忍者ブログ
映像ジャーナリスト 鍋 潤太郎の随筆による、ハリウッドVFX情報をいち早くお届けします。

<絶賛発売中>ハリウッドCG業界就職の手引きcghollywood.jpg   海外をめざす方の必読本!



 
 



人気ブログランキングへ

 


カナダ / トロントを代表するVFXスタジオC.O.R.E. Digital Picturesが閉鎖

カナダ / トロントを代表するVFXスタジオC.O.R.E. Digital Picturesが、3月15日(月)をもって、その門を永遠に閉じた。

このニュースは、米複数メディアが伝えた他、関係者から配信された電子メールによって、すぐさま情報がハリウッドに伝わった。

VFXスタジオが閉鎖になる際、どの会社でも同じ光景が見られるが、C.O.R.E.も例外ではなかったようだ。同日午後3時ごろ、全クルーが集められ、経営陣から「悪い知らせがある」という前置きの後、会社の閉鎖がアナウンスされた。

このニュースは、何の前触れもなく突然発表され、クルー達は大きなショックに包まれたという。

C.O.R.E. Digital Pictures(以降COREと表記)は、1994年に俳優ウィリアム・シャウトナー(「スタートレック」オリジナル・シリーズのカーク船長役として世界的に有名)とボブ・マンロー、ジョン・マリエラ、カイル・メンズィスらによってカナダのオンタリオ州、トロントに設立されたスタジオで、16年もの歴史を持つ老舗だ。閉鎖時には150人のクルーが勤務していた。

これまで40本近い映画のVFXを手掛け「X-Men 」「Nutty Professor II」「S1M0NE 」「Silent Hill 」等の話題作を手掛けてきた。

近年はコンピューター・アニメーションの分野にも力を注いでいた。

特に2006年に全米公開された「The Wild(邦題:ライアンを探せ)」はディズニーの出資で制作&配給されたフルCG長編アニメーション映画で、ピーク時にはフリーランサーも含め400人ものクルーが勤務していた。

この作品は批評も興行成績も期待を下回ったが、全編がHoudiniを駆使して制作されるという意欲的な作品だった。

Houdiniを開発&販売するSide Effectsが同じトロントのお膝元という事もあり、Side Effectsの全面的な技術バックアップを得て、キャラクター・アニメーションのリグまでもがすべてHoudini上で構築され、(レンダリング以外は)すべてHoudiniプロジェクトという、ハリウッドのフルCGアニメーション映画では例を見ない制作パイプラインが業界の注目を浴びた。[最終レンダリングはレンダーマンだったという]

ちなみに、この「The Wild」は、カナダで制作されたアニメーション映画としては、最も大規模なプロジェクトだったそうだ。

COREは近年、C.O.R.E. Visual Effects、 C.O.R.E. Toons、 C.O.R.E. Film ProductionsそしてC.O.R.E. Feature Animationという4部門を持つスタジオに成長していたが、非常に残念な事に今回の閉鎖を迎えるに至った。

これについて、米ハリウッド・リポーター紙が3月16日付けで伝えたところによれば、COREは世界不況による米ドル下落によって起こった「カナダドル高」の影響により、アメリカから受注していたTV番組プロジェクトの利益が圧迫されていた事、そしてカナダのオンタリオ州政府からの貸付け補助金を獲得する事に失敗、それらの影響が今回の閉鎖に繋がったとしている。

ハリウッドの大手VFXスタジオにもCORE出身者を始め、同スタジオとゆかりのある人も多く、今回のトロントを代表するVFXスタジオの突然の閉鎖を惜しむ声は多い。

追記:
Houdiniを開発・販売しているサイド・エフェクツは、パワーユーザーだったCOREの閉鎖を惜しみ、このような記事を同社ホームページに掲載している。COREが設立された1995年当時の貴重な新聞記事も掲載されているので、興味のある方は閲覧されてみると良いだろう。


 

   過去記事はこちらからどうぞ 全目次
 



このサイトに含まれる記事は、日本のメディア向けに
書かれたものを再編し、ご紹介しています。

著者に無断での転載、引用は固くご遠慮下さいますよう、
お願い申し上げます。

転載や引用をご希望の方は、お問い合わせページ
よりご連絡下さいませ。

(C)1997-2010 All rights reserved  鍋 潤太郎 


 

PR

<絶賛発売中>ハリウッドCG業界就職の手引きcghollywood.jpg   海外をめざす方の必読本!



