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日本でも2008年12月に公開され話題を呼んだフルCG映画「ベオウルフ」。
この作品には数名の日本人アーティストが携わっているが、ライティング・アーティストの賀山未来氏もその1人だ。
賀山氏のインタビューは、月刊CGワールド誌2004年12月号や書籍「海外で働く映像クリエイター」でも紹介されているので、ご存知の方も多い事だろう。
賀山氏は多摩美術大学美術学部プロダクトデザインを卒業後、未来技術研究所にてAliasパワーアニメーターを使った業務を中心に勤務。
その後、ハワイにあったスクウェアUSAにて、コンポジ ターとして[Final Fantasy The Sprits Within]と、[Animatrix Final Flight of the Osiris]に参加。その後、サンフランシスコある大手ゲーム会社EAへ移籍し、ライティング・アーティストと して[Lord of the Rings]3本のゲーム制作に携わった。
2006年よりロサンゼルスのソニー・イメージワークス(Sony Pictures Imageworks)へ移籍し、[Open Season]、[Monster House RealD]、[Surf's Up]、[Beowulf]に参加。現在は新作フルCG映画のライティングTDとして活躍中だ。
これまでに参加した作品
Final Fantasy : The Sprits Within (2001)
Animatrix : Final Flight of the Osiris (2003)
Open Season (2006)
Monster House : Real-D (2006)
Surf's Up (2007)
Beowulf (2007)
賀山氏が初めてフルCG映画に携わったのは、ホノルルのスクゥエアUSAで制作された映画「ファイナルファンタジー」だった。その時に出会ったアーティスト達は世界中で活躍しており、現在の職場にもハワイ時代の顔見知りが多いそうだ。
ここ数年はフルCGの映画の制作に携わる機会が多いという賀山氏だが、分業制が進むハリウッドの制作スタイルの中で、担当しているのは"ライティングTD"。
手掛ける範囲は、ライティングとコンポジットという、「絵を仕上げる」詰めの部分に相当するが、その一連の作業を担当してみて「一言でいうと、非常におもしろい」と賀山氏は語る。
分業の中での「ライティング担当」の役割は、渡されたデータや画像を尊重し、アーティスト達とコラボレーションを重ねながら、ショットの仕上がりがより良くなるように詰めていく事。
しかし、同じライティングTDでも、実写との合成が前提となるVFX映画を担当する場合と、フルCGの映画を担当する場合とでは、求められるスキルがそれぞれ異なるという。
VFXの場合は実写プレートに合わせてCGのライティング作業を進めていくが、フルCG映画の場合はセットアップをゼロから構築していく事もあり「よりセンスが問われる」という。ショットによっては、賀山氏も自分でシェーダーをカスタマイズする事もあるそうだ。
一般に、ハリウッドの大手VFXスタジオでは、市販の3Dアプリケーションではなく、自社開発ツールで作業を行うケースも少なくない。
自社開発ツールをパイプラインに組み込む利点は、カスタマイズされたプラグインなど、開発サイドからのアップグレードが頻繁に行える事、そして、常にメンテナンスが入り易く、バグフィックスが敏速に処理される点がある。
賀山氏がライティングの作業で使用しているツールも自社開発ソフトだというが、そのツールの名称はなぜか日本語の名前がつけられているのだそうだ。
さて、フルCG映画の制作では、レンダラーがその出来を左右する事も少なくない。賀山氏によればハリウッドにおける一般事例では、多くのVFXスタジオがレンダーマンを採用しているという。
その理由として、モーションブラーが美しく、レンダリング時間が速いという利点に加え、レンダーマンの経験が豊富なアーティストが数多く存在するハリウッドではプロジェクト毎にスタジオを渡り歩くフリーランスも多く、レンダーマンのパイプラインを持つ事が好都合な部分もあるという。
フルCG映画制作の現場では、アーティスト達の根気強く地道な作業が華やかなハリウッド映画を支えている。賀山氏は、その舞台裏を垣間見つつ、「才能溢れる人材に出会えるのも貴重な体験」だという。
今度もフルCG映画への参加が予定されているという賀山氏。映画館で、エンドクレジットの中から賀山氏の名前を見つけるのが今から楽しみである。
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(C)1998-2009 All rights reserved 鍋 潤太郎
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画像: 記者会見でのスナップ
左から、ジョセフ・チュー氏(プロデューサー)、荒牧伸志(監督)、
高橋哲也(映画スコア)、たけうちきよと(脚本)、三宅澄二(製作)の各氏
フルCG長編アニメーション映画『アップル・シード』の続編にあたる映画『EX MACHINA -エクスマキナ-』が、ロサンゼルスで開催されたジュール・ベルヌ映画祭(Jules Verne Adventure Film Festival)において12月15日(土)プレミア上映され、そのクオリティは目の肥えたハリウッドのプレス陣をもうならせた。
この映画祭は、フランスの作家ジュール・ヴェルヌ(Jules Verne)の名にちなんで開催されているパリの映画祭「ジュール・ヴェルヌ映画祭」の米国版として、12月10日から15日までロサンゼルスのダウンタウンで開催された。
『エクスマキナ』の上映は、LAダウンタウンにある劇場Los Angeles Theatreで行われた。この劇場はハリウッド黎明期の1930年に建造されたエレガントな内装の歴史ある劇場で、これまでにも数々のハリウッド映画の関係者試写会や、LAでのシーグラフではMAYAユーザー会等にも利用されている。
この日は、上映の前後に荒牧伸志(監督)、たけうちきよと(脚本)、高橋哲也(映画スコア)、三宅澄二(製作)の各氏がステージ上に登場。製作にまわつわるエピソード等を披露した。また、同作品プロデューサーで日英堪能なジョセフ・チュー氏が通訳を務めた。
上映後に行われた記者会見では、ハリウッドのプレス達から多くの質問が飛んだ。「正直何も期待しないで観たのだが、ストーリーやクオリティの高さに驚いた。一体、どれ位の製作期間で作ったのか」という質問に対し、「アニメーション作品として更に高いクオリティを目指した事もあり、現場の作業量は前作の2~3倍増となった。また2作目はストーリー新たに開発した事もあり、製作には2年以上を費やした」という監督の言葉に、記者達は熱心にメモを取っていた。
また、一作目の「アップル・シード」を見て感動した、ミウッチャ・プラダ(プラダのオーナー兼デザイナー)が「映像は素晴らしいのに、なぜか衣装が劣っている」と『エクスマキナ』の衣装デザインを申し出たという、ユニークなエピソードも披露された。
こうして日本発のフルCGアニメーション映画が、実際に海外の映画祭で評価されているのを目の当たりにして、日本の映像業界の可能性と未来を感じずにはいられず、筆者自身も楽しく感動的なひとときであった。
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