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ここロサンゼルスでは、ACM SIGGRAPHの地方分科会である"LA SIGGRAPH"の月例会が毎月開催されている。
内容は毎月異なり、新作映画のお披露目やメーキング講演だったり、目新しいテクノロジーの紹介だったりする。
この月例会には誰でも参加出来、会員になって年会費$35.00を納めれば、毎月の月例会の参加費は無料となる。
会員でなくても、会場入り口で参加費15ドルを支払えば入場出来る。しかも学生の非会員は、学生証を提示すればたったの5ドルで月例会に入場出来るという特典もある。
2月の月例会は「ビデオ・ゲーム」に焦点を合わせたお題目が出され、ゲーム製作に携わるプロ達がパネラーとして登場、顔をつきあわせてのパネル・ディスカッションが行われた。
この日の会場は、UCLA(カリフォルニア州立大LA校)のホール。大学が会場というのもSIGGRAPHらしい趣きだが、実際UCLAはよくこのLA SIGGRAPHの会場に利用される。
この日の参加者層は幅広かったが、ゲームがテーマという事、そして会場が会場だけに、20歳前後の参加者が普段よりも多かったように思えた。
さて、この日のLA SIGGRAPH月例会のホストは、SOFTIMAGE XSIでおなじみのAVID社であった。
まずは、本日のスポンサーであるAvidから、美人のKatja Raitemeyer女史がご挨拶に立ち、Power PointでAvidプロダクトのラインナップを手短に紹介、その後に講演が行われた。
それでは、その講演の模様を「さっくり」と要約しお届けする事にしよう。
L.A. ACM SIGGRAPH Presents:
The Process of Making Great Video Games
Tuesday, February 8, 2005
Come out to see the latest in video games and the innovative ways in which they are being made.
Program
6:30-7:30 Social Hour
7:30-9:30 Program
Location
Bradley International Center
417 Charles E. Young Drive West
on the UCLA campus in Westwood
Fees/Registration
The event is free to L.A. ACM SIGGRAPH members and $15 for non-members. New members who sign up on site and pay
the $35 annual membership fee (Checks or cash only) do not have to pay the admission fee.
パネラーの顔ぶれは次のとおり:
Moderator
Bijan Tehrani - Editor in Chief, Digital Journal Online
Speakers
Carey James Chico - Executive Art Director, Pandemic Studios
Jeff Berting - Art Director, Heavy Iron Studios
Stuart Roch - Executive Producer, Shiny Entertainment
☆ゲームの製作プロセスについて
Carey James Chico氏- Pandemic Studios
Pandemic Studiosは、1988年に設立されたゲーム開発会社で、ここLAのウエスト・ウッドとオーストラリアのブリスベンにスタジオを構えています。
PCゲームが主軸で、平行しPS2やXbox用のゲーム製作を行っています。
最近では:
・コンバット・ゲームの「Mercenaries」(Lucas Arts)
・「Star Wars Battlefront」(Lucas Arts)
他、4本を手掛けました。
今年の8月には、「Destroy All Humans!!」(THQ)というすごい名前のゲームをリリース予定です(笑)これはB級SF映画風の、エイリアンが地球に襲ってくるという楽しいゲームです。私は個人的には、この商品名が大変気に入っています(笑)
さて、Pandemic Studiosでは、メインのツールとしてXSIを採用しています。理由はいくつかありますが、
・カスタマー・サポート体制がしっかりしている。
・モデリング及びテクスチャ周りのツールが強い。
・ゲーム用のパイプライン・ツール(リアルタイム・シェーダ、ポリゴン・リダクションのLOD Toolsや、GPUサーフェスFXなど)の充実。
・インタラクティブにも強い
という点が挙げられますね。
Jeff Berting氏 - Heavy Iron Studios
我々Heavy Iron Studiosは、これまでに「スポンジ・ボブ」「スクービー・ドゥ」等のライセンス・プロダクトのゲームを手掛けてきました。
ここでは、ディズニーの「Mr.インクレディブル」のゲームを例に挙げてお話しましょう。これが、実際のゲーム画面です。ちょっとプレイしてみましょう。
このように、映画の世界をゲームで再現するという事には、多くのチャレンジがあります。発売時期を考慮すると、映画本編の製作と同時進行で進めなければなりません。
この場合はピクサーになる訳ですが、ピクサーから提供された設定に限りなく近く、ゲーム・プレイヤーが「あたかも映画の中に入ってプレイ出来る」ようにゲームの世界観を作り上げなければなりません。
ゲームの合間には、ピクサーによる映画本編からの映像も、ムービーとして入っています。その為、ゲーム部分をより違和感がないように仕上げる必要があります。
最終製品をイメージし、効率良くプロダクションを進めるのがチャレンジの1つと言えるでしょう。今回の場合は、ピクサーから提供されたイメージ・スケッチ等を参考にしながら開発を進めていきました。
作業後半の段でやり直し等が発生しないよう、クライアントとの打ち合わせを何度も重ねて製作が進められました。
以降、司会のDigital Journal Onlineの編集長、Bijan Tehrani氏が問題提議を行い、それに対して各パネラーが答えを述べる形でパネル・ディスカッションは行われた。以下、抜粋。
○プリプロダクションとは
「場合によりけり」ですが、多くの場合は、リード・プランナーを筆頭に、まずは少人数で紙の上でプリプロを始めます。いろんなアイデアを出し合いながら、通常3ケ月程を掛けてベースを固めていきます。
作業プランも重要です。どの位の製作期間、開発期間がかかるのか、等もこの段階で計画を立てます。
大人数で一斉にプロダクションを行う訳ですから、マネージメントの良し悪しが進行を左右します。プリプロダクションで問題点を予め明確にしておきます。
製作するゲームがどんなライセンス・プロダクトか、によっても異なりますが、ブ厚い企画書をベースに進めていきます。
これにはコンセプトがつまっていて、何百ページにもなります。ページによっては、スタッフが誰も未だ読んだ事がないようなページを発見する事もある位です(笑)
この段階で、良いアイデアを出し、つまらないアイデアを捨てていく。あ~でもない、こ~でもない、と頭を絞りながら進めるのです。
これが、プリプロの典型と言えるかもしれません。
○ゲームのプリプロ作業で、10年前と変わった事は?
