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映像ジャーナリスト 鍋 潤太郎の随筆による、ハリウッドVFX情報をいち早くお届けします。

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著者注:2006年の記事です。

ハリウッドで13年の歴史を誇る大手エフェクト・ハウス、デジタル・ドメイン(以降DDと表記)は、ILMのトップ・シニア・エグゼクティブ3名を引き抜き、同社へ迎え入れる事を9月20日付で発表した。

今回ILMより引き抜かれるのは、

①マーク・ミラー氏
 ILMのプロダクション&マーケティング・シニア・エグゼクティブ。
 →DDの新社長として。

②クリフ・プルマー氏
 ルーカス・フィルム全体のCTO(チーフ・テクノロジー・オフィサー)。
 →DDの新CTOとして。

③キム・リブレーリ氏
 「マトリックス」3部作のVFXで有名なESCエンターテイメント(2004年に閉鎖)の設立メンバーで、「マトリックス」のバレットタイム等に代表される、テクノロジー・スーパーバイザーとして活躍。「マトリックス」終了後にILMへ参加し、 「ポセイドン」等でその手腕を発揮。
 →DDの新副社長および高度経営戦略担当者として。

の3名で、近々にデジタル・ドメインに迎えられる予定だという。

デジタル・ドメインと言えば、今年5月、フロリダを拠点とする投資グループ会社ワインドクレスト・ ホールディングスに3500万ドルで買収されたのが記憶に新しいが、5月当時は「マイケル・ベイがDDを買収」というニュースをウォール・ストリートジャーナルやハリウッド・リポーター等の著名メディアがトップで報じ、ハリウッドのエフェクト業界を驚嘆させた。

なぜなら、ワインドクレスト・ ホールディングスの出資者には、マイケル・ベイ監督が含まれており、5月のDD買収では最も影響力を持つ存在。また、元マイクロソフトのエグゼクティブだったカール・ストーク氏もその1人。

ワインドクレストの出資者に、他にもNFLのスター選手ダン・マリノ氏等の著名人も名を連ねている。

実際、5月15日月曜日にDDの全クルーを集めて行われた社内説明会では、マイケル・ベイ監督やカール・ストーク氏らが壇上に上がり、自ら熱弁を振るった。

カール・ストーク氏は、DDの前CEO、スコット・ロス氏のポジションを受け継ぎ、現在は既にCEOに就任している。

デジタル・ドメインの新経営陣は、VFXビジネスだけではなく、フルCGアニメーション作品やゲーム等の多角マーケットも意識して新戦略を練っている模様で、今回の「引き抜き」はその体制強化の一環と見られている。

ミラー、プルマー、リブレーリの3氏は、DDのエクゼクティブ・リーダーシップ・チームの一員としてDDへ迎えられる予定であり、CEOのカール・ストーク氏、デジタル・スタジオ・グループの責任者ジェフ・ストリンガー氏らと共に、CM広告ビジネスや米国内外の劇場用映画ビジネスに力を注いでいく予定である。

 

3人のプロファイル(肩書きはデジタル・ドメインへの就任後のポジション)


マーク・ミラー
 デジタル・ドメイン社長。ILMにて21年の経験をもつベテラン。1984年にルーカスフィルムに入社し「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説」のプロダクション・アシスタントとしてそのキャリアをスタート。91年のオリバー・ストーン監督の「ドアーズ」でプロデューサーに昇進。その後はILMにおいて「ジュラシック・パーク」「ハルク」「ハリーポッター」シリーズ等、アカデミー賞の視覚効果賞にノミネートされた数々の作品を手掛けている。


クリフ・プルマー
 デジタル・ドメインCTO。プルマー氏は1984年よりカメラ・オペレター、エディター、テクニシャン、CGアーティストとしてそのキャリアをスタートさせた。ILMと、その親会社であるルーカス・フィルムにおいて10年の経験を持つ。ルーカス・フィルムではCTOとして活躍し、氏の過去20年に及ぶ映像業界での経験を存分に生かし、テクノロジー分野のリーダー的役割を果たした。昨年、ルーカス・フィルムとILMがサンフランシスコのマリン郡より、現在のプレシディオ国立公園にある新社屋に移転する際も、新社屋の最新テクノロジー施設等を手掛けた。
 

キム・リブレーリ
 デジタル・ドメイン副社長、高度経営戦略担当者。ロンドンの出身で、コンピューター・フィルム・カンパニーのシニア・ソフトウエア・エンジニアとしてそのキャリアをスタート。サンフランシスコのエフェクト・ハウスESCエンターテイメント(94年に閉鎖)の設立メンバーの1人でもある。ILMではVFXスーパーバイザーを務めた。氏のクレジットには、「マトリックス」3部作や「奇蹟の輝き」「ミッション:インポッシブル2」等が含まれている。

