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映像ジャーナリスト 鍋 潤太郎の随筆による、ハリウッドVFX情報をいち早くお届けします。

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新作フルCG映画「Happy Feet」の全米公開(11月17日)に先立ち、サンフランシスコ・フィルム・ソサエティ主催による試写会が11月7日夜、開催された。

サンフランシスコ・フィルム・ソサエティは、サンフランシスコ国際映画祭などを運営する非営利団体。ロサンゼルスに次いで映像関連企業やエフェクト・ハウスが多いベイ・エリアでの映画産業の発展に寄与している。

この日の試写会は、サンフランシスコのジャパン・タウンにある映画館「カブキ・シアター」において開催された。ベイ・エリアの映画関係者が招待され、ジョージ・ミラー監督も出席。試写会の後に行われた質疑応答では、監督による製作秘話が披露された。

ジョージ・ミラー監督は「トワイライト・ゾーン」(1983)のエピソード4や「マッド・マックス」(1979)の監督として有名だが、「ベイブ」(1995)のプロデューサーとしても知られている。

さて、このフルCG映画「Happy Feet」は、ペンギンが主人公の"ほのぼの系"ファミリー映画である。

CG製作は、その大部分をオーストラリアのエフェクト・ハウスであるアニマル・ロジックが担当。しかし、膨大なCGショット数をすべて裁くには限界がある為、ロサンゼルスのリズム&ヒューズ、サンフランシスコのジャイアント・キラー・ロボットなど複数の著名エフェクト・ハウスが応援で製作に携わっている。

日本人アーティストも参加しており、リズム&ヒューズの岡野秀樹氏、ジャイアント・キラー・ロボットの大塚俊秦氏らがその腕を振るっている。

ちなみにこの作品は本来、アイマックス・シアターでの3D立体上映も予定されていたが、いざ実製作が始まってみると予想以上にプロダクションの負荷が大きく、今回は3D化が断念された経緯がある。

ではここで、この日の試写会の後に行われたジョージ・ミラー監督による質疑応答でのコメントを、要約してご紹介したいと思う。

○プロダクションには丸2年近くを費やした。3年前に、主人公であるペンギン
 のマンブルがタップダンスを踊るテスト映像を作り、そこから全てが始まった。

○そもそも8年程前、イギリスのBBCとナショナル ジオグラフィックが製作
 したペンギンのドキュメンタリー作品を観て、インスパイヤーを受けた。

○その関係から、ここでハッキリ言っておきたいのは、我々は「Happy Feet」を、
 他の某ペンギンCG映画(=「SURF'S UP」)よりもぜんぜん前から
 既にスタートしていた、という事だ。(場内から笑いが漏れる)

○アイデア自体はかなり昔から練っていたが、「ロード・オブ・ザ・リング」で
 ゴラムに使用されたモーション・キャプチャー技術の紹介を見た時、
 「これでペンギンにタップ・ダンスをさせる事が実現出来る」と確信した。

○しかし、私が作りたいのはリアルな人間ではなく、かわいく踊る、リアル
 なペンギンだった。そこが今回のチャレンジとなった。

○2005年に大ヒットした皇帝ペンギンのドキュメンタリー映画
 「March of the Penguins」からは、学ぶ事が多く、製作上かなりの助けとなった。

○今回の作品には、とにかく膨大な数のCGペンギンが登場する。しかし、その中
 でも、主人公のマンブルは観客に一目で分るようにしたかった。その為、
 キャラクターのデザインやデベロップには神経を配り、時間を掛けた。

○余談だが、みなさんはペンギンの色がなぜ白と黒なのかを知っているだろうか?
 それはペンギンが海中を泳ぐ時、上空から見ると海面と保護色になり、
 海中から見ると空の明るい色と保護色になり、それが敵から身を守る
 事になるのだそうだ。自然の力は偉大だ。

