNY3などを持つ。

 ハリウッドのCISは2008年1月に、そしてサンタモニカのメソッドは2010年秋にそれぞれデラックスに買収され、これまで同社傘下のVFXスタジオとして別々に運営されて来たが、ここに来て社名を統一する運びとなった。

 デラックスのクリエイティブ・サービス部門代表であるステファン・ソネンフェルド氏は「我々デラックスはCISとメソッドの統合により、より洗練された サービスを世界各地の拠点でクライアントに提供致します」とコメントしている。ソネンフェルド氏は、メソッドと共にデラックス傘下になったサンタモニカの ポスプロ「Company 3」の元社長であり、著名なDIカラリストでもある。

 メソッドの副社長であるドン・グラス氏は「この統合を機に、よりアーティスト主導のVFXスタジオというカラーを出していければと考えています」と語 り、「今後は、映画スタジオや映画監督、そして広告代理店等のクライアントと共に、最先端のソリューションを生み出していく構えです」と付け加えた。

 ドン・グラス氏は、ニュージーランドのWETA DIGITALのCTOだったポール・ライアン氏を、テクノロジー部門の新しい副代表としてメソッドに招き入れ、全社的なパイプラインの改良を進めていく計画だという。

 CISは買収前、ハリウッドの本社に加え、バンクーバーにあったレインメーカー・スタジオを買収しCISバンクーバーとして発足させ、ニューヨークやロ ンドンにも拠点を構えていた。今回、これらの世界各地にある拠点をメソッドに統合した事で、ロンドンやバンクーバー等の政府が実施している税制優遇制度の 恩恵を受けつつ、ワールドワイドでの制作体制を実現出来た事も強みだ。


■ハリウッドで進むポストプロダクションの再構築

 メソッドが最近VFXを手掛けた映画作品には「The Tree of Life」「ワイルドスピード5 」「パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉」などの話題作が並び、テレビコマーシャルの分野でもブリジストンのスーパーボウル用スポットや、VESア ワードを受賞した「Halo Reach: Deliver Hope」等がある。

 ご存知の読者の方もおられるかも知れないが、メソッドが拠点としているサンタモニカのスタジオは、一昔前はPOP(パシフィック・オーシャン・ポスト) というビデオ・ポスト・プロダクションであった。POPは映画「ボルケーノ」の頃よりVFXに参入した経緯がある。その後アセント・メディア・グループ傘 下のRIOTに買収され、建物の看板がPOPからRIOTへ変わった。更にその後、アセント・メディア・グループがメソッドを買収し2008年に12月に はRIOTとメソッドを統合、そして昨年のデラックスによる買収という、いかにもアメリカらしく買収による変革を遂げてきたVFXスタジオなのである。

 今回の統合で、「メソッド」の名前を残すか、それとも全く新しい社名にするかで社内公募が行われ、実際に新社名のアイデア等もいくつか出されたが、なかなか「メソッド」を超える逸案が登場せず、最終的に現在の社名を残す形に落ち着いたというエピソードがある。

■ロサンゼルスの拠点拡大に動くデラックス
 このように、中堅VFXスタジオを買収しながら成長しているデラックスだが、今回の統合がハリウッドの中でどのような意味を持つのか、今後気になるところだ。

 今、全世界のVFX業界はカナダのバンクーバーに注目している。しかしデラックスは地元ロサンゼルスのVFX部門を固めようとしており、ある意味ユニークな戦略に出ていると言えるだろう。

 もっとも、大手VFXスタジオと中堅VFXスタジオとは、手掛ける作品の規模が異なる為、新生メソッドが大手VFXスタジオと仕事を奪い合うような事はないが、今後の動向から目が離せない注目株と言えるだろう。


<デラックス (Deluxe)>
 正式名称はデラックス・エンターテインメント・サービスグループ(Deluxe Entertainment Services Group Inc.)
 総合ポストプロダクションとして、これまでにもフィルム現像やDIなどのサービスを大手メジャースタジオに提供してきた。EFILMやCOMPANY3 等の著名DIハウスを傘下に修めた事によりDI分野を強化、ここ数年はVFXスタジオの買収に力を注いでいる。ちなみに、昨年倒産したアサイラムVFXに 買収を持ち掛けたのもデラックスである。 www.bydeluxe.com

