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映像ジャーナリスト 鍋 潤太郎の随筆による、ハリウッドVFX情報をいち早くお届けします。

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秋も深まったアメリカ地方は、序所にホリデー・シーズンへと差し掛かりつつある。
これから、感謝祭&クリスマスと、子供達にとっては楽しい季節への幕開けである。
親達にとっては、出費が続いて大変な季節の幕開けである(笑)

さて、映画業界もこれから各種映画賞や、各ギルドの賞レースに向けて序所に盛り
上がりをみせてくる時期でもある。

そんな中、アメリカでは今月10日から、日本では27日から公開となる、フルCG映画
「ポーラー・エキスプレス」の業界向け先行試写会がハリウッドにて開催された。

また、上映後にはCG製作を担当したソニー・ピクチャーズ・イメージワークスの
シニア・ビジュアル・エフェクツ・スーパーバイザーのジェローム・チェン氏に
よる製作舞台裏のプレゼンテーションも行われた。

では、その模様を「さっくり」とお届けする事にしよう。

 

○完成度の高い「ポーラー・エキスプレス」

絵本作家クリス・ヴァン・オールズバーグが描いた絵本「ポーラー・エキスプレス
(日本題:北極号)」をフルCGで描いた作品で、クリスマスの夜、サンタさんを
待つ男のコの目前に、突然、蒸気機関車が現れる。

車掌さんに招かれ列車に乗り込んてみたら、その列車は北極行きだった。
そして、トンネルを抜けると、そこは雪国だった…というのは冗談だが、
そんなファンタージー溢れる作品なのである。

監督は、あまりにも有名なロバート・ゼメキス。「バック・トゥ・ザ・フューチャー」
シリーズが出世作だが、トム・ハンクスとコンビを組んだ「フォレスト・ガンプ」等
も有名だ。そのトム・ハンクスは声の出演で参加。1人5役を担当している他、製作
総指揮も兼任している。

今年のシーグラフのエレクトリック・シアターにおいて、未露出の同映像を大胆に
も公開、その中でメーキング映像が披露されたのが記憶に新しい所だが、その映画
がとうとう公開の運びとなる訳だ。

この作品は、アメリカでは、一般劇場において、フィルム上映と、デジタル・プロジ
ェクターによるデジタル上映が行われる他、IMAXシアターにおいて、なんと!!
全編が立体の、メガネを掛けると飛び出してくるという、ステレオ・スコープによる
公開も行われるというから驚きである。

製作を担当したソニー・ピクチャーズ・イメージワークスでは、一般劇場用の2D版
とIMAXシアター用の3D版の2チーム体制で作業が行われ、レンダリングも全く
別々に行われた。

通常、IMAXでのデジタル映像は4K(4096x3072)で処理される事が多いが、
レンダリングは2Kで行われ、フィルム収録前に4Kにブローアップされ、
サンタモニカにあるIMAX施設にて膨大な量のフィルム・レコーディングが
行われた。

筆者は、わずか数日前にピクサーの「ザ・インクレデブル」の試写を観たばかりだが、
この「ポーラー・エキスプレス」にもかなり驚かされた。

演出面の素晴らしさはもちろんだが、CGの物量的なすごさ、クオリティの高さ、
そしてプロダクション・デザインやライティングの美しさ、どれもピカイチで素晴
らしい完成度。

来年のアカデミー賞の、長編アニメーション部門では、大作ばかりがそろって
審査はかなり難航するだろう(笑)


さて、それでは、試写の後に行われた、ジェローム・チェン氏による
プレゼンテーションの模様もご紹介しておこう。


○ジェローム・チェン氏 /
   ソニー・ピクチャーズ・イメージワークス
   シニア・ビジュアル・エフェクツ・スーパーバイザー


  この作品は、社内では「ハイブリッドVFX」と呼ばれる、全く新しいスタイルの
 デジタル映画製作が行われ、画期的なものでした。

 ピクサーやドリーム・ワークス、そしてディズニーが製作しているフルCG映画
 は殆どがキーフレーム・アニメーションによるCGです。

 しかし、今回我々が行ったのは、パフォーマンス・キャプチャによる方法でした。
 パフォーマンスとは演技の事です。その意味では、モーション・キャプチャと
 同じです。

 もともと、モーション・キャプチャのテクノロジーというのは、医療現場で
 の脳手術の為に開発された技術です。それが、エンターテインメントにも応用
 され、我々はその恩恵を受けている事になります。

 映画での応用例では、最近では「ロード・オブ・ザ・リング」のゴラムの
 演技などがあります。

 さて、今回の「ポーラー……」では、ロバート・ゼメキス監督はトム・ハンクス
 の演技をそのまま使う事を希望していました。

 10x10フィートのパフォーマンス・キャプチャー・ステージで、トム・ハンクスの
 実際の演技をキャプチャーしたのです。

 顔に152個、ボディには40個のマーカーをつけて、その演技をキャプチャーしました。

 (ここで、CGの専門家以外向けに、「モーション・キャプチャ」がどういうものか、
  という説明が延々と続く。ここは「さっくり」と略)

 そのキャプチャー・データを基に、カメラ・アングルを決め、カメラ・ワークをつけ、
 コスチュームがデザインされ、CGモデルが構築され、ライティングをして質感をつけ、
 エフェクトを加え、最終的な映像が完成するのです。
 そのプロセスは、非常に複雑なものでした。

