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米バラエティ誌が7月8日に伝えたところによれば、アカデミー賞を主宰する米国映画芸術科学アカデミー(以降、「アカデミー財団」と記述)は、成長の一途をたどるVFX部門に対応する為、次回のアカデミー賞よりVFX部門のノミネート枠を現行の3作品から5作品に拡大するとアナウンスした。
アカデミー財団では、各部門の委員が授賞式開催ルールの見直しや改善を毎年行っており、ボードメンバーの承認が得られれば変更が可能という、極めて柔軟な姿勢を取っているという。
ご存知のように、今年から作品賞のノミネート枠が5本から10本に拡大された事もあり、ノミネート枠が5本以下というカテゴリは少数派となった。しかも、現行の開催ルールはVFXが今のようにメジャーになる前に設定されたものだ。
そう言った実情を鑑み、アカデミー賞VFX部門の委員からの改善要望に対し、アカデミー財団が応えた形となる。
VFX部門の選考方法自体への変更はなく、まず最初に15本のノミネート候補作品が従来通りアナウンスされ、VFX部門のエグゼクティブ・コミッティーがここから7作品をプレゼンテーション&試写会である、かの有名な「ベイクオフ」※の為に選ぶ。
※「ベイクオフ」の詳細については、こちらをご参照あれ。
そして「ベイクオフ」会場においてVFX部門の会員によって投票が行われ、次回からは5本がノミネート作品として残り、発表される。
最終的に、5本のノミネート作品の中から、アカデミー財団の全会員の投票によって1本が選出され、アカデミー賞を受賞する事になる。
今年1月に筆者がレポートしたように、今年の第82回アカデミー賞VFX部門は、過去に類を見ない程の超激戦であった。
1月21日(木)、ビバリーヒルズにあるアカデミー財団のAcademy's Goldwyn Theaterで開催された「ベイクオフ」は筆者も聴講したが、この時のプレゼンでは話題作&大作が7本が名を連ねた。
どの作品がノミネートされても不思議ではなく、この中からたった3本を選出するのは至難の業だと痛感した程である。
VFX主導の映画作品は、ボックス・オフィスの売り上げに大きく貢献し、オスカー像をもたらす事で各映画スタジオの名を高めているが、そのVFX制作に深く関わっている米視覚効果協会(VES)や、ILMを含む複数の大手VFX制作スタジオは、今回の変更を好意的に受け止めているという。
VESのエグゼクティブ・プロデューサーであるエリック・ロス氏は「VFXがエンターテイメント業界の中で、一定の地位が認められたという証でしょう」と感慨深げに語った。
また大手VFXスタジオであるソニー・ピクチャーズ・イメージワークスのヘッド・オブ・プロダクション、デビー・デニス氏は「VFX技術の進歩は、以前は大きな壁として立ちふさがっていた『表現の限界』を取り払い、映像表現の可能性を大きく広げました」というコメントを発表している。
アカデミー財団にとって「悩みの種」として未解決なのは、ノミネート作品を増やすと、授賞式のステージでそれを読み上げる時間分、放送時間が圧迫される事。文字通り"秒刻み"で進行する授賞式中継の舞台裏では、これが意外にも深刻な問題となるらしい。
その反面、VFXノミネートを更に2作品追加する事によって、作品賞のノミネート作品と関連づける事が出来たり、人気作品を更にもう2本紹介出来する等の利点もあるという。
いづれにせよ、ノミネートのチャンスが広がるというのは、筆者のようにハリウッドのVFX業界で働く人間にとってはモチベーションUPに繋がる嬉しいニュースである。
次回の第83回アカデミー賞は、来年2月27日にハリウッドのコダック・シアターでの開催が予定されている。
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