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映像ジャーナリスト 鍋 潤太郎の随筆による、ハリウッドVFX情報をいち早くお届けします。

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筆者は映画情報紙「バラエティ」(Variety)に目を通す事がほぼ日課となっている。今日も、オフィスでランチを食べながらパラパラと紙面をめくっていると、広告欄のページを開いた瞬間、とんでもないモノが目に飛び込んできた。

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…なぬ?ファウンデーション?競売?

「あの」ファウンデーション・イメージング社だろうか?

まさか、と思って念の為に調べてみたところ、同社のWEBは既に閉鎖されており、電話も繋がらない。オークション会社のサイトを調べてみたら、競売品のリストが出てきた。

VICONのモーション・キャプチャーシステム、コンピューター、モニター、ビデオ機材、編集機、オフィス家具、コピーマシン、そしてキッチンに至るまで、ありとあらゆる資材がすべて競売リストに掲載されている。

どうやら間違いはなさそうだ。

オークション会社の担当者は、筆者の取材に対して「ファウンデーション・イメージング社は閉鎖されました。現地で12月17日(火)の朝10:30より競売を行います。是非来てくださいね」という驚くべき回答を、淡々とした口調で語った。

ファウンデーション・イメージング社はハリウッドのCGプロダクションとしては中核&中堅のスタジオであり、初期の頃からLightWave3Dのパワー・ユーザーとしてあまりにも有名な存在であった。

1992年にRon ThorntonとPaul Bryantによって設立され、アメリカのテレビ番組「バビロン5」で当時としては驚異的な質・量のCG映像を各エピソード毎に登場させ、CG関係者を驚嘆させた。

その後も、映画「コンタクト」やテレビのスタートレック・シリーズ(Star Trek: Voyager, Star Trek: Deep Space 9)等のエフェクトやCGを手がけ、高い評価を得た。

また同社は、自社内のモーション・キャプチャー・スタジオを駆使し、なんと全編フルCGのテレビ番組「スターシップ・トゥルーパーズ・クロニクル(The Starship Troopers Chronicles) 」全40話を製作、これまた世界中のCG関係者のド肝を抜き、ハリウッドのショウビズ界に殴り込みを掛けた。

昨年ロサンゼルスで開催された、ビジュアル・エフェクツ協会主催のVES2001でも、同社が製作した完成度の高いフルコメディCG作品(やはりMCがふんだんに使用されていた)の連作が上映され、会場を爆笑の坩堝に陥れていたのは、まだ筆者の記憶には新しい。

そんな一世を風靡したファウンデーション・イメージング社が、人知れずひっそりと姿を消し、その全資材が来週、競売に掛けられるという。時代を駆け抜けた同社の最期としては、あまりにもはかない。

「ひとつの時代」が終わったという事を、痛感せずにはいられない出来事である。


 
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(C)1997-2009 All rights reserved  鍋 潤太郎

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ロサンゼルスでは、ACM SIGGRAPHの地方分化会である、"LA SIGGRAPH"の月例ミーティングが毎月第3火曜日の夜に開催されている。

場所とテーマはその時によって異なり、新しいスタジオのお披露目だったり、新作映画のメーキングだったり、新しいテクノロジーの紹介だったりする。

会員になれば、月例ミーティングの参加費は無料(但し年会費は25ドル)、一般の人でも10ドルを支払えば誰でも参加する事が出来る。

少し前の話になるが、5月の月例ミーティングでは、PDI/DreamWorks製作の新作フルCG映画「Shrek」のメーキング講演と、全米公開よりも数日早い(当時)、特別試写会が行われた。

間もなく日本でも「Shrek」が公開される。その公開時期に合わせて、その時のレポートを、読者の皆さんにお届する事にしよう。


〇PDIについて

1980年に創立されたPDI(Pacific Data Images)は、数ある米国のCGプロダクションの中でパイオニア的な存在である。

同社は1996年にDreamWorks SKG と提携し、劇場用のフルCG長編映画を製作していく事で合意。研ナオコ似のアリのキャラクターが日本で大評判(ほんまかいな)だった最初のフルCG長編作品「Antz」は世界中で$180million(216億円)を稼ぐ大ヒットとなったのは記憶に新しい。