○この作品は、世界20ケ国で吹き替えられ、上映される予定だ。
 米国のオリジナル版では、コミカルな脇役の小型ペンギン達の声を、
 俳優ロビン・ウィリアムスがラテン系のアクセントで面白おかしく演じているが、
 それが他の文化の言葉になった時、どのように変わるのか楽しみだ。

フルCG映画「Happy Feet」は、日本でも2007年4月から劇場公開される予定。是非、ご家族で映画館に足を運んで頂きたい作品である。
 

 


 


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(C)1998-2009 All rights reserved  鍋 潤太郎

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6月24日から26日迄の週末を利用しての3日間、VES(Visual Effects Society / 全米視覚効果協会)主催の特撮フェスティバルが、サンタモニカの映画館を会場に開催された。会場にはハリウッドで活躍する業界関係者や、パネラーとして招待されたゲスト、地元の学生達が集まり大盛況であった。その模様を現地からのレポートでお届けする。


○VESとは何か

 VESは「Visual Effects Society」の略。全米監督協会、脚本家協会、俳優協会等と並ぶ、ハリウッドの数ある映画ギルドの1つである。

 日本語で言うと「全米視覚効果協会」という事になろうか。

 VESは、ハリウッドを中心とする映画&テレビ等の映像業界におけるビジュアル・エフェクツ(VFX)、つまり視覚効果産業に従事するプロフェッショナル達で構成される、「VFXのプロの、プロによる、プロの為の協会」である。

 協会の設立は97年。現在の会員数はアメリカだけで900人余り、海外のメンバーも含めると1100人以上という規模を誇る。メンバーは年々増え続けており、世界最大規模のエフェクト業界のギルドである。

 会員になるには、最低5年間の現場経験を有する事が条件とされている。しかも入会の際には現役会員2名の推薦&署名が必要とされ、最終的には年2回だけ行われる理事会の承認が得られないと正式には入会出来ない。それ故に、会員はハリウッド&アメリカのショウビズ界において活躍しているプロばかりで構成されている。

 

○Festival of Visual Effectsとは

 このフェスティバルは、VESの主催により毎年開催されており、昨年はサンフランシスコで開催された。

 会期中の3日間、特撮づくしのこのフェスティバルは、メーキング講演あり、パネル・ディスカッションあり、試写会あり、で盛りだくさん。

 もちろん、デジタル・エフェクツに主眼が置かれているのでCGメーキングが堪能できる他、それ以外にもミニチュアやパペット、そしてゲームのエフェクト分野も含め、幅広い視野で「特撮」全体が網羅されているのが特徴である。

[会場ロビーに展示してあった Xファイターのミニチュア]
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その為、ある意味シーグラフのコースやパネルよりも、ディープでコアな内容が楽しめる事もあり、このフェスティバルを毎年楽しみにしている業界関係者も少なくない。

 また、週末を利用して開催されるので、忙しい現場のスタッフ達も参加し易いという利点がある。
 
 3日間で全15項目のプログラムが行われたが、プログラムのチケット代は各20-30ドル程度と比較的リーズナブルで、3日間の全共通券は300ドル。

 ちなみに、このチケットは会員だけでなく一般人も買う事が出来るので、学生の方や特撮&SFファンには嬉しい話である。

 では、今年のフェスティバルの模様を、「さっくり」とかいつまんでご紹介しよう。

 

第1日目 6/24(金)


○映画「Madagascar」 PDI/DREAMWORKS

  Shannon Jeffries - Art Director
  Scott Singer - Head of Effects
  Rex Grignon - Head of Character Animation

 概要:フルCG映画という事もあり、キャラクター・アニメーションに
    焦点をあてたプレゼンテーションであった。

[画像:メーキング講演の1コマから (C)PDI/Dreamworks ]eabd691a.JPG 

















この作品では、従来のCGアニメーション作品よりもリグに柔軟性を持たせ、CGモデルがアニメーションにあわせて大きく変形したり出来るようになったのが特徴です。

 この映像は、キャラクター・アニメーションの初期のテストです。声優の声に合わせて動きをつけたものですが、キャラクターの動きの自由度がかなり増しているのが、おわかり頂ける事でしょう。