 
 



人気ブログランキングへ

 


第51回グラミー賞授賞式で初めて3D映像を含んだ演出が放映される

1月31日(日)、第51回グラミー賞授賞式が米CBS系列で夜8時(米国西海岸時間)より放送された。

実際の授賞式は夕方からスタートしており、日本ではWOWOWがリアルタイムで生放送したにもかかわらず、我々アメリカ地方の視聴者は、なぜか3時間遅れで観る形になった。

遠く離れた日本が生放送なのに、授賞式が行われているステイプルズ・センターまで車でわずか30分の距離に住んでいる筆者が、3時間遅れでしか観れない!という、なんとも&かんとも不思議な現象が起こった訳だ。

アメリカは不思議な国である(あ・ほ・か)。

…さて、それはまぁさておき、読者のみなさんも既にご存知のように、この日の授賞式ではハイライトとして、マイケル・ジャクソンの「3Dトリビュート」が行われた。

ここでは、セリーヌ・ディオン、アッシャー、ジェニファー・ハドソン、キャリー・アンダーウッド、スモーキー・ロビンソンらがトリビュート・パフォーマンスとしてマイケル・ジャクソンの「アース・ソング」を歌う模様が立体映像を絡めて放送された。

元々ロンドンで予定されていた復帰コンサート「This Is It」の為に制作されたオリジナル3D映像の1部を、ステージ後方のLED(発光ダイオード)スクリーンに映し出し、その前で歌手がパフォーマンスを行うというもの。

しかも、歌手のパフォーマンスに対してもテレビカメラによる3D撮影が一部で採用されていた。これも斬新な試みと言えるだおう。

これらのハイライトは、米アワード関連番組史上初めて、立体映像を絡めた演出による放送だった。

立体映像の部分は、旧来のアナグリフ方式によるもので、視聴者は各家庭で赤青メガネを掛けて鑑賞するスタイル。

番組の公式スポンサーでもある米大手スーパーマーケットTARGETでは、「This Is It」のロゴが入った"番組専用"赤青メガネを、店頭で無料で配布した(写真)。

a8ca553c.jpg






















グラミー賞終了後、CBSニュースの報道によれば、ロンドンで予定されていた「This Is It」コンサート用のオリジナル3D映像は、イベントやコンサート映像等を専門に手掛けるStimulated, Inc(カリフォルニア州バーバンク)のプロデュースによるものだという。

このプロジェクトはマイケル・ジャクソンやクルーの間では「The Dome Project 」と呼ばれ、90フィートX30フィート(27.4mX9.1m)のLEDスクリーンに立体映像を映し出す計画だった。

観客が3Dメガネを掛けると、LEDスクリーンの映像は立体化し、ステージ上のパフォーマンスと融合、独特の臨場感が生まれるという、「コンサート史上始めて」の試みになる予定だった。

備考:
立体映像を併用したパフォーミング・アーツ自体は90年代から存在しており、ラスベガスで開始されたSIGGRAPH1991でも、サンフランシスコを拠点とし、今も活動する劇団George Coates Performance Worksが、シリコングラフィックスIris4D/210を使用した立体映像と、ステージ上の役者を融合させたパフォーミング・アーツを上演した例がある。

また、米バラエティ紙が昨年11月24日号で伝えた情報によれば、ロンドンでのコンサートで使用される予定だったLEDスクリーンは、Kerner Technologiesが開発した3Dディスプレイ「Kernervision」を使用しており、RealD方式(円偏向)の立体メネを使用して立体視を行う予定だったという。LEDスクリーンが採用された大きな理由は、「コンサート会場においても充分な明るさが得られた」点にあるという。

さて、グラミー賞でのトリビュート・ステージでも、前述のStimulated, Incのプロデュースにより、ステージにLEDスクリーンが設置された。ここではRealDではなく、アナグリフ方式による映像が映し出された。

今回、グラミー賞で旧来のアナグリフ方式が採用されたのは、特別なシステムを必要とせず、どこの家庭でも赤青メガネさえあれば手軽に立体視が可能である事。しかもメガネが赤青セロファンと紙製なので量産コストも安く、大量配布に適しているという、極めて自然な理由からだった。

WOWOWで放映された映像は全く同じなので、赤青メガネさえあれば、立体映像で楽しむ事が出来る。赤青メガネはアマゾン他で安価で販売されているので、日本国内でも簡単に手に入れる事が出来る。番組を録画された方は、是非とも試してみると良いだろう。

マイケル・ジャクソンが亡くなり、ロンドンのO2アリーナで「立体コンサート」が楽しめる機会は永遠に失われてしまったが、このテクノロジーは何らかの形で受け継がれ、そして更に発展し、近い将来、パフォーミング・アーツの中で実際に登場する日もそう遠くはないだろう。

改めて、偉大なるアーティスト、マイケル・ジャクソンに合掌。


関連記事:

マイケル・ジャクソンが好きだったインド料理レストラン&「キャプテンEO」復活(11/17/2009)


 

   過去記事はこちらからどうぞ 全目次
 



このサイトに含まれる記事は、日本のメディア向けに
書かれたものを再編し、ご紹介しています。

著者に無断での転載、引用は固くご遠慮下さいますよう、
お願い申し上げます。

転載や引用をご希望の方は、お問い合わせページ
よりご連絡下さいませ。

(C)1997-2010 All rights reserved  鍋 潤太郎 


 

鍋潤太郎の著書
サイト内検索
カテゴリー

Copyright © [ 鍋 潤太郎☆ハリウッド映像トピックス ] All rights reserved.
Special Template : 忍者ブログ de テンプレート and ブログアクセスアップ
Special Thanks : 忍者ブログ
Commercial message : [PR]