〇2本目のフルCG映画「Shrek」

そのフルCG映画の第2弾「Shrek」が今年5月に全米で公開された。

William Steig原作の童話本をベースにした、コメディ作品である。前作の「Antz」と比較しても、かなり娯楽カラーの強い、楽しい仕上がりになっている。

これは、声優陣の顔ぶれを見ても明らかで、「オーティン・パワーズ」のマイク・マイヤーズ、人気女優のキャメロン・ディアス、コメディ俳優として有名なジョン・リスゴーという豪華な面々が出演している、鳴り物入りの作品である。

が、この映画、メチャクチャ面白く、映画を観る前にトイレに行っておかないと、笑いすぎて漏らしてしまうのでは、と思える程、大爆笑の連続であった。もぅ最高のコメディ映画に仕上がっているのである。

必然的にアメリカでは大ヒット。製作費$60million(約73億円)に対して、興業収入はなんと$266million(324億円)。文句無しの大成功であった。


〇メーキング講演

この日は、まずメーキングの講演が行われ、その後、全米公開に先駆けてLA SIGGRAPH参加者の為に、特別試写会が開催された。

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※講演のパネラーの顔ぶれ

Luca Prasso - Co-Character Technical Director Supervisor, Shrek
PDI/DreamWorks

Jonathan Gibbs - Lead Effects Animator, Shrek
PDI/DreamWorks
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この作品には、総勢275人のスタッフが参加。最先端のテクノロジーを駆使し、美しい映像を作り上げた。ツールの多くは自社開発のオリジナルで、レンダラもオリジナル。アニメーションには、Mayaも使用しているそうである。

この作品のCGの狙いは「フォト・リアリスティック」な中にも、どちらかと言えば「おとぎ話の世界を美しく見せる」事にある。

おとぎ話という特徴上、美しい自然の風景が沢山登場する。この裏側には、テクスチャ・アーティストの大活躍があった。木は1つ1つモデリングされており、28,186本の木と30億枚の葉がCGで製作された。

今回、舞台がおとぎの国という設定で、それに合わせたおとぎ話のキャラクター達が沢山登場する。ドラゴン、騎士等の主要キャラクター68種類がモデリングされた他、クマ、オオカミ、そして何故かシンデレラ、白雪姫、7匹の小人等、助演級の31種類のキャラクターが「これでもか」と登場する。

最終的にモデリングされたキャラクター数は総勢250人(匹)にも及ぶという。

この作品ではCGで表現する事が難しい、皮膚、毛皮、炎、液体等の全てのジャンルにチャレンジしている。

特に、キャラクターの皮膚の表現や動き、Fiona姫のドレスの布の表現等には、細心の注意が払われ製作が行われた。それぞれに専門の担当者がつき、自社開発ツールを駆使した。髪の毛の表現は、技術的な部分よりも、数が物量的に多い事の方が大変だった、との事である。

また、独自のパーティクル・システムによる液体や泥の表現や、ボリュームレンダリングによるエフェクト効果等も駆使されている。

レンダリングには、SGIやLinaxベースのNTマシンが投入されたが、最も時間がかかったシーンは、ボリューム・レンダリングによるショットで、1コマ約40時間も掛かっているそうである。

キャラクターアニメーションは、特に主役級のロバ、Fiona姫、Shrekの動きと表情が見事だった。日本とアメリカの作品での文化的な違いに、表情の表現がある。アメリカでは、よくゼスチャーや顔の表情で、状況表現を演出する事が多いが、この作品ではそれが非常に良く出来ていた。

Shrekの表情は豊かで柔らかく、彼が表情だけで芝居するシーンでも場内は大爆笑になっていた。

また、ロバのコミカルな動きや、Fiona姫のしなやかな動きは素晴らしかった。

この作品のキャラクター・アニメーションはすべて手付けで、モーション・キャプチャは使用していないそうである。(この解説が出た瞬間、場内から拍手が沸き起こっていた)

PDI/DreamWorksでは、もう既に次回作「Tusker」がプロダクションに入っている。フルCG映画を製作するプロダクションとしては、Pixarと並んで今後が期待される存在である事は間違いない。


 
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