 

デジタル・ドメイン:
 1993年にジェームス・キャメロン、スタン・ウィンストン、スコット・ロスの3氏によって設立されたエフェクトハウス。

 「タイタニック」終了後に、キャメロン監督と、ウィンストン氏はDDを去り、それぞれ独立して自己のプロダクションを設立、活動している。

 今年5月のDD買収劇でスコット・ロス氏が同社を離れた事により、オリジナルの設立メンバーは全員、DDを去った事になる。

 DDの映画部門は、「タイタニック」「奇蹟の輝き」等でアカデミー賞 視覚効果賞の受賞歴を持ち、「アポロ13」「トゥルー・ライズ」「アイロボット」等がノミネートされている。

 コマーシャル部門も有名で、これまでにトップCMディレクターとのコラボレーションにより100社のテレビCMを手掛け、34のクリオ賞、22のAICP賞、8のカンヌ映画祭 獅子賞などを受賞している。
 
 「D2ソフトウエア」が開発&販売を手掛ける合成ソフトNukeは、アカデミー科学技術賞に輝き、国内外のプロダクションの他、デジタル・ドメイン社内の主力コンポジット・ツールとして使用されている。

 今年5月に投資グループ会社ワインドクレスト・ ホールディングスに買収され、その投資者の1人であるマイケル・ベイ監督がDDに強い影響力と主導権を持つ事になった。


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(C)1998-2009 All rights reserved  鍋 潤太郎


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著者注:今思えば、これが映画「WALL E」へと繋がった訳ですが、それが未知だった2006年当時は、ちょっとしたスクープでした。

信頼出来る消息筋によると、長年ILMでVFXスーパーバイザとして君臨してきたデニス・ミューレン氏が、ILMの専属社員という立場を"卒業"し、この程ピクサーと契約した模様だ。

この情報について、ILMもピクサーも、現時点ではオフィシャルなコメントこそ発表していないものの、サンフランシスコを中心とするベイエリアのCG及びエフェクト業界、そして特にILM社内では「もはや周知の既成事実」として受け止められている。

複数のILM社員の話によると、デニス・ミューレン氏は、今でも週に1日だけパート・タイムという形でILMに立ち寄っており、残りの時間は自宅での随筆作業や、ピクサーにて過ごしているという。

実写のVFX専門家であるデニス・ミューレン氏が、CGアニメーション専門のスタジオであるピクサーと契約すると言うのはやや畑違いの感もあるが、これについてILM関係者は「長年VFX業界で過ごし、VFXという分野を突き詰めて来たデニスにとって、そのキャリアの頂点は充分に極めてしまったいう事もあり、彼にとって何か"新しい分野"に挑戦しようとしているようだ」と語っていた。

ILMでは最近、マーク・ミラー氏、クリフ・プルマー氏、キム・リブレーリ氏という3人のトップ・シニア・エグゼクティブがデジタル・ドメインへと移籍したばかりで、社内マネージメント体制が大きく変革しつつある渦中にある。例え週に1日とは言え、デニス・ミューレン氏との関係を残す事で、対外的な対面を保ったとする見方も強い。

このデニス・ミューレン氏とピクサーという新しい出会いが、今後どのような形で映像作品として現れてくるのか、注目されるところだろう。


デニス・ミューレン氏:

ミューレン氏は1975年に「Star Wars」でそのキャリアをスタートさせ、その直後にILMがロサンゼルスからサンフランシスコに移った後も30年間近く在籍、VFXスーパーバイザーとして多忙な日々を送っていた。氏は8回のアカデミー賞 視覚効果部門での受賞、そして9回の化学&技術賞など、「最も実績のあるVFXアーティスト」として君臨してきた。手掛けた作品も「帝国の逆襲」「ジェダイの復讐」「ET」「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説」「インナースペース」「アビス」「ターミネーター2」「ジュラシック・パーク」他、最近では「宇宙戦争」等がある。VFX界をリードする作品ばかりだ。

最近、ミューレン氏が1970年に学生映画として製作した「Equinox」がDVDリリースされ、マニア層を喜ばせた。また、99年に氏は、ハリウッド大通の歩道上にあるStar on the Hollywood Walk of Fame(名前が刻まれた星型のプレート)にも、VFXアーティストとして初めてその名を刻む等、多大な実績を残している。

また、来年2月11日にハリウッドで開催予定のVES Awards授賞式[ビジュアル・エフェクツ・ソサエティ(全米視覚効果協会)主催]において、生涯功労賞(Lifetime Achievement)がミューレン氏に贈られる事が既にアナウンスされている。
 


 
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