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映像ジャーナリスト 鍋 潤太郎の随筆による、ハリウッドVFX情報をいち早くお届けします。

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CGのパイオニアであり、数々の受賞経歴のある特撮界の先駆者、ロバート・エイブル氏(愛称:ボブ・エイブル)が、9月23日に心臓麻痺の為、ビバリーヒルズの病院で亡くなった。

エイブル氏は1937年生まれ。1971年にロバート・エイブル・アソシエイツ社を設立し、コンピュータをビジュアル・エフェクツの分野に持ち込み、誰も観た事がないような映像を次々に生み出し、特撮映像界の「デジタル革命」の仕掛け人としても知られている。

CGの分野においても80年代に、かの有名な「セクシー・ロボット」を始めとする斬新や映像や、「セブンアップ」のCF等でテレビ映像界にセンセーショナルを巻き起こし、注目を浴びた。

映画の分野でも「トロン」や「2001年宇宙の旅」のスリット・スキャンのシークエンス等でその才能を発揮した。

ロバート・エイブル・アソシエイツ社は後に解散したが、そのスタッフ達はリズム&ヒューズを始めとする多くの著名プロダクションで現在も活躍している。

エイブル氏はUCLAにて教鞭を取り、その教え子にはハリウッドで活躍する映像クリエイターが多数含まれている。日本では、ポリゴン・ピクチャーズの設立者であり元代表の河原敏文氏が、彼の生徒の1人である。

筆者はつい数ヶ月前、ハリウッドにあるGnomon School of Visual Effects で開催された、エイブル氏の講演に参加した。その際、同氏より「2001年」の舞台裏を中心に、興味深い話を沢山聞かせて頂いた。講演後に筆者が話しかけると、笑顔で気軽に応じてくれるような、大変気さくな方だった。

巨匠ロバート・エイブル氏のご冥福を心からお祈りしたい。合掌。
 
 


 


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(C)1998-2009 All rights reserved  鍋 潤太郎

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 ○はじめに

今朝、いつものようにロサンゼルスのフリーウェイを走っていたら、「ポケモン・カー」に遭遇した。

黄色のワーゲンに装飾をほどこし、「ポケモン」に見えるようにしている、既にニュースやマスコミにも登場した「ポケモン」のキャンペーン用の車だが、道を走っている他のドライバー達が、みんな思わず指を差して喜ぶ位の“人気者”であった。

こんな車が堂々とロサンゼルスの町中を走り回る程、今アメリカでは日本のアニメーションが浸透しつつある。ここでは、“ジャパニメーション”について述べる事にしよう。

 

○     “ジャパニメーション”(Japanimation)のルーツ

日本でも耳にするこの言葉。Japanese Animationを略して出来た造語であるが、既にアメリカでもお馴染み。巷では日本のアニメに関する雑誌(写真)も発売されており、

もはや映像業界や”OTAKU”の間だけではなく、一般にも浸透しつつある単語である。だが、ここまで辿り着くには長い道のりがあった。

アメリカへの日本製アニメの輸出は1960年代から始まり、「鉄腕アトム」「鉄人28号」「エイト・マン」「マッハGO!GO!GO!」「ガッチャマン」等がアメリカのテレビで放映されていた。しかし、その頃は「日本製アニメ」である事を伏せ、英語吹き替えで地味に放送されていた。

“ジャパニメーション”の転機は、1975年の「グレンダイザー」にあるらしい。

この、永井豪原作のロボットのアニメーションが、1978年にフランスで放映された。

すると、フランスのチビッ子達に大ブレイク。それがヨーロッパに広がり、そしてアメリカへと飛び火。日本のアニメや、“東映の戦隊もの”がアメリカで売れるきっかけとなった。

アニメではないが、東映とテレビ朝日が制作した「恐竜戦隊ジュウレンジャー」は、アメリカ向けに再編集された後「パワー・レンジャー」として1993年より全米で放映され、これがまた大反響。