 この製作には、2年半もの歳月を費やしています。製作予算ですか?正確な数字は
 今わかりませんが、$150millionだと聞いています。

 製作はすべてデジタルで行われましたが、映画館での上映もデジタル上映と、
 フィルム上映の2種類で公開される予定です。フィルム・レコーディングは、
 ハリウッドのテクニカラーで行われ、そこから上映用のリリース・プリントが
 起こされました。

 IMAXシアターでは、立体メガネを掛けて鑑賞する、立体版が公開される事になって
 いますので、是非、お近くのIMAXシアターで立体版をご覧頂きたいと思います。

 このステレオ版は、2D版とは全く違った体験が出来ます。あなたの目の前を、
 ポーラー・エキスプレスのチケットが飛び回ったりするのです。IMAXの立体上映
 は、確か全米200館くらいで行われると聞いています。


 今、話題に出た「チケットが飛び回る」シーンについて、ちょっとお話しておき
 ましょう。
 
 映画中盤で、ポーラー・エキスプレスに乗る為のチケットが列車から車外へ飛び、
 空中をさまよって、また列車に戻ってくるという、3分近いシーンがありました。

 このシーンは、つい2週間前に完成したばかりで、本当に大変なショットでした。
 (ここで、拍手が起こる)この映画の中でも、1カットとしては最長のものです。

 一番大変だったのは、「列車との絡み」。動き回るカメラの前に、空中を
 舞うチケット常に存在し、しかも列車の動きと連動しなければならなかったので、
 かなり苦労しました。

 また、思い出深いシーンとしては、列車の中で、子供達にホット・チョコレート
 が振舞われるシーンです。

 8人の給仕が踊りながら乱入してきて、子供達にホット・チョコレートを振舞う
 のですが、すげぇ~大変でした。

 このパフォーマンス・キャプチャーの為に4人のダンサーをキャプチャー・ステージ
 に呼びました。映画の中で給仕は8人いるので、4人のダンサーに2回同じ踊りを
 してもらい、8人分の動きに仕上げた訳です。

 今は、ようやくこの鬼のような映画の仕事を終えて、ホッと胸を撫でおろしている
 ところです。

 次のプロジェクトですか?

 その事を考える前に、しばらくバケーションが欲しいですね。本当に疲れました
 から(笑)一休みして、またそれから次の仕事の事を考えたいですね。

 今日は、みなさん、どうもありがとうございました!


…と、このようなプレゼンテーションであった。

「ポーラー・エキスプレス」は日本でも、11月27日から公開される。ちなみに、
この日は筆者の誕生日でもある(あほか)。

日本のIMAXシアターで立体版の上映が行われるのか、現時点では不祥ではあるが、
おそらく品川プリンスのIMAXシアター等では上映されるのではないか?と勝手に
推測している。詳細はWEB等をチェックされたし!

筆者は、ロサンゼルスの空港近くのIMAXシアターで、立体版を鑑賞するのが
今から大変楽しみである。これだから、やめられん♪

おわり。

 


 


このサイトに含まれる記事は、日本のメディア向けに
書かれたものを再編し、ご紹介しています。

著者に無断での転載、引用は固くご遠慮下さいますよう、
お願い申し上げます。

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よりご連絡下さいませ。

(C)1998-2009 All rights reserved  鍋 潤太郎

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「The Martix」の2作目と3作目のVFX等で知られる著名な
エフェクト・ハウス、ESC Entertainment(アラメダ、サンフランシコ)が、
アメリカ独立記念日の連休直前である7月2日(金)、
159人規模のレイオフを実施した。

レイオフされたのはアニメーター、カラー&ライトTD、アニメーター、
コンポジター等を含む159人で、これは一時期250人のスタッフを有していた
同社社員の6割以上に相当する。

ハリウッドのCG業界関係者の間では、5月頃から「近いうちにESCは倒産
するらしい」という噂が広く流れていたが、これはレイオフ実施の2ケ月前に
同社が州法に準じ、州に対してレイオフの事前申告をオフィシャルに行った為
と見られている。

同社は7月23日より全米公開になる映画「Catwoman」のエフェクト製作を
鋭意進行してきたが、次に予定されている映画「Superman」(2006年公開予定)
の受注が予定よりずれこむ見通しとなった為、「Catwoman」の作業終了と
同時にやむをえずレイオフに踏み切る事になったようだ。

幸い今回の場合は、プロジェクトの間が空いた為の一時的な解雇と見られ、
同社の次なるプロジェクトが入り経済的状況が復活次第、
レイオフされたスタッフ達は順次呼び戻されると推測されている。

前述の「Superman」はワーナーの製作で2006年に公開が予定されているが、
つい先週、McG 監督 (「チャーリーズ・エンジェルズ1、2」)が
降板。今週に入ってBryan Singer(「Xmen2」、「Xmen3」[予定])
が、ストーリー開発と監督を務める契約書類にサインをしたところで、
まだエフェクト作業に入る為の基盤は固っていないのが状態だ。

今回のようなレイオフは、何もESCに限った事ではなく、エフェクト・ハウス
には共通する「悩み」だ。大人数のスタッフを確保しておきながら、
プロジェクトが予定通りに入ってこなければ、母体を維持する為には
レイオフを敢行するしかない。

念のために申し上げておくが、今ハリウッドは絶好調で、
決して不景気という事はない。

しかし巨大バジェットのハリウッドと言えども、エフェクト業界はプロジェク
ト・ベースの受注産業である事に変わりがなく、改めてエフェクト・ハウス
の経営の難しさを浮き彫りにした出来事とも言える。

最近、ロサンゼルスでは5月末にSony Pictures Imageworksが
「Spider-Man2」の作業終了と同時に中規模のレイオフを行ったばかり。

 


 


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