<メソッド・スタジオ (Method Studios)>
 数々の受賞歴を誇るVFXスタジオで、ロサンゼルス、バンクーバー、ニューヨーク、そしてロンドンに拠点を持つ。
 アーティスト主導のクリエイティビティを前面に出す事で知られ、映画やテレビコマーシャル、そしてモーション・グラフィックスなど幅広い分野でVFXの サービスを提供している。親会社はデラックス・エンターテインメント・サービスグループ(Deluxe Entertainment Services Group Inc.) 日本では、株式会社デジタル・ガーデンと2008年10月にに業務提携を結んだ事でも知られている。 www.methodstudios.com

<CIS(Composite Image Systems)>
 CISはコンポジット・イメージ・システムズの略。ハリウッドにある老舗VFXスタジオで、設立は1984年。映画、テレビ、そしてコマーシャル等の幅 広い分野でハイエンドなVFXを制作している。その後デラックスに買収され傘下に入る。2008年にはレインメーカーのバンクーバーとロンドンがデラック スに買収され、それぞれCISバンクバー、CISロンドンとリブランドされ今日に至っている。これまでCISはデラックス・エンターテインメント・サービ スグループ(Deluxe Entertainment Services Group Inc.)傘下のVFXスタジオの1つとして運営されていたが、今回のメソッドとの社名統一により、CISの伝統ある3文字は消滅する模様だ。


※ バンクーバーで実施されているカナダBC州政府による税制優遇制度やバンクーバーに進出したVFXスタジオ等について詳しく知りたい方は、「バンクーバーVFX業界ビデオレポートDVD」をご参考あれ http://vfxhollywood.jimdo.com/

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このサイトに含まれる記事は、鍋 潤太郎が日本のメディア向けに

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著者注:2011年の記事です。

写真:デジタルドメイン本社 ベニス/ロサンゼルス(筆者撮影)



●DDのフロリダスタジオ ベテラン・アニメーターを雇用し長編制作本格化

 ハリウッドの各メディアが報じたところによれば、デジタルドメイン・メディア・グループ(Digital Domain Media Group)が2009年からフロリダ州ポートセントルーシーで稼働準備を進めているデジタルドメイン・フロリダスタジオ(DDF)が、劇場用長編アニ メーション分野への本格参入する具体的な計画を打ち出したという。

 DDFでは過去18ケ月の間に、映画「ライオンキング」「トイストーリー」「ムーラン」等をディズニーやピクサーで担当した経歴を持つベテラン・アニ メーターを雇用。ディズニーやピクサー、そしてドリームワークスと並ぶ、オリジナル作品を制作するアニメーション・スタジオを目指すという。

 デジタルドメインは2009年10月フロリダ州ポートセントルーシーにおいて新拠点の設立を発表し、地元ポートセントルーシーでは大規模な雇用が見込まれるとして、その経済効果が期待されている。


●フロリダ州からの支援を受け、32億円を投じて広大なスタジオを開設

 DDFは、今年の年末頃を目標に、$40million(約32億円)を費やした施設、120,000スクエアフィート(約11,148平米)という広 大な敷地でスタジオ開設の準備を進めているが、その規模は最終的に1,000人以上になると見られており、実現すればポートセントルーシーで2番目に大き な規模の企業になる。

 2009年、デジタルドメインはトラディションと呼ばれる地域にデジタルスタジオを建設する事で、フロリダ州とポートセントルーシーよりで$70million(約56億円相当)の支援を受けた。


●秋にかけてIPOも計画
 その見返りとして、デジタルドメインは2014年までに年収65,000ドル(現在の為替レートだと約520万円相当)クラスの雇用を500件用意する事に同意。現在のところ雇用されているのは243人で、そのゴールにむけて邁進中のようだ。

 またデジタルドメインはこの夏から秋にかけてIPO(新規株式公開)を行い、これによって$115million(約92億円相当)を上限とする株式を公開する予定だという。

 米メディアに公にされているデジタルドメインの昨年度の収益は$101.9million(約80億円相当)で、営業利益は$17million(13.6億円相当)。一方でフロリダスタジオ新設の経費として$30.2millionを計上している。

