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映像ジャーナリスト 鍋 潤太郎の随筆による、ハリウッドVFX情報をいち早くお届けします。

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■ハリウッドで人気の流体シミュレーション・ツールをAutodeskが買収

 流体シュミレーション・ツール「Naiad」の開発&販売元であるExotic Matter社は8月11日、ユーザーに向け、「Naiad」のリリースをあと1回で終え、既存ユーザーとのライセンス契約を終了する事、そして NaiadをAutodeskに売却した旨が伝えられた。同時にAutodeskも、Naiadの技術及び権利をExotic Matter社より獲得した事を正式発表した。

 Naiadは、ここ数年ハリウッドのVFX業界でシェアを伸ばし、高い評価を受けている流体シュミレーション・ツール。海など、難易度が高い『水系』のエフェクトで威力を発揮しているツールである。

 これまでにも数々のハリウッド映画で使用されているが、最新の使用例としては現在公開中の映画『誰もがクジラを愛している』や来年公開予定のアン・リー監督による話題作『ライフ・オブ・パイ』等がある。

 今回のAutodeskとの契約で、Exotic Matter社の創立者であり経営最高責任者であるマーカス・ノーデンスタム氏、チーフ・サイエンティストのロバート・ブリッドソン氏の両氏も Autodeskに移籍したという。事実上、「AutodeskがExotic Matter社を買収した」とも言えるかもしれない。

 Autodeskの発表によれば、今回の獲得は、Naiadが持つ高度な流体シュミレーションの機能や技術を、今後のAutodeskプロダクツに反映 させる事が狙いで、これまでのスタンドアローン・ツールとしてのNaiadは消える運命にある。将来的に、どのAutodeskプロダクツに反映させるか 等の具体的プランは、現段階では未決定だという。

■Autodesk製品としてさらなる発展・進歩をして再登場することを期待

 このニュースは、ハリウッドのVFX業界、特にエフェクト・アニメーションに携わるアーティストやテクニカル・ディレクター達にショックを与えた。

 Naiadの利点は、優れた流体ツールであるばかりでなく、サードパーティのソフトウェア会社が開発&販売するスタンドアローン・ツールであったことに ある。スタンドアローンであることで、各種3Dアプリケーションや既存のエフェクト・パイプラインと組み合わせて併用できる利点があった。また、独特のイ ンタフェースや使い易さ等も魅力だった。

 今回NaiadがAutodeskに吸収されたことで、近い将来Autodeskのプロダクツとして更なる発展や進歩が期待できる可能性は充分にある。

 しかし、ハリウッドのエフェクトの現場からは、「今回の買収で、Naiadの利点が、ある程度失われるのでは」と心配する声が出ているのも事実だ。 そ れは、サード・パーティの優れたアプリケーションが、大手に買収された例として、「Shake」がAppleに吸収された後、消滅してしまった例がまだみ んなの記憶にあるからだ。

 現在、ハリウッドのVFXスタジオ、アニメーション・スタジオ、そしてゲーム・スタジオの大手では、エフェクト・パイプラインをHoudiniに移行す る傾向がある。このシェアを奪回するための経営戦略の一環として、今回のNaiad獲得があったという見方もできるのかもしれない。

 Autodeskには、新しい流れとしてNaiadを組み込み、是非とも素晴らしいプロダクツとして世に再び登場してくれる事を願うところである。

 



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