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映像ジャーナリスト 鍋 潤太郎の随筆による、ハリウッドVFX情報をいち早くお届けします。

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猿、否、去る(自爆) 97年6月10日、毎月恒例のLA SIGGRAPH の月例会がありましたので参加しました。

ロサンゼルスの国際空港とサンタモニカの中間に位置する、ヨットハーバーで有名なマリナ・デルレイのエリアには、最近多くのデジタル・スタジオや特撮スタジオ、関連企業が集まっています。Rhythm&Hues, Boss Film, Imagica, Dream Works(スピルバーグとカッツェンバーグでおなじみ)のスタジオ予定地、そして、VIFX等があります。

今回のホストはマリナ・デルレイにある特撮スタジオ、VIFXで、テーマは同社がVFX を担当した、"RELIC" (日本で公開中)と "VOLCANO"のメーキングでした。

そのVIFXのサウンド・ステージに仮設のスクリーンと客席、35mmの映写機を設置し、メーキング大会が行われました。

では、当日の模様を特別に、みなさまにお伝えいたしやしょう。


LA SIGGRAPH 6月月例会
日時:1997年6月10日 夜7時
会場:VIFX
テーマ: VIFXによる映画『Volcano』&『Relic』メーキング

まず、ビールとワインと食べ物で懇親会が行われ。その後、メーキング講演が行われました。


○RELIC

僕はこの作品を見損ねてしまい、本編は見てないのですが、今回のLA SIGG-RAPHで初めて映像を観ました。

なんつーか、イボイノシシとピューマとエイリアンを合せて3で割ったようなバケモノが人を襲う話らしいです。(日本で観た人の方が詳しいかも)このバケモノは、クリーチャー分野のパイオニア、スタン・ウィンストンが担当しています。("THE LOST WORLD"もスタンのスタジオが担当しています)

で、

バケモノは、スタンのスタジオで作った、人が入って演技する着ぐるみと、クローズアップ用のアニマトロクス(中に油圧ケーブルやら、リモコンやらが仕込んである)と、引きのシーンの全身像の為の、VIFXによるCG製のバケモノを使い分けてます。
CGのバケモノは、なかなか良く出来ていました。大手のスタジオでなくてもここまで出来るのだ、という良い見本を示してくれたと思います。

もともとVIFXは、"SPPED" の1作目等でも素晴らしいエフェクトを作り出した有名な会社ではあるのですが、今回、同社としては初めてデジタルのバケモノを作り、話題になっています。
この作品は、特撮専門誌"CINEFEX"(最前線 PART-8 参照)の69号でも紹介されています。

この会社のCGのソフトの使い分けは独特で、非常に複雑なプロセスを踏んでいます。スライドで作業の流れ図を見ましたが、とても一度で理解できるシロモノではありませんでした。

なんでも、

Prisms(カメラパス) → Alias (モデリング)-> Softimage (アニメーション)-> Renderman (レンダリング)

という複雑な流れで、データをコンバートして、それぞれのソフトが持つ長所を生かす形で最終画像まで持って行っているそうです。
ILM も似た方式ですが、それよりも複雑ですね。

『バケモノ炎上』の部分は、Prismsのパーティクルで炎の表現をしたそうです。パーティクル系はすべて、Alias(Dynamation) ではなくPrismsで行っているとの事。

特撮部分はなかなか良く出来ていました。

 

○VOLCANO

本欄でも何度か紹介している、LAで火山が噴火して、さあ大変、という映画です。

この作品のVFX にはの複数の特撮スタジオが関与していますが、VIFXではウィルシャー大通りでの火山弾、溶岩の部分を担当しています。空を飛び交う火山弾や、ウィルシャー大通りを流れる溶岩をCGで表現しています。

溶岩はパッチでモデリングされ、レンダリングはRendermanで 行っています。岩の質感はRenderman のシェーダーによるものだそうです。

これらのデジタル製の合成素材プラス、スタジオで別撮りした実写の煙、ミニチュア等をデジタル合成してシーンを作り上げています。

溶岩と俳優の演技が絡むシーンでは、

・溶岩の位置を示す、オレンジ色の光源の入った細長い角柱を、溶岩が流れる方向に向かってスタッフが押す。周りの地面や俳優への溶岩の照り返しはこの照明によるもの。

・これで溶岩の位置がわかるので、俳優はそれに合せて演技する。

・これに、デジタル製の溶岩を合成する。

俳優のシーンはブルーバックでもなんでもなく、ただフツーに撮影しただけです。ラッシュを見ると、周りにスタッフも映っています。

しかし、上がったシーンを見ると、ちゃんと俳優の背景には溶岩がドロドロ流れていますし、スタッフも画面から消されています。つー事は、マスクは<合成時にコンポジッターが苦労して切った、っつー事ですね。

すげえ。

最近はデジタル合成の進歩のお陰で、ブルーバックやグリーンバックでなくとも合成が出来るようになりました。お陰で(撮影するクルー達)は撮影が楽になりました。でも、お陰で合成する人たちは手間が増えました(笑)。

日本の映像業界に『フレーム』がお目見えした頃も、『どうせ、フレームの合成でなんとかしてくれるから』と、荒い撮影が増えた、という話を聞いた事がありますが、ひょっとしたらハリウッドのポスプロでも同じセリフが飛び交ってるかもしれませんね~。

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さて、LA SIGGRAPHはCGの学会であるACM SIGGRAPH の分化会ですが、御本家の、毎年夏に開催されるSIGGRAPHが、今年はロサンゼルスのコンべンション・センターで8月2日から8日まで開催される予定です。

世界中からCG屋が4万人以上も集まる、非常に大規模なコンベンションです。

このSIGGRAPHでは機器展示の他、セミナー、CGフィルムショー等が行われます。このフィルムショーで上映される作品は世界でも有数の作品ばかりです。

今年はどんなSIGGRAPHになるのか?楽しみですねー。

それでは、また。

 



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