「各レベルにおけるデザインの詳細が、より求められるようになった」事でしょうか。
その為にプリプロの比重が増え、たまにプリプロに膨大な時間を掛けて、実際のプロダクション期間の方が思いの他少なく、みんなでワッと一挙に作ってしまったような作品もあります。
長期のプロダクション・プロセスの中では、作業の効率化が求められますが、そんな時に自社開発ツールは以前にも増して重宝するようになったと思います。
○プリプロとプロダクションのバランスについて
プリ・プロダクションに3ケ月くらい、プロダクションに1年くらい、そしてポスト・プロダクションに3ケ月くらい、と言うのが、よくあるパターンだと思います。
プリプロの段階でアーティストやT.D.と相談し、どの位の期間が掛かるものなのか?を算出しますが、これで製作コストの見積もりが出ます。
そこから実プロダクションへと移っていきます。
ここ数年、製作プロセスはどんどん複雑化しています。映画に実際に出演している俳優を3Dスキャンし形状を取り込んだり、俳優の動きをモーション・キャプチャーしたり、映画作品をベースにしたゲームは大変です。
「マトリックス」シリーズ等はその顕著な例と言えるでしょう。
○プロダクション途中で「もっとディテールを上げろ」という要求に直面した場合は?
ケースBYケースですが、ミーティングを重ねて、ストーリー・ボード・アーティストと話し、問題点を解決していきます。
ライセンス・プロダクトの場合、ディズニーやワーナーの大手映画会社がクライアントともなると、ものすごい多くのプレゼン、そして膨大な承認作業が発生するので、プロセスはより複雑化します。
○ツールについて
PhotoshopやZBrushはアーティスト達の現場でよく使用されます。特に3Dの現場では、XSIとPhotoshopは、プライマリ(最も主要な)なツールと言えます。
先ほど、自社開発ツールの重要性が話題に登りましたが、アーティストが使用する為のツールを、より使いやすい仕様に持っていく「ツール・デザイン」のプロセスは、プロダクションを円滑に回していく上で重要なポイントを占めています。
自社ツールの良い所は、社内で導入教育が出来る事、そして数多くの情報やデータを社内で共有出来る点にあります。
ある意味、社内のコミュニケーション・ツールのような役割を果たす訳です。
○スタッフ体制について
200-300人規模のチームでプロダクションを進めていきます。しかし、この位の規模ともなれば、維持していくのは並大抵ではありません。
もちろん、業績が悪くなってレイオフ、なんていう事は極力避けねばなりませんし、我々もレイオフは大キライです。
巨額予算のライセンス・プロダクトを継続して手掛けている側面には、そういった事情もあると言えます。
○次世代ゲーム機について
「どの次世代プラットフォームにするか?」はゲーム開発会社が頭を悩ますところです。
開発はどんどん複雑になりますし、リスクも発生します。多くのゲーム・デベロッパーがPS3を視野に入れるのは、そうしたリスク分散という意味もあるかもしれません。
現在のところ、スペック的にはPCゲームがコンソール・ゲームを凌駕しています。なぜなら、PCは一番スペックが高く、エンジンとしても高速ですから。
複数のプラットフォームを跨ってゲーム・ソフトを開発する際は、PC用にテクスチャを描いて、後でPS2やXbox用に縮小して使う事もあります。
ゲームソフトは、どんどんスタイリッシュになって来ていますから、追いついていくのも大変ですよ。
また、ソフトの価格はどんどん下がってきています。市場価格とビジネス面とのバランスも、今後ますます求められてくるでしょう。
○アメリカのゲーム業界は、どのような人材を求めるか?
"All Type of People"を求めています。
3Dだけではなく、2Dの人も。例えば、ハリウッド・スタイルのマット・ペインターのような人も、です。
ゲーム業界は「ベーシックなデザイン・センスを持ったアーティスト」を求めているという事でしょう。
アーティストに求められるものは、Goodデザイン、Goodコンポジション、Goodカラー・センス、そして優れたデザイン・センス等です。例えば、
・きちんとモデリングが出来るか?
・テクスチャが描けるか?
そして、「コミニュケーションが取れるか?」←これが一番需要かもしれませんね。
プレゼンテーションが出来るか?社会人としての常識があるか?自分の作品をプレゼン出来ない人に、良いゲームなんて作れませんよ。
○プログラマーに求めるものは?
・プログラマーには、私生活でゲームをプレイしない人もいる。彼らは、プログラムの理論は非常に良く知っているが、「ゲームでどう使うべきか」の術を分っていない人がまだまだ多い。
・頼むから、コミュニケーションを取ってくれ!!
「上記2点でない人」を幅広く求めています(笑)
…というような内容であった。
スポンサーがAvidという事もあり、MAYAやMAXを使用している開発会社の話が全く聞けなかったのが少々残念ではあるが、久しぶりのゲームをテーマにした月例会、筆者としてもなかなか勉強になった。
最後の質疑応答の時、参加者の中に紛れ込んでいた中学生位の男の子が、未熟な知識の中にも一生懸命に質問をして、それに対して笑いながら丁寧に答えてくれたパネラー各氏の寛大さが印象的であった。
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