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下記は、CGワールド誌先月号(126号)の72ページ目に掲載された記事だが、1ページという限られた掲載スペースに収める為、インタビューの際に得られた様々なエピソードを泣く泣くカットする必要があった。ここで、そのオリジナル原稿の全文をご紹介する事にしよう。
ハリウッドの現場で仕事をしていると、よくアメリカ人から「日本で仕事をしてみたいのだが、どうすれば良いだろうか?」という質問を受ける事がある。
CGワールド誌で「海外で働く日本人」シリーズの連載を随筆し、"日本人が海外で働くにはどうすれば良いのか?"をいつも考えている筆者にとって、この180度反対の質問は大変新鮮に、かつ興味深く映る。
そこで、今回は「アメリカ人が日本で働くには?」という視点から、ハリウッドで活躍する親日家のアメリカ人お2人にインタビューを行い、ご意見をうかがってみた。
その上で、これから国際化が期待される日本の映像業界の受け入れ体制についても少し考えてみたい。
○アート・デュリンスキー氏
Art Durinski - Visual Effects Supervisor / Computer Animation Director
CG黎明期から活躍する世界的に著名なパイオニア。トリプルアイやデジタル・プロダクションズ、そして世界最大のCGスタジオだった米オムニバスなどの歴史的なスタジオで活躍。また、映画「トロン」(1982)にもアーティストとして参加している。
80年代後半にトーヨーリンクス(現:リンクス・デジワークス)と契約し、1年半にわたりデザイン&アニメーションコンサルタントとして活躍。氏が手がけたSonyのロゴは有名。90年代以降は、小栗康平監督の映画「眠る男(1996) 」と「埋もれ木」(2005)のVFXスーパーバイザーを務める等、何かと日本の映像業界との関わりが深い親日派である。
現在は、映画やCMの仕事と共にOTIS美術大学で教鞭を取ったり、VESのエドケーショナルコミッティーにて後輩の指導にもあたっている。
「ハリウッドのVFXおよびコンピューター・アニメーション業界では、私自身を含めて大変多くの人が、アメリカ国外で働く事に興味を持っています。
同時に、私を含め、大変多くのアメリカ人が、ぜひ日本で仕事をしてみたいと考えているのです。
なぜなら、我々から見て、日本は非常にエキサイティングで、ダイナミックで、そして非常にクリエイティブな環境が揃っているからです。
それ以外にもここ数年、インド、ニュージーランド、中国、イギリス、ドイツ、フランスなどの 海外で、この業界にいるアメリカ人が仕事をする機会が増えてきています。
私は、このトレンドはしばらく続くと思っています。
さて、我々アメリカ人が、日本で映画のVFXの仕事に参加する場合、最も大きな壁は、やはり言葉の問題でしょう。
たとえアメリカ人同士の間であっても、VFXスーパーバイザーと現場との間で、お互いの考えを完全に理解しあって作業を進めていくのは大変な事です。
その上更に、言語が異なるとなると、意思の疎通には多大な時間と労力を必要とします。
映画のプロダクション中に起こる勘違い、連絡ミスは、そのままスケジュールの遅れと予算オーバーへと直結しますから、注意が必要なのです。
先日、米視覚効果協会(VES)主催で「(アメリカ以外の)海外で働く」というパネルセッションが行われました。その中で「海外で経験した最高&最悪だった経験は」という質問が参加者から出ました。
その時私は、映画「埋もれ木」の撮影開始の前日、キャスト&クルー全員で、地方の銭湯へ行った時の話を、冗談を交えてこう説明しました。
「これから仕事をする人達と、すべてをさらけだして、お互いを理解するのには最良な方法だと思いました(笑)」とね。
このパネルセッションの中で、私自身が日本での仕事を通じて、、個人的にも教育的にも、異文化を学ぶ観点で大変貴重な経験が出来たという事例を講演しました。
海外で仕事を進めていく上では、その国の文化や慣習を理解するように努める姿勢が、あらゆる意味でとても大切だと考えています。」
