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CGワールド誌でご好評を頂いた人気連載「ボーディング・パス」が、2009年6月号を最後に惜しまれながら(?)終了して久しい。

しかし、各方面から「また是非再開してください」「いつかあの連載に載るのを目標に頑張ってきたので、残念です」「記事に登場しているエピソードを読んで刺激を受け、自分も今ハリウッドで働いています」などなど、嬉しいお言葉を頂く事も多く、まさに著者冥利に尽きる瞬間である。

筆者が取材をしていない日本人アーティストは、世界中にまだ大勢おられる。今後も可能な限り、海外で働く日本人のインタビューは続けて行きたいと考えている。

さて、今回は久しぶりに、ハリウッドで活躍されていながら、意外にもあまりメディアに登場されておられない日本人アーティストの方へインタビューをさせて頂くチャンスに恵まれた。

それではさっそく、アサイラム・ビジュアルエフェクツで活躍されている、坂巻 敏弘氏の素顔に迫ってみる事にしよう。
 

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坂巻 敏弘 (さかまき としひろ)

モデリング&UVレイアウトアーティスト / アサイラム・ビジュアルエフェクツ
[www.asylumfx.com]

1973年神奈川県逗子市出身。 日本大学理工学部数学科卒業後、カリフォルニア州サンタモニカにあったデジタル・ハリウッド サンタモニカ校dhima (DH Institute of Media Arts)に留学し3DCGを学ぶ。卒業後、CMのVFXを手掛けるプロダクションを経て、アサイラム・ビジュアルエフェクツにモデラーとして入社し、現職。 最近の参加作に「Pirates of the Caribbean: At World's End (2007)」、「National Treasure: Book of Secrets (2007)」、「The Curious Case of Benjamin Button (2008)」、「Terminator Salvation (2009)」等がある。 最新作は8月13日に日本でも公開予定の「The Sorcerer's Apprentice」(邦題:『魔法使いの弟子』 )で、この作品ではモデリングを担当している。
 
 Q:学生時代のお話を。

  昔から算数、数学が好きで、とにかく計算式が好きな人間でした。 大学も数学科に入り、将来は数学家になろうとしてましたが、在学中に交換留学生として行ったカナダでの生活に感銘を受けて、卒業後はカナダの大学院で数学を勉強しようと思ってました。

 
Q:海外で働くことになったキッカケは。
 
カナダ留学が諸事情により無理になり、たまたま大学の近くにデジタル・ハリウッドがあり、ちょうどサンタモニカ校であるdhima (DH Institute of Media Arts 現在は廃校) が生徒を募集していました。

何処でも良いから日本の外へ出たかった事と、大学でAIを学んでいたので、ちょうど3DCGのゲームが出始めたころだったので、「とりあえず、行ってみればなんとかなるだろう」的な考えで、入学試験を受けてみたら合格したので、アメリカに来ました。

[モデリング作業中の坂巻氏] 
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dhima卒業後は、しばらくの間ティーチング・アシスタントとして学校に残り、並行して就職活動を行ってみたのですが、就職先はなかなか思うように見つかりませんでした。1年程が経過し、「もう日本に帰ろうか」と思った時にフラっと訪問したヒスパニック系のCM制作会社で雇ってもらえる事となり、ここで最初の就労ビザを取得しました。
 
その後、たまたまアサイラムの山下 祐一郎氏から、「いまモデラー募集してるんだけど、アプライしてみる?」とお声を掛けて頂きました。この時、私が直前にやっていた仕事が街(ビルなどの制作)で、アサイラムも次の仕事も偶然にもビル群の制作という事で、「ちょうど良い」という感じで採用されました。 

ほとんど運ですね。
 
[同社ライティング・アーティスト、山下 祐一郎氏との打ち合わせ風景]
toshi_wYama.jpg














 
Q:就労ビザの申請では、苦労されましたか?

 ちょうど9・11直後で難しい時期ではありましたが、日本で4年制大学を出ていたのと、大学の専攻が数学、とくにAIやプログラミングだったことが有利に働いて、数週間で問題無く出ました。
 

Q:渡航後に意識して習得を心がけたスキルはありますか?

