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映像ジャーナリスト 鍋 潤太郎の随筆による、ハリウッドVFX情報をいち早くお届けします。

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SIGGRAPHがコンピュータ・グラフィックスの研究開発者だけでなく、現場で活躍するプロフェッショナルたちの参加が多い理由には、世界有数のVFX スタジオが参加する就職面談スペース「ジョブ・フェア」の存在が非常に大きい。今年も盛況を極めたジョブ・フェアだが、特に印象深かったブースについてレ ポートしたい。



エキシビションでのリクルーティング・ブースの減少

今年開催されたSIGGRAPH 2010のエキシビション(ソフトやハードの機材展)は、ロサンゼルスでの開催にしては小規模であり、回復途上にあるとは言え、サブプライムショックによ る不景気の爪痕の深さが窺えた。例年のLA開催時であれば、大規模なリクルーティング・ブースを構える大手VFXスタジオやアニメーション・スタジオが軒 を連ねるものだが、今年は少々異なっていた。何よりも、機器展にデジタル・ドメイン/Digital Domain(DD)ドリームワークス・アニメーション/Dreamworks Animationウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ/Walt Disney Animation Studiosと いった大手のリクルーティング・ブースがなかったことには少なからず驚された次第。ドリームワークスは人材募集を行なってはいたものの、ブースは構えず、 コンピューター・アニメーション・フェスティバルのプログラム内に郵送による受付けを行うという求人広告を掲載しているのみだったのだ。

また、別の意味で驚かされたのが、来年の年明けに閉鎖が決まっているImageMovers Digital(IMD)が エキシビションでブース出展をしていたこと。ただ、IMDのブースは会場の片隅の小さなスペースに、椅子が2つ置いてあるだけという、「ブース」というよ りも休憩場のような雰囲気であった。社名も掲げておらず、机すらなかった。本当に椅子があるだけのブースだ。この背景には、閉鎖決定後に人材を減らした り、流出してしまった。そこで、現在制作中の『Mars Needs Moms(原題)』を 完成させるために必要な欠員を補充する目的だけのシンプルな面接ブースを構えた、ということらしい。それに加えて、このブースには現在IMDで働いている スタッフがスタジオ閉鎖後にスムーズに転職できるようにするため手助けの目的もあったようだ。関係者の話では、IMD人事部は社員の転職を助けるために一 生懸命働いてくれているとのこと。欠員補充と同時並行で、近い将来の閉鎖に備えた就職支援とはハリウッドの厳しさの一面が見て取れる光景である。


盛況を極めたのはダブル・ネガティブなどのロンドン勢

一方、エキシビション会場に隣接する形で設けられたジョブ・フェアは、出展ブースは例年より減っていたものの、盛況であった。今年の特色として、シンガポールが国を挙げてリクルーティング・ブースを構えていたり、ダブル・ネガティブ/Double Negative(Dneg)をはじめとしたロンドン勢が人気を呼んでいたほか、DDやピクサーも進出したバンクーバーにスタジオを構える各社のブースが盛況だったことが挙げられる。シンガポールのブースでは「Contact Singapore」という専用のウェブサイトを立ち上げ、国を挙げてのリクルーティングを展開。VFX市場に限らず、IT等のテクノロージー系を含め、幅広く人材を求めているようだ。

会期中、絶えず長蛇の列だったのが、Dnegだ。昨秋から大規模なリクルーティングを展開しており、筆者のアメリカ人の同僚たちも何人か Dnegへと移籍した(余談だが、同社はシンガポールにもスタジオを構えている)。また、Dnegと同じくロンドンのソーホー地区に本社を置くThe Moving Picture Company(MPC)は近年、カナダのバンクーバー(ブリティッシュ・コロンビア州)にも進出し、バンクーバー向けの採用を積極的に行なっていた。フレームストア/Framestoreも映画プロジェクトを複数抱えて忙しいようで、こちらもブースの前には大勢の人だかり。現在、大ヒット公開中の映画『インセプション』のVFXをDnegが手掛けたことは有名だが、ロンドン勢のブースからはそうした勢いを感じた。



バンクーバーやシンガポールに拠点を持つスタジオが採用にも意欲的

もちろんハリウッド勢も負けてはいない。LAとバンクーバーの両方にスタジオを構え、近々にフロリダのスタジオもオープン予定であるDD のブースはひときわ長蛇の列ができていた。本社であるLAスタジオは、現在はあまり積極的に人材を増やさない傾向にあるようだが、それでも優秀な人材の獲 得は必須。加えて、バンクーバーやフロリダのリクルーティングも同ブースで行なっており、リクルーターやアーティストが終始応募者の対応に追われていた。 安定した人気を誇る、大御所ルーカス・フィルム/Lucasfilmの ブースも、サンフランシスコとシンガポールの両拠点の人材募集を行なっており、多くのアーティストがブースを訪問していた。SIGGRAPHのジョブ・ フェアと言えば、ハリウッドで働く人材の確保が中心だったわけだが、近い将来、アメリカ国外の求人が国内を上回るかもしれないと感じてしまった。


 

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