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●2014年公開を目指して制作作業を開始

 現在DDFでは、第1作目となる劇場用長編アニメーション作品を2014年に公開する事を目標に、ストーリー開発などを秘密理に進めているという。

 ここで制作していくアニメーション作品は、ファミリー映画路線を貫き、大人にしか理解出来ないようなジョークは一切排除し、両親が子供を安心して映画館に連れていけるような作品を提供していく方針だという。


●「VFXスタジオならではのテイスト」を前面に

 さて、ドリームワークスやブルースカイ等に代表されるハリウッドの著名アニメーション・スタジオが手掛けた長編アニメーション作品郡を見ると、なんとなくハリウッドに共通する独特の雰囲気を感じるものだ。

 そんな中、ジョニー・デップが声の出演を務めた映画『Rango』は、VFXスタジオであるILMが手掛けた事によって、全く異なる独特のルックを持つ。

 DDFは、このような「VFXスタジオならではのテイスト」を前面に出して行きたいという。


 また、DDFに参加したアニメーターの中には、既存の大手アニメーションスタジオでの"しがらみ"や、吸収統合などによる軋轢から逃れ、そういったストレスから開放されて「新しい船での出港」を望んでやって来た人材もいるそうだ。

 DDFのフィーチャーアニメーション部門は、現在のところ全社の中で最も少人数な部署だという。ここでは、新作アニメーションのストーリー開発を司っている。しかし、ひとたびプロジェクトが本格稼働すれば数百人の規模に膨れ上がる事が期待されている。

 また、DDFはフロリダ州立大学映画学科と提携し、4年間の映像教育プログラムを学べる教育機関「デジタルドメイン・インスティテュート」をウエスト・パームビーチにオープンする計画で、地元の教育システムにも貢献していくプランを打ち出している。


●フロリダがCGスタジオの新たな拠点となるか

 米メディアは、フロリダにおけるデジタルドメインのビジネス展開について興味深く見守っている。また地元では、DDFに習って更なるスタジオがフロリダに進出してくれる事を祈願する声も出ているという。

 しかし筆者の脳裏には、2004年1月12日に閉鎖されたディズニーフィーチャーアニメション・フロリダスタジオが思い浮かぶ。この時は、250人もの人材がレイオフされ、業界内でも論議を巻き起した。

 その意味で、フロリダ地域にとっては大手スタジオの地元進出は2回目のチャレンジとなる訳だが、ディズニー・フロリダスタジオで煮え湯を飲まされた関係者にとっても、今回は是非とも成功させたいところだろう。

●地元からの雇用、野球場の命名権獲得など、地域との連携図る

 このポートセントルーシーにあり、米球団メッツが春のトレーニングに使用している「デジタルドメイン・スタジアム」はデジタルドメインが命名権を獲得し た事で有名だが、昨年10月9日、デジタル・ドメインは地元の人々を球場に招き、大規模なリクルート・イベントを開催、2千人が列を作った。しかし「ハイ スキルが要求される職種で、実際にポジションを獲得出来る人は、ごくわずかだろう」(地元紙)という声も聞かれた。

 実際、地元フロリダの住人だけでVFX及びアニメーションのアーティストの頭数を確保するのは至難の技で、筆者の制作現場からの視点では、最終的にはかなりの比率の人材が外国や州外からのアーティストで構成される事になるのは明白だ。

 地元での雇用促進の代わりに優遇措置を実施する経済戦略はカナダのバンクーバー(詳細は筆者のDVD をご参照あれ)と同じだが、フロリダという西海岸から遠く離れた場所で、そのバランス がどこまで保てるのか、筆者は興味深く感じている。

 さて、ロサンゼルスにあるデジタルドメイン本社のVFXクルーにフロリダの展開について聞いてみると、「我々のように現場でVFX制作に従事している立 場だと、同じ会社なのにフロリダの事は誰も知らないのですよ。特に会社から説明がある訳でもなく、実際にフロリダで何をやっているのかも、よくわからな い。逆に教えてくれませんか?」という意外な答えが帰ってきた。

 もしかしたら、今年のSIGGRAPHでも何かアナウンスがあるかもしれないが、とりあえずデジタルドメイン・フロリダスタジオの動向からは目が離せないだろう。


 




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