 例えば、ライオンのアレックスがバク転をするシーンでは、こうしてコマ送りにするとわかりますが、顔をかなり大袈裟に変形させているのです。

 なぜなら、そのままの顔のままバク転をさせると、体全体の回転がスムースに見えないのです。

 アレックスがカンフー・チョップのマネをするシーンも、チョップはわずか1コマか2コマでアニメートされています。

 しかし、肘関節をわずかに先行させて動かす等、伝統的なアニメーションのテクニックを効果的に使う事によって、スムースな動きを実現させているのです。

 このシーンをアニメートしたのは、もともと伝統的なセル・アニメ出身のアニメーターでした。

 カバのグロリアが木箱を蹴破って、アレックスを吹っ飛ばすシーンがあります。このシーンは本当にあっという間で、数コマしかないのですが、ちょっとコマ送りして見てみましょう…こんな複雑な変形をさせているんですよ(笑)

 後日、DVDが発売されたら、是非コマ送りをして研究してみてください。

 シマウマのマーティで使用したボーンの元ネタは、実は「シュレック」のドンキーを発展させたもので、動きにもかなりの自由度を持たせています。

 キャラクター関連以外のチャレンジといえば、映画後半の舞台であるジャングルですね。14,000本の木、膨大な数の植物などが登場します。

 しかし、思い起こせば、この作品で一番大変だったのは、CGの技術的なチャレンジよりも、とにかく膨大なデータのマニュピュレーションだったかもしれませんね(笑)

 

○映画「Bewitched」- Sony Pictures Imageworks

  Scott Palleiko - Sr.Technical Director
  Christian Boudman - Sr.Frame Artist

 概要:ニコール・キッドマン主演の映画「奥様は魔女」のメーキング講演

  この映画におけるVFXは115ショットで、グリーン・スクリーン合成のシンプルなものから、モーション・コントロール・カメラ(以降MCカメラ)が絡んだ複雑なものまで、様々でした。

 プリビズから完成まで5~6ケ月という、比較的短いプロダクション・スケジュールでしたが、監督がストーリー・テラーで、キャラクター・オリエンテッド志向な方だったので、比較的に作業は進め易かったと言えます。

 まず、映画冒頭で、ニコール・キッドマンが家に「RENT(賃貸中)」の看板を取り付けるシーン。

 実景にいきなり、キッドマンの手が"にょっ"と出て「RENT」の看板を取りつけ、そして指でつまんで位置を調子するという、ユニークで漫画的なシーンです。

 ここは、手と看板だけをグリーン・スクリーンで別撮りし、合成しています。

 また、コメディ俳優ウィル・ファレルが部屋の中で歩き回っているうち、鏡を見ると自分の姿ではなく亡き叔父が映っていて仰天するという、コミカルなシーンがあります。

 この撮影現場では、この鏡は実は着脱可能になっていて、奥にはグリーン・スクリーンがあります。最初は普通の鏡の前で演技をして、途中でスタッフが内側から鏡を取りはずし、その奥にあるグリーン・スクリーンを見せる事によって、後から別撮りの叔父(俳優スティーブ・キャレル)をグリーン部分に合成しているのです。

 映画後半に登場する、キッドマンがほうきに乗って飛ぶシーンは、モーション・コントロールカメラ(以降MCカメラ)が駆使された、かなり複雑なものでした。

 実写のクリーン・プレート(合成前の素材)は、Spidercamという2つのポールの間に張られたワイヤーで吊られたMCカメラで撮影されました。よくスポーツでの撮影で使用されるものと同じタイプのMCカメラです。

 この撮影には、3日間を要しました。

 続いて、ほうきに乗って空飛ぶキッドマンですが、これはスタジオでのMCカメラ撮影です。コンピューター制御で回転する軸にほうきを固定し、それに乗ったニコール・キッドマンの前には直線のレールが敷いてあります。

