映像ジャーナリスト 鍋 潤太郎の随筆による、ハリウッドVFX情報をいち早くお届けします。
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著者追記:
下記は、2011年に映像新聞に寄稿させて頂いた記事です。その後、LAのマンハッタン・ビーチにある撮影スタジオ施設MBSメディア・キャンパスでは、キャメロン監督のライトストーム・エンターテインメントが「アバター」続編のモーションキャプチャーのシューティングを進めている事が、米メディアの報道で明らかになっています。ちなみに、メインのVFX作業は、残念ながら下記記事で期待されたLAではなく、1作目同様ニュージーランドのWETAで制作されており、LAではモーションキャプチャーとその関連作業のみに留まっているようです。
当初「アバター」の続編公開は2014年と2015年が予定されていましたが、IMDBの最新情報によると、今後「アバター2」(2021)から「アバター5」(2027)が順次公開されていく予定のようです。
●映画「アバター」第2、3作の制作体制構築へ
ハリウッドの各メディアが報じたところによれば、ジェームズ・キャメロン監督が、映画「アバター」続編のVFXを制作する為の大規模なVFXスタジオを、ロサンゼルス国際空港より少し南に位置するマッハッタン・ビーチに設立す事を発表したという。
「アバター」の2作目と3作目は、それぞれ2014年と2015年のクリスマスシーズンにリリースされる予定で、このVFXスタジオが本格始動すればロサンゼルスでは700人規模の新しい雇用が期待される。
●ロサンゼルスではデジタル・ドメイン以来の大型プロダクション設立
ロサンゼルスではここ数年、映画プロジェクトの海外アウトソーシングによる煽りを受けて中堅スタジオの閉鎖が相次ぎ、仕事にあぶれた人材はカナダのバンクーバーや、ロンドンのVFXスタジオへやむを得ず"出稼ぎ"に行かなければならないような状況が続いていた。
ちなみに、ロサンゼルスにおける大手VFXスタジオの設立は久方ぶりだ。1992年にソニー・イメージワークスが、そして1993年にデジタル・ドメインがオープンして以来の出来事だ。西海岸のVFX関係者にとっては、久しぶりに嬉しいニュースとなるだろう。
そのデジタル・ドメインも、奇しくもキャメロン監督の手によって設立されたもので、キャメロン監督のVFX業界への影響力が伺える。
(ちなみにキャメロン監督は「タイタニック」終了後の98年に、デジタル・ドメインのオーナーを辞任し、同社から離れた経緯がある)
●環境良好な立地、人材獲得に「地の利」も
今回、スタジオが設立されるマッハッタン・ビーチは、白人の富裕層が暮らす海岸沿いの街。これまでは映画産業とは無縁の土地であった。
そういう場所柄、昨年5月にリズム&ヒューズが近隣のエルセグンドに自社ビルを購入して話題を呼んだ事を除けば、このエリアに映画関係のスタジオがオープンしたという話は、ほとんど耳にした事がない。
しかし、ロサンゼルス国際空港のすぐ南側という便利な立地条件は、南カリフォルニアに住むVFX関係者にとって、405フリーウェイ(高速道路)を使えばさほど通勤にに不便さを感じさせないだろう。
例えばデジタル・ドメインやソニー・イメージワークスに勤務しているフリーランサーが移籍しても、通勤時間にも大きな変化は無く、比較的通い易い場所である。
特に日本人が多く住むトーランスや、ディズニーランドのあるオレンジ・カウンティ等の南側に住むVFX関係者にとっては、通勤時間が大きく短縮される事になり、喜ぶ人も少なくないだろう。
●アウトソーシング化が進むハリウッドに歯止めがかかるか
ここ数年アウトソーシングの流れに乗り、ロサンゼルスの大手VFXスタジオによるバンクーバー、ロンドン、そしてインドへのスタジオ設立が破竹の勢いで進み、この動きには歯止めが掛かる気配は無なかった。
VFX等のポスト・プロダクション・ビジネスに限らず、映画撮影クルーの間でも海外へのアウトソーシングは深刻な問題であり、在ロサンゼルスで映画産業に従事する人々は固唾を飲んで見守っているのが現状であった。
そんな中、キャメロン監督によるマッハッタン・ビーチでのVFXスタジオ設立は、「プロジェクト流出」に歯止めを掛ける大きな一歩になるのではないだろうか。
関連記事: 2011年当時のFOXニュースの報道
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