この番組を全米のテレビに配給しているサバン・エンタテインメント社の現社長が、1978年当時にフランスで大ヒットしたアニメ“GOLDORAK”(グレンダイザー)のフランス語主題歌を作曲した人物、ハイム・サバン氏なのである。  

○     アメリカで“人気の作品”は何か

筆者が80年代後半にアメリカを観光で訪れた時、ホテルでテレビを見ていたら「ヤッターマン」(タツノコプロ)がスペイン語で放送されていて、思わずヒックリ返った事があるが、タツノコプロの作品は、北米では根強い人気がある。無国籍風の作風が、吹き替え後も違和感が少ない為かもしれない。

タツノコプロの「マッハGO!GO!GO」は、アメリカで最も人気のある日本製アニメーションの1つであり、「スピードレーサー」の名で未だによくテレビで放送されている。

また、松本零士の「銀河鉄道999」も人気があり、テレビのサイファイ・チャンネル(Sci-Fi Channel)等で放映されているのを時々目にする。また、「宇宙戦艦ヤマト」も、“スター・ブレーザー“の名前でビデオ化され、ファンの支持も熱い。

数年前の例では「セーラームーン」が一大ブームを巻き起こした。オモチャ屋へ行けばセーラームーンの人形や玩具が並び、女の子に人気。放送の終了が決定した時も、全米でファンの猛反対運動や、放送終了に抗議する署名運動まで起こり、もう大変な騒ぎであった。

しかし、ここまではアニメファンや“OTAKU”に支持される事が多く、まだまだ一般の視聴者とのギャップは残っていた。

○「ポケモン」の超大ブレイク

  98年の9月より、ニューヨーク地区で放送が始まった「ポケモン」。それから約1年足らず。小学校では、上級生が「ポケモンカード」を下級生から脅し取る恐喝事件が発生する程の大ブレイク。今まで、ジャパニメーションといえば、一部の層に支持されるだけのモノであったが、これが一挙に一般の視聴者層にも広がった。

  スーパーへ買い物にいけば「ポケモン」、オモチャ屋に行けば「ポケモン」、映画館に行けば映画「ポケモン」の告知広告、そして道路には「ポケモン・カー」。

  もはや、全米の子供達の中で、“ピカチュウ”の名前を知らない子などいないに等しい。これは、もうホンモノである。“街を歩けばポケモンにあたる“状態の大ブレイク。

      とうとう、“ジャパニメーション”が、一般の視聴者層までに受け入れられる時代に、ようやく突入したのである。

 

○     おわりに

いよいよ、10月29日より、宮崎駿監督の「もののけ姫」が全米で公開の運びとなる。それに先立ち、名門UCLAの映画学科では、定例のスクリーニングの中で、10月初頭のプログラム※にスタジオ・ジブリの長編アニメの数々をこぞって上映し、好評を博していた。

 

※Studio Ghibli: “The Magic of Miyazaki, Takahata and Kondo"(9/30-10/10)

UCLA Film and Television Archive

Schedule of Screenings and Events

PRINCESS MONONOKE(もののけ姫)

GRAVE OF THE FIREFLIES(蛍の墓)

NAUSICAA OF THE VALLEY OF THE WIND (風の谷のナウシカ)

POMPOKO(平成狸合戦ぽんぽこ)

WHISPER OF THE HEART(耳をすませば)

ONLY YESTERDAY(思い出ぽろぽろ)

CASTLE IN THE SKY(天空の城 ラピュタ)

PORCO ROSSO(紅の豚)

MY NEIGHBOR TOTORO(となりのトトロ)

KIKI’S DELIVERY SERVICE(魔女の宅急便)

 

折しも、11月12日には映画「ポケットモンスター:ミューツーの逆襲」のアメリカ版が全米公開される。日本製の長編アニメーションが、アメリカの一般の劇場で配給されるようになる迄には、数多くのハードルがあった。

これまでは、せいぜい公開されても短館上映や、アート系シアターでの限定上映が関の山だったのが、とうとうメジャー公開される時代が到来したのである。


 


 


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