 そのレールの上をMCカメラが右から左へ時速40KMで通り過ぎるのです。

 キッドマンの前を通り過ぎる瞬間にカメラはパンし、通り過ぎた後もそのままキッドマンを狙います。カメラがパンした瞬間、キッドマンの乗ったほうきもカメラとシンクロして回転するようにプログラムされています。

 なんだか不思議な撮影方式ですが、このフィルムを再生すると、キッドマンがほうきに乗って左方から画面に飛び込み、俳優ウィル・ファレルの後ろをかすめ、右へ抜けて飛び去っていく、という映像に仕上がるのです。

 このMCカメラの撮影には、プリビズで念入りに準備を重ね、合成はFRAMEで行いました。MCカメラのプログラムから、完成までに2ケ月を費やしました。 

 最後に、映画のラストシーンの説明をしましょう。

 ウィル・ファレルがニコール・キッドマンを抱きかかえて家に入っていくシーンですが、後からトコトコついていく黒猫は、実は別撮影で合成されたものです。

 動物プロダクションとの契約の関係で、ロケに連れて行く事が出来ず、スタジオでドーリーに乗ったMCカメラで別撮りして合成しています。

 家の前の生垣に生えてくる花は、MAYAでモデリングし、部分的にHOUDINIのL/SYETEMも使用しています。(場内からの質問に対して)え?ペイントエフェクトですか?いえ、殆ど使用していません。
 
 というのは、ペイントエフェクトにはいろいろ制約があるので、ペイントエフェクトで作った花をポリゴンに変換して使ってはいますが、ほんのわずかな部分だけです。殆どは、MAYAでモデリングされたものを使用しました。

 また、植え込みにはFRAMEの2Dペイントで描いた草に、Shape機能で立体感をつけて合成してあります。

 

○人気サスペンスTVドラマ「CSI」シリーズにおけるCG - ZOIC Studio

  Max Ivins - VFX Supervisor      "CSI: Miami" and "CSI:New York"
  Andrew Ofloff - VFX Supervisor   "CSI" and "CSI:New York"
  Larry Detwiler - VFX Supervisor  "CSI: Miami"

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概要:中堅エフェクト・ハウスが語る、テレビ・シリーズにおけるVFX

 ZOIC Studioは、テレビ番組やCMのCGを手掛けているエフェクト・ハウスです。

  アメリカの人気連続ドラマ「CSI」の中で登場する数々のエフェクト・ショットを製作しましたが、今回はその中でも特徴のあるショットのメーキングをご紹介します。

 今お見せしているガラスを弾丸が突き破るショットは、MAYAとLightWave3Dの組み合わせです。

 ガラスは実写のモーション・コントロール撮影、突き破る弾丸がCG、弾の軌跡はパーティクルで表現しています。

  スローモーション用のハイスピード撮影は、Itronix[http://www.itronx.com/]で行いました。これは秒60コマから秒10,000コマまでのハイスピード撮影が可能なのです。
 
 津波のシーンが出てくるエピソードがありましたが、この時の監督の要求は「ザ・デイ・アフター・トゥモローの津波みたいにして欲しい」というものでした。

 パーティクルによる調整が難しい箇所は、CGと本物の水を組み合わせて合成しました。灯台が津波に飲み込まれるシーンでは、ミニチュアのポールに水流を激突させ、その模様を撮影したものを合成したりしています。

 だいたい1エピソードにつき、20-40shotのエフェクトが含まれています。

  納期はショットによって違いますが、数週間から1ケ月位。基本的にテレビシリーズの仕事は納期が短いですね。

 スタッフは必要に応じて増減させ、50~150人位の規模で作業を行います。

 「NTレボリューション」以降、PCもCGソフトも安価になり、ひと昔前のアビットの高価なシステムや、ハーフ・ミリオン(約5000万円)もしたディスクリートと同レベルの事が手軽に実現出来るようになりました。

 プロダクションの設備投資が軽減されるようになり、我々のような中規模のエフェクト・ハウスには嬉しい事です。

 


 


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