 デッサンや造形(彫刻)、街中で人間観察をしてみたりと、PCに向かってやる事以外、いわゆるアナログな訓練を沢山やりました。
 
[リード・モデラー、グレッグ・ステュー氏のチェックを受ける坂巻氏]
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Q:現在の職場の勤務スタイルを教えてください。

週5日、朝10時から夕方7時位までの、1日8時間勤務です。忙しい時は9時位まで残業をします。
 
  
Q:アサイラムは、どのようなの雰囲気のスタジオでしょうか。

 そんなに他の会社と変わらないと思いますが、アットホームですかね? 毎月その月の誕生日の人達の誕生会をやったり。 あと、お昼は会社が出してくれるんですが、プロジェクトが忙しくなり職場の人数が増えてくると、エリア毎に呼ばれるので、最後の方になると殆どめぼしい食べ物が無くなってたりします(笑)
 
Q:最近担当された作品について、お聞かせください。
 
8月に日本でも公開になるニコラス・ケイジ主演の「The Sorcerer's Apprentice」(邦題:『魔法使いの弟子』 )では、龍の指輪、チャイナタウンに出てくるドラゴン、カーチェイスのシーンの鏡の世界などを担当しました。

ツールはMAYAです。龍の指輪は指輪の状態、龍の状態、その中間の3つの状態が実物としてあって、そこからモデルを起こしたのですが、3つとも大きさや形、模様、宝石の入ってる位置などが全く異なっていたので、どれに合わせて作れば良いかで苦労しました。 

鏡の世界は当初、CGでやる予定が無かったのですが、プロジェクトの佳境に入ってから突然決まり、最初は一部の建物だけだったのが、結局最後はマンハッタンの7th Aveの10ブロックぐらいを全部作る羽目になってしまいました。そこで、ネットにある写真やグーグル・ストリートビューを資料に2人で仕上げました。
 
「Terminator Salvation (2009)」では、ダウンタウンLAのシーンに出てくるT-600と背景、壊れたグリフィス天文台、スカイネット本社の外壁、マーカス・ライトの内部機械などを担当しています。 

こちらもツールはMAYAで、プリビズの段階では5人位で作業をしていましたが、その頃「The Sorcerer's Apprentice」のプリビズが始まったり、マーカス・ライトの内部機械のモデリングが大変で、そちらにアーティストが流れてしまったりで、最終的にLAシーンのモデルを全部担当することになってしまいました。そういう意味で、思い出の強い映画になりました。

特にT-600はILMからのCGデータ等は全く無かったので、ある意味、一部分「アサイラム・オリジナル」のようなノリで、私の好きに作らせてもらいました。 パーツのモデリング作業自体は1分やそこらで作れてしまいますが、愛情たっぷりでモデリングしました。
 

Q:将来のキャリアとして目指したい事は。

やはり、モデリングという作業が好きなので、その分野で実績を積んで行きたいと思ってます。 

Z-brush等、これからどんどんツールも変わっていくと思いますので、どんな状況、ツールに変わっても柔軟に対応してベストのモデルを提供できる人材を目指したいですね。

それとは別に、大学で学んでいたプログラミング等を活かし、エフェクト、特にパーティクル系のエフェクト等に興味がありまして、今後機会があれば是非手掛けて行ければと思ってます。 

更に仕事を幅を広げて、いわゆる、「3Dジェネラリスト」を目指していきたいですね。

[リードアニメーターのマイケル・ワーナー氏とモデルをチェック中]
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Q:将来、海外で働きたい人へ「ひとことアドバイス」をお願いします。

 私は日本でCGの仕事をしたバックグラウンドが全く無く、英語に関してもあまり達者な方では無いのですが、これまでアメリカで働いてきた上で一番影響が大きかったのは「コネクション」でしょう。 

職場で仲良くなった人達が、他の会社に行った時「前の会社にこんな優秀な奴がいた」と推薦してくれる事があります。ある時知らない会社から「○○さんから聞いたんですが・・・」と突然仕事のオファーが来る事が良くあります。 

こういう「コネクション」によるジョブ・オファーは、デモリールとレジュメを送るよりも、数倍の効果と信頼度があります。ですから、もし英語が下手でも、行った先々できちんとコミュニケーションを取っていけば、そのうちそれが役立つ時が来るかもしれませんね。

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今日は、どうもありがとうございました。


~6月後半 サンタモニカにてインタビュー~ 
 

 

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