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○30秒のストーリー・テリング CMにおけるVFX 「Direct TV "Forward"」
概要:アメリカでは、スーパーボウル等のスポーツイベントがあると、その中継に
あわせて巨額の予算をつぎ込み、その為だけのCMが製作される。
その中から、インパクトの強かった2本にCMのメーキング講演が行われた。
◇テレビCM 「Direct TV "Forward"」メーキング
Alex Frisch - 2D VFX Supervisor / Method Studio
Hatem Banabdallah - 3D VFX Artist / Method Studio
我々Method Studioは、去年のスーパーボールの時にオンエアされた 「Direct TV "Forward"」のテレビCMを製作しました。
これは、1人の少年の成長と、時代と共に移り変わるテレビの進化を1カットで描いたものです。
主人公の少年が、家の中を歩いていくと、部屋を移るたびに成長し、歳を取り、それと共にテレビのテクノロジーが時代に沿って進化していくというストーリーです。
コンセプトや展開が重要なのでプリビスには1ケ月を費やしました。そして4日間かけてスタジオでグリーン・スクリーンの撮影を行い、その後4週間かけてCG製作を行いました。
このCMに出てくる部屋はすべてCGです。理由はいろいろありますが、ブリビスのOKが出たのが撮影の4日間で、セットを組んでいる時間がなかったという事情もあります(笑)
少年が部屋を移りながら成長していくので、6~7種類の部屋が設定され、簡単な小物が置いてあるグリーン・スクリーンのセットで撮影は行われました。
成長に合わせて役者を4人程用意し、成長過程は後ろ姿をモーフィングさせたりして繋いでいます。
最終的に、このセットはCGの部屋に置き換えられましたが、この部屋の内部はファイナル・ギャザリングによってリアルなライティングを心掛けました。これにはMAYAとMentalRayを使用しました。
ambient pass, diffuse pass, glow pass等レイヤー訳をしてレンダリングし、合成時に調整を行いました。
◇テレビCM デビット・フィンチャーが監督した「ハイネケン」メーキング
Edward Ulbrich - Executive Producer / Digital Domain
Brad Parker - VFX Supervisor / Digital Domain
Bard Hayes - Sr Digital Artist / Digital Domain
ここ数年、著名な映画監督がCMをディレクションするケースが増えてきています。
演出もより凝ったものとなり、それ故に普通の映画のVFX製作プロセスと殆ど同じようなワーク・フローで製作されるようになってきました。
デジタル・テクノロジーが進化し、だんだん映画とCMとの間で、CGやVFX、ポスプロ等のデジタル製作プロセスの垣根がなくなりつつあります。
その意味では、この新しい流れは、「CGプロダクション」、「エフェクト・プロダクション」という従来の呼び名ではなく「デジタル・プロダクション」と呼んだ方が正しいでしょう。
中でもプリビズは、撮影前にアイデアを明確に出来、よりコンセプトやクリエイティブを明確する為にも大変有効です。
ビッティング(競合プロダクションとの入札)の段階でも、プリビスを用意してクライアントに見せる事があります。
また最近では、D1解像度の2倍に相当する2KやHDで製作する事も増えてきています。その意味でも、映画のVFX製作とどんどん垣根がなくなりつつあると言えるかもしれません。
それでは、その製作事例を紹介しましょう。
去年のスーパーボウルにあわせて製作され、しかも、たった1回した放送されていないCMです。
映画監督のデビット・フィンチャーと、人気俳優のブラット・ピットのコンビによる『ハイネケン』のCM。
しかし、このCMで一番お金が掛かったのは、ブラピのギャラではありませんでした(笑)
さて、このCMは、ブラピが自宅アパートで冷蔵庫を開けると、愛飲しているハイネケンが1本もなく、近所の酒屋に買いにいくのですが、後から1000人ものパパラッチが追いかけてきて、さぁ大変、というストーリーです。
撮影はNYとLAのダウンタウンで計3日間かけて行われました。
パパラッチ役で集められたエキストラは約80人で、これを最終的に1000人規模に見せる事が要求されていました。
しかし納期は大変短く、8週間しかありませんでした。
そこで、CGパパラッチを足して、人数を増やす事にしたのです。撮影日数を増やせば、制作費がそれだけ圧迫されますから。
例えばこのシーンでは、大勢のパパラッチが走っていますが、本物の人間はごく少数で、殆どはCG人間です。
また、このダウンタウンNYのビルの俯瞰ショットに至っては、フルCGです。建物も道路も、人間も、すべてCGです。
デジタル・ドメインのCM部門は、LightWave3D(以降LW)を使用 していますが、このCMではCGパパラッチのキャラクター・リグはMAYAで、 レンダリングはLWで、という風に使い分けを行いました。
また、この1000人のパパラッチの表現では、群集シュミレーション・ソフトを使用しましたが、これをCMで使用したのは初めての試みです。
折りしも、デジタル・ドメインの映画部門では「I.Robot」のプロジェクトが進行中でしたので、それを使わせてもらう事にしたのです。
こうして、このCMは殆ど映画の製作プロセスと同様に製作されました。
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このように、今年のVisual Effectsフェスティバルは大盛況の内に幕を閉じた。
VESはこのような年1回のフェスティバル、そして年1回のVESアワード授賞式など、業界の更なる発展と活性化にむけて精力的な活動を続けている。
著名なエフェクト・ハウスが惜しげもなく、その製作舞台裏を披露、貴重な情報を業界内でシェア出来るというこの試みは、映像のメッカであるハリウッドならではもの。
ところで、VES関係者によると、日本でも「VESジャパン」を作ってもらおうと、日本の映像業界に打診した事があったそうだが、残念ながらあまり良い反応が得られず、断念した経緯があったそうだ。
このような楽しく有意義な試みが、日本でも行われるようになれば、業界の活性化にも繋がる事と筆者は思う。もし興味のある方は、試しに来年のVisual Effectsフェスティバルに参加されてみる事をオススメしたい。
VESオフィシャルサイト
http://www.visualeffectssociety.com/
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書かれたものを再編し、ご紹介しています。
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