○ケネス・イブラヒム氏
Kenneth Ibrahim - Freelance Technical Director
http://www.shuri-ken.com/
1990年に文部省(当時)が主催するJETプログラムに合格し、群馬県の中学校へ英語教師として1年間赴任。一度帰国後、再来日しMacのソフト開発会社、セガ AM第3研のプログラマー、エイリアス(現オートデスク)でのアプリケーション・エンジニアを経てアメリカに帰国。
現在はフリーのテクニカル・ディレクターとしてPDIドリームワークス、デジタル・ドメイン、リズム&ヒューズ等のVFXスタジオで活躍中。参加作に「マトリックス3」「スーパーマン・リターンズ」「パイレーツ・オブ・カリビアン3」などがある。特技は何と言っても日本語で、この日のインタビューはすべて日本語で行われた。
「中学1年生の時、アメリカのテレビで「ウルトラマン」を見て衝撃を受け、日本と特撮に興味を持ったのが始まりでした。
そしてすぐにサンフランシスコのジャパン・タウンにある紀伊国屋へ行って「ウルトラ兄弟」の本を買ってもらった時、カタカナを初めて見て、日本語にも衝撃を受けました。
大学を卒業後、JETプログラムに合格してインストラクター・ビザを取得、群馬県 太田市の中学校で英語の先生を1年間務めました。
プログラム終了後は一度アメリカに戻り、それから今度はエンジニアとして来日し、Macのソフト開発会社で2年働きました。それからセガのAM第3研で2年弱、エイリアス(現:オートデスク)で1年半、CG関係のプログラマーとして仕事をしました。
エンジニアの場合、勤務先がキチンとした会社で、必要な書類が揃っていさえすれば、割と苦労せずに日本のビザを取る事が出来ます。
ただ僕たち外国人が日本で働く場合、ビザを1年毎に更新する必要があります。大手町にある入国管理局のオフィスへ、ビザの延長手続きに行ったのを覚えています。
日本語の習得には苦労しました。セガでの仕事はすべて日本語でした。エイリアスでは外資系という事もあり、日本語と英語が半々でした。
日本での生活は快適で、嫌な思い出は1つもありませんでした。ただ、アパートの「礼金」という制度はアメリカには無いので、少しとまどいましたね。
アメリカ人が日本で仕事をしたいと思う場合、大切な事が3つあると思います。
①才能やスキルがある事。
②出会いや人脈などのコネクションに恵まれる事。
③タイミング。
このうち、どれか1つが欠けても、うまく事が運びません。特に3番目の「タイミング」は大きいと思います。その意味では、僕はチャンスに恵まれて、とても運が良かったと思っています。
後は、その国を好きになれる事、言葉と文化に対して、どの位興味を持てるかどうか、という事がキーになります。
僕の場合は「ウルトラマン」がキッカケを作ってくれたので、今でも「ウルトラマン」には感謝しています。」
☆受け入れ体制が今後の課題か
このインタビューでもおわかりのように、日本で働く事に興味を持っている外国人に意外に多い事がみてとれる。
しかし、受け入れ側の日本企業の姿勢はどうなのだろうか。以前、筆者はアメリカ人の友人に頼まれ、日本の大手有名ゲーム会社の知り合いに聞いてもらった事があるが、返事は「日本語が話せないと駄目」。
ここハリウッドでは、英語が殆ど話せなくても、充分なスキルを持つ人材であれば積極的に採用していく寛容な文化があり、実際に我々日本人アーティストはその恩恵にあずかっている。ところが、日本のプロダクションではスキルが高くても「日本語が話せない」と言う理由で断っているという現実があるようだ。
日本のプロダクションが積極的に外国人を受け入れていくにはもちろん課題もあるが、文化&技術交流、そして労働条件の改善等にも繋がり、業界の活性化にも一石を投じるのではないだろうか。
課題を1つ1つクリアし、日本のVFXやコンピューター・アニメーション業界の国際化が進めば、ハリウッドからの仕事の受注も珍しくない、そんな日が10年後位にはやって来るかもしれない。
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