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映像ジャーナリスト 鍋 潤太郎の随筆による、ハリウッドVFX情報をいち早くお届けします。

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著者注:この記事は、映像新聞2016年9月5日号に寄稿させて頂いたものです。

Production Sessions   メイキング・オブ・「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」

7月26日(火)10:45 am - 12:15 pm  ホールB

Tuesday, 26 July, 10:45 am - 12:15 pm, Anaheim Convention Center, Hall B
The Making of Marvel’s "Captain America: Civil War"

画像:会場に登場した、実際に撮影で使用されたコスチューム。マーベル側のご配慮で、写真を撮らせてくれるコーナーもあり。太っ腹である。
 

パネラーの顔ぶれ:

Victoria Alonso, Executive Vice President, Physical Production
Dan Deleeuw, VFX Supervisor
Jen Underdahl, VFX Producer
Marvel Studios

Russell Earl, VFX Supervisor
Industrial Light & Magic

Greg Steele, VFX Supervisor
Method Studio


○概要

この作品には2,500人あまりのクルーが参加した。VFXベンターは全18社に及んだ。2,782ショットが制作され、うち2,745 ショットが本編で使用された。モニター画面などを含む415ショットがVFXベンダー間でシェアされた。こうして194,608フレーム、全135分の映画が完成した。

今回は12のキャラクター(キャプテン・アメリカ、ウィンター・ソルジャー、ファルコン、ホークアイ、スカーレット・ウィッチ、アントマン、アイアンマン、ブラック・ウィドウ、ウォーマシン、ブラックパンサー、ヴィジョン、スパイダーマン)が登場する。

中でも、この12人の一大バトルは最大の見せ場である。「グレート・ストーリー」を重視すべく、なるべくモーション・キャプチャは使用せずキーフレーム・アニメーションにこだわった。プレビズを綿密に準備し、バトルの展開を把握しながら進められた。

VFXのワークフローは、スクリプト → ルックデブ → ストーリー・ボード → プレビス という風に進むのが理想的だったが、現実はなかなかそうスムースにはいかない。これらは交錯して進められ、大変な騒ぎだった。

これはその一例から。ヘリコプターに乗ったウィンター・ソルジャーをキャプテン・アメリカが阻止するシークエンスは、まずサード・フロアがプレビスを制作。それをベースに撮影が進められた。これらはグリーンバックのセット撮影で、背景や必要部分をデジタルで埋めて行く作業が行われた。


○プレート・ユニット

ではここで、プレート・ユニットのお話を。この作品の舞台は世界中を移動するので、それぞれの国や地域の実写プレートを撮影する必要があった。プレートはアイスランド、ロシア、プエルトリコ、NY、ベルリン、ロンドン、そしてブカレストなどで撮影された。世界各国の撮影クルーにお世話になった。この作品は、全世界のフィルム・メーカーのコラボレーションとも言えるだろう。

ストーリー・ボードからプリビスを起こし、膨大なショットリストを作成。プレート撮影の現場では、そのショットリストと常ににらめっこ。撮りこぼしが出ないように注意。

これはダブル・ネガティブが担当したシークエンスの例だが、オーストリアの式典会場での爆破シーンは、実はベルリンで撮影している。プレート・ユニットは多い時で150人ほどが参加している。カメラはARRIのALEXA XTで撮影された。

アトランタでの撮影では、撮影する建物の配置を正確に地図に起こし、綿密に準備した上で敢行。撮影したスチル写真は20万枚にも及んだ。

ちなみに。冒頭のラゴスのシークエンスは、ドイツのRISE Visual Effects が担当したが、素晴らしい仕事をしてくれた。


 
○エアポートでの大激突シークエンス

エアポートでの大激突シークエンスは、リファレンス画像の撮影だけで2週間を費やした。なにしろ、シークエンス全体を通して、すごい数の車両やプロップが登場する。ショットとショットの繋がり等も考慮しながら準備が進められた。

12人のキャラクターは、全員分のデジタル・ダブルを作った。フォトリアルが前提なので大変だった。それぞれのキャラクターには様々な工夫がある。アントマンは、マスク越しに俳優ポール・ラッドの目が見える関係で、彼のマスクなしの演技も撮影された。ブラックパンサーは、CGモデルをスタント・パフォーマーの体格に合わせる必要があったので、プロポーションの調整を行った。ファルコンはほとんどがデジタル・ダブルのショットである。アイアンマンは、この作品の為にモデルを作り直し、最新の武器も備えている。またスーツの中にカメラが入るシーンがあるので、スーツ内のパーツも多数制作する必要があった。

さて、新キャラのスパイダーマンだが、彼の参入には全クルーがとてもエキサイティングだった。だって、スパイダーマンがマーベルに参入したのって、凄くない?(場内から拍手が起こる)しかし、スーツから何から全てゼロから用意しなければならなかったので、大変だった。マーベル・スタジオ側と小まめに連絡を取り、デザインのチェックを繰り返しながら進めた。キャラクター・アニメーターは、10代の無邪気な動きを意識しながらアニメートした。スパイダーマンは表情を出す為、俳優トム・ホランドの演技を撮影し、マスクのフェイシャル・アニメーションに反映させている。

このシークエンスは639ショット。ILMと、ILMのパートナーであるBaseFX(北京)が担当した。


○ミサイル・サイロでの戦い

アイアンマンとウィンター・ソルジャーが戦うミサイル・サイロのシークエンスは230ショット。

プレートはアトランタで撮影。現場で撮影したHDRIには「VFXデータ計測待ち」で退屈そうに待ちわびる撮影クルーも写り込んでいる(笑)

アイアンマンは、ロバート・ダウニー・Jrがマスクを外して顔を出しているショットも多いが、この撮影用コスチュームはレガシーが担当、そして後でデジタルに差し替えている。その際、撮影した演技がきちんと活きるように配慮。

キャプテン・アメリカの撮影用の盾は、柔軟性のある柔らかいものと、ハードな硬いもの等、数種類用意された。

アイアンマンのデジタル・ダブルは、ILMが作ったものと、メソッド・スタジオが担当したものが存在する。また、これには16種類のダメージ・パターンが用意された。これはジオメトリとテクスチャーの組み合わせで用意され、ストーリー展開に合わせてダメージ・レベルが管理された。レンダリングはV-Rayを使用している。

これは、バッキー(ウィンター・ソルジャー)のアーム部分のデベロップメント風景。背景のミサイル・サイトはデータがかなり重たいアセットだった。リグを仕込んで、アニメーターがパーツを動かせるように作ってある。

ミサイル・サイロの下部はセット撮影で、外界はグリーンスクリーン。マット・ペインティング、フォグ、パーティクル等を足しこんで外界を表現。このセット撮影では、ほとんどのパーツをVFXで差し替えている。


○Q&A

Q: 若きロバート・ダウニー・Jrのシーンは、どのVFXベンダーが担当したのか。
A: 例によってLola VFXが担当している。

Q:プレート・ユニットについて。なぜ、わざわざプレート撮影を?なぜ現地でロケをしなかったのか。
A :今回は世界各地のさまざまな国が登場するので、全部の国でロケを行うにはスター達のスケジュール調整が非常に困難という事情が大きい。必然的にプレート撮影をしてVFXで処理という形になった。

以上






このサイトに含まれる記事は、鍋 潤太郎が日本のメディア向けに
随筆したものを再編し、ご紹介しています。


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