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映像ジャーナリスト 鍋 潤太郎の随筆による、ハリウッドVFX情報をいち早くお届けします。

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おととい1997年8月25日、LAの大手特撮スタジオの老舗、BOSSFILMが倒産してしまいました。部門閉鎖、リストラ、いろんな憶測が飛び交いましたが、結局、会社が倒産してしまったのだそうです。

BOSSは14年の歴史を誇り、ミニチュア部門、デジタル部門等多くの部署をかかえる大手で、従業員もかなりの数に登ります。

下記は、BOSSFILMに勉めていた友人のメールです。ご本人の承諾を得られましたので、部分引用したいと思います。

------

 >昨日(25日)の夕方5時45分にカンパニーミーティングが開かれ、リチャー
 >ド・エイドランドから会社を今晩をもって閉じるという発表がありました。
 >
 >そして今日は机の整理だけのために出社し、晴れて失業者となってしまいまし
 >た。一応2週間分の給料の保証はされました。
 >
 >かわいそうな人は、
 >
 >○ハネムーンから帰ってきた休日開けの
 >初日にこの発表を聞かされた人
 >
 >○次のディズニーのプロジェクトのために
 >雇われた人。1ヶ月も働いていない人。
 >
 >○現在休暇中の人
 >
 >○先週家を購入し、引っ越したばかりの人。
 >
 >○外国人労働者。(ビザの問題でだいたい3ヶ月
 >は転職期間として必要。2週間なんてすずめの涙)
 >
 >と言う状況でありながら、
 >
 >さぁ、バーベキューやろうか?とみんないたって冷静。
 >
 >○Digital Domainも深刻で、近いうちにレイオフ第2段をするとか。
 >
 >○Sony Image Worksも3ヶ月間の無給休暇の希望者を募集して
 >いるという。
 >
 >○DreamWorksも "SHREK" プロジェクトの人は全て解雇。
 >その一部が現在日系CG会社で働いている。
 >
 >氷河期到来。寒い寒い。

確かに、Digital DomainとSony Image Worksのリストラの件は、LA TIMESにも載っていました。

某筋からの情報によると、BOSSFILMの閉鎖はチャプター7という破産処理のカテゴリなのだそうです。

>As you may or may not have heard, Boss Film Studios will cease
>operations this week, and have filed Chapter 7 bankruptcy.

チャプター7は不渡りや破産に匹敵する、かなり深刻なものだそうです。
管財人を立て、会社の資産を全て売却して負債にあてるレベルだそうです。

多くの場合はチャプター11というカテゴリで、社員は解雇するも、会社は存続させ会社更正をするらしいですが、それよりもシリアスな状況だそうです。

----

今回の出来事は、あたらめてハリウッドの大手特撮スタジオの経営の難しさを浮き彫りにしたと言えます。

ハリウッド映画のプロジェクトを入れれば、それこそ億単位の収益がある訳ですが、最近はLAに特撮スタジオやデジタルスタジオが乱立、競争も厳しくなっています。 CGアニメータの待遇もどんどん上がり、よい人材を確保するにはそれだけの給料を出さねばならず、設備投資よりも人件費にお金がかかる時代です。

今や、ハリウッドのCGアニメータのトップは年に1000万円稼げる時代になりましたが、その分良い人材を抱える会社の負担はどんどん大きくなります。それでいて、会社間の競争が激しく、仕事が取れないとあれば、つぶれるしかない訳ですね。

最近、主立ったデジタルスタジオは、大手の資本参加を受ける傾向にあります。20世紀FOX がVIFXを買い、今度はそのVIFXがBLUE SKYを買う、という事態も起っています。やはり、独立系特撮スタジオは経営が難しいのでしょう。

ハリウッド映画におけるデジタル・エフェクトの比率はまだ伸びるでしょう。しかし、この時代がいつまでも続くかというと、そうでもないような気がします。

ひょっとしたら、ハリウッドのデジタル時代は、今が全盛なのかもしれない、ふとそんな気がする事もあります。

今後の動向は、冷静に見守る必要がありますね。

ではでは。
 
 

 関連記事:

映画「Shrek」の開発秘話 野口光一氏が語る(11/02/2001)

『リストラの秋BOSSFILMの競売開始』(10/09/1997)


 

 
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