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著者注:
映像ジャーナリストの鍋 潤太郎が1997年に随筆した記事です。ちょうどデジカメが普及し始めた頃で、掲載されている画像は、"最新"だったカシオQV-100(解像度:640x480)のテストも兼ねて撮影しました。その為、画質があまり鮮明ではありませんが、当時の「最先端」デジカメの技術革新が感じられる、懐かしいムードを醸し出しています。
先週の金曜日、West Los Angelesにあるアート系シアター"LAEMMLES'S ROYAL" へ"SHALL WE DANCE?"を観に行ってきました。
["SHALL WE DANCE?"を上映中のLAEMMLES'S ROYALシアター:筆者撮影]
ここは、普段は外国映画等を上映する、日本で言えば名画座のよーなもんで、このテの劇場はLAにもいくつかあります。
この映画館は複合型(AMCのように複数の劇場から成るタイプ)ではなく、スクリーンが1つで完全入れ替え制。キャパは 500~600位でしょうか。
なので、入場出来るまで、映画館の前で待つ訳です。
僕は、夜7時からの回に行こうと思い、6時過ぎ位に同劇場に行きました。
すると、既に列が出来てました。あらま。
最初は普通の列だったのですが、だんだんと人が増え、仕舞には劇場のブロックをとり囲む、とんでもなく長い列になっちゃいました。
[ROYAL 劇場を取り囲む、こん~~~~なに長い列。入場間近の6:40PM頃 筆者撮影]
この人達がみんな、遠い異国の地である日本の映画を観に来てる訳ですね。 これって、ゴジラやアニメならともかく、前代未聞の事態じゃないでしょーか。
すげえすげえ。
この劇場でこんな長い列が出来るのは珍しいらしく、道行く人も驚いて見ています。ふと通り掛った人は、『なんだこりゃ?外国映画かなんか?すごいね』と目をま~るくしてました。
そーこーする内に入場となりました。
アールデコ調の、古き良き時代って感じの、お洒落な内装の劇場でした。
入場料金は、$8.00。 日本の半分以下の御値段でございます。客の入りはトータルで9割弱でした。
日本人は僕1人で、アメリカ人90%、アジア系の人が10%位。年齢層は意外と高く、50~60才位の夫婦も多かったです。
友人と連れだって観に来てる学生さんもいました。
映画事情に詳しい、友人のCGプロデューサー溝口稔和氏によれば、ROYAL 等のアート系シアターには、爆発やバイオレンスばかりのハリウッド映画に飽きた熟年層の映画ファンが、外国映画等を楽しむ為にやってくるのだそうです。
"SHALL WE DANCE"は新聞やテレビでも宣伝されたので、その波及効果でこれだけの人が集まったのでしょう。
さーて、映画が始まりました。
観客の皆さんの目には、サムライもゲイシャもキモノもいない『正しい日本』の風景が新鮮に映ったようです。西武線が映った時は、感心するような、溜め息がもれていました。
竹中直人さんが登場すると、場内は爆笑の連続でした。特に、カツラをかぶってオーバーアクションで踊る竹中さんは、アメリカ人にバカウケになってましたね。
横のオバちゃんは手ぇ叩いて喜んでました。
英語字幕での上映でしたが、(僕はあまり字幕は観てませんでしたが)なかなか的確な訳だったようです。絵的に面白いシーンでなく、セリフ回しが面白いシーンでも、アメリカ人に充分ウケていました。
また、興信所の探偵さんが、調査を進めるに従ってだんだんとダンスにハマっていく部分も、ものすごくウケてました。
反面、しんみりするシーンでは鼻をかんでるご婦人もおられました。
この映画は爆発も怪獣もニンジャも出てきませんが、喜怒哀楽はきちんと伝わったようです。
日本映画も、ストーリーや造りが良く、エンタティメント性があれば、海外でも充分通用する事がはっきりとわかりました。
特に、爆発やバイオレンスに疲れ、何か斬新なモノを求めていたファン層の欲求に、ピッタリと治まった作品のような気がします。
日本映画の海外進出は、まずは、この作品のような正統派路線で、海外への触手を伸ばしていくのが、今の時代には合っているのかもしれません。
アイドルもの、特撮ものは、海外では今はちょっとムズカシイでしょうね。
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僕は、"SHALL WE DANCE?" を初めて観ましたが、しみじみと楽しめる、良い映画だと思いました。社交ダンスという題材も斬新で良かったと思います。
特に、ダンスコンペのカメラがとっても良かったと思いました。
編集の間とか、テンポもバッチリだったと思います。
ハリウッド映画ばっかり観て、たまにこーゆー作品を観るとホッとしますね。
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なにかで読んだ(LAの日本語情報紙だったかな)のですが、"SHALL WE DANCE?"のオリジナルは2時間弱の作品らしいのですが、今回の配給元のMIRAMAX の要請により、30分近くをカットしたのだそうです。
それによると、『2時間以上の外国映画を字幕で見せるという事は、観客に観に来るな、と言うのと同じ事』とMIRAMAX から言われたからだそうで。
日本人にしかわからないニュアンスの部分を中心に、カットしたそうです。
僕はオリジナル版を観てないので、どの部分がカットされたのか分らないのですが、エンドロールに確か、『清水美砂』というクレジットがあったような気がしたのです。
これが『ポッキー4姉妹』をやってた、あの清水さんだとしたら、僕の記憶では清水美砂さんが出ているシーンは無かったような気がするので、清水さんのシーンは切られちゃったのかな?等と思っている次第です。
でも、記憶違いかもしれない。今度、ビデオを借りて確認しよーっと。
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という訳で、"SHALL WE DANCE?" は広いロサンゼルスでたった4館だけという限定公開ながら、健闘中です。
昨日、車で通りかかったら、また列が出来ていました。
この規模の上映としては、かなりのヒットになるかもしれませんね。
外国映画の場合、人気が高ければ上映期間を伸ばしたり、上映館を増やしたりするそうですから、今後の動向が期待されます。
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日曜にセンチュリー・シティに別の映画を観に行った時、ショッピングセンターの靴屋に"SHALL WE DANCE?" のカラーのポスターが貼ってあり、ダンスシューズの販促に使われていました。
日本ではこの映画の公開直後にダンススクールが賑わったとの事ですが、ひょっとしたら、ロサンゼルスでも同じ現象が起こるかもしれませんね。
1997年に書かれた記事 目次
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