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アメリカの祝日であるレイバー・デーの9月3日(月)、ハリウッドのテーマパーク、ユニバーサル・スタジオ(Universal Studios)の目玉アトラクションだった『バック・トゥー・ザ・フューチャー - ザ・ライド』(Back to the Future - The Ride、以降、BTTFライド)が過去16年間の北米での公開に幕を降ろした。
ここで、このBTTFライドの歴史を、その製作背景も含めて振り返ってみる事にしよう。
1990年代前半、フロリダ州のオーランドでは「テーマパーク合戦」が繰り広げられていた。
山の手線1周位の広大な敷地を使用したディズニーのテーマパーク「ディズニー・ワールド」の独占状態に対抗すべく、ユニバーサル・スタジオが参戦。ここで"天下分け目"の戦いが始まっていた。
そして「ディズニーに対抗出来る、最高のライド・アトラクションを」と企画されたのが、このBTTFライドだった。
70mm15PのIMAXフィルムによる21.3メートル のIMAX Domeへの上映という贅沢な上映方式に加え、 その巨大ドーム・スクリーンが包み込むのは、映画に登場するデロリアン・カーを模した3軸の油圧コントロールによる12個の車型のモーション・シュミレーション・ライドだった。
ライドは上下に2.4メートル、前後左右に0.6メートル、映像に併せてダイナミックに動くという方式で、観客は本当にデロリアンに乗って空を飛んでいるかのような臨場感を味わう事が出来る。
IMAX Domeは2つ設置され、これにより膨大な人数を短時間で捌く事が出来る他、もし片方がトラブルで故障しても、もう1台は継続して稼動出来るという利点も兼ね備えていた。
上映される4分間の映像は、日本でも「オプチカルの神様」「特撮の神様」と崇められるダグラス・トランブル氏(「ブレードランナー」のSFXで有名)が監督を務め、後にイマジカUSA(ロサンゼルス/2004年米FOTOKEMに売却)の社長を10年近くも務めたクリストファー・レイナ氏がテクニカル・ディレクターを担当。
当時は、フルCGによるライド映像の製作が、まだ難しかった時代。
すべての撮影はミニチュアとモーション・コントロールで行われた。そのモーション・コントロール・カメラのプログラムと制御を担当していたのは、意外や意外、なんと映画『鉄コン筋クリート』の監督であるマイケル・アリアス氏だった。
そのSFX(VFXではなく、当時はスペシャル・エフェクツと呼ばれた)が、全ての合成作業と最終のプリントが日本国内で行われた事は、意外と知られていない。
博覧会の映像等で大型映像の技術を蓄積したイマジカは、1990年3月にユニバーサルよりSFXテスト製作の依頼を受けた。
イマジカでは、特撮グループ(当時)金子昌司氏、中村眞氏を中心に、国際室(当時)市橋耕治氏を責任者としたプロジェクトチームを編成してこのテストに対応した。
このテストで評価されたイマジカは、本編のSFXを受注する事に成功。
待合スペースにあった製作者一覧パネル。日本のイマジカの社名も。
このプロジェクトメンバーに外部の協力スタッフを交え、イマジカ製のマルチ70オプチカル・プリンターを駆使した合成作業はユニバーサルスタジオとの守秘義務条件より”秘密裏”に行われた。
(このマルチ70オプチカルプリンターはその実績と米国映画界に対する貢献に対し、02年には第74回米国アカデミー科学技術賞を受賞を受賞した。)
また、随所に登場する手書きによるエフェクト・アニメーションは、ゴジラ・シリーズ等でも有名なライトハウスの橋本満明氏が担当。
アニメーションは1013枚に至り、オプチカル作業の為のマスクは100枚以上に及んだ。
そうして、90年の9月下旬、日米双方のスタッフによるチェック・ラッシュが行われ、その映像は完成した。
翌1991年の5月2日、ユニバーサル・スタジオ・フロリダでBTTFライドがオープン。
この、他に例を見ない"メガトン級ライド"の登場は、映画シリーズ3作目の「Back to the Future Part III (1990)」の公開後間も無い時期という事もあり、日米メディアが注目するグランド・オープンだった。
BTTFライドは、1993年6月2日にユニバーサル・スタジオ・ハリウッドにもオープン。連日40分~1時間待ちの大行列が出来る人気アトラクションとなった。
2000年には、日本のユニバーサル・スタジオ・大阪のオープンに合わせ、デジタル・リマスター版が製作された。そのポスト・プロダクションはロサンゼルスにあったイマジカUSAで行われた。
70mmネガ->スキャン->デジタル処理->70mmフィルムへのレコーディング、という一連のレストレーションに加え、そしてDTFテープによるデジタル映像での納品も行われた。
このデジタル・リマスター版では、ホコリ&傷の除去等のレストレーション作業、デジタル・カラーコレクションに加え、オープン当初のスポンサーだったペプシから、トヨタがスポンサーとなった為、映像中に登場する看板をペプシからトヨタへCGで差し替える作業も行われた。このCG作業はサンタモニカにあるサスーン・フィルムデザインへ、イマジカUSAより発注され行われた。
そしてBTTFライドは2001年3月31日、ユニバーサル・スタジオ・大阪にオープン。現在、大阪で観る事が出来るのは、このデジタル・レストレーションされた映像である。
このBTTFライドは、世界に3箇所(フロリダ、ハリウッド、大阪)あるユニバーサル・スタジオのテーマ・パークで人気を呼んできたが、フロリダは今年3月30日に、そしてハリウッドはこの9月3日に終了した。
現在、このBTTFライドが楽しめるのは、世界中でも、日本のユニバーサル・スタジオ・大阪だけとなった。
ユニバーサル・スタジオ・ハリウッドでは終了予定の約1ヶ月前の8月2日からカウントダウン・イベントが開催され、エメット・ブラウン博士を演じた俳優クリストファー・ロイドらが姿を見せていた。
ハリウッドでのBTTFライドの終了後は、人気アニメ「シンプソンズ」のアトラクションがオープンする予定だという。
参考文献: IMAGICA FLASH Vol.24(平成3年7月発行)株式会社IMAGICA 発行
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