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映像ジャーナリスト 鍋 潤太郎の随筆による、ハリウッドVFX情報をいち早くお届けします。

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さて、毎月恒例のLA SIGGRAPHのマンスリー・ミーティングが行われましたので、そのお話等を。

○LA SIGGRAPH "LET THE FUR FLY!"

ここ数年、『Fur(毛)』の表現手段がかなり向上し、AliasやSoftimage や3D Studio MAX等にもFur の機能がついてくるようになりました。

ひと昔前なら、アニメータとTDが泣きながらヒーヒー徹夜して作ったような毛のCGが、5分で出来るようになった訳です。

大した時代になりましたねぇ(笑)

今回は、自社開発で、このリアルな毛の表現に取り組んだ2社の講演でした。

 


LA SIGGRAPH Presents, Tuesday December 16th

"LET THE FUR FLY!"

At UCLA MacGowan Hall

6:30-7:30pm Social Hour (ワインや食べ物で懇親会)
7:30-9:00pm Program (講演)

 


会場は、最近LA SIGGRAPH で使われる事の多い、UCLA(言わすと知れたカルフォルニア州立大学ロサンゼルス校)のホールでした。

UCLAにはテレビ学科と映画学科がある事、そして映像設備のあるホールがある事から、協力関係があるのかもしれません。

今回もなかなか盛況で、200人位の人が来ていました。
日本人の学生さんも多く来ていました。

では、講演の内容を簡単にご紹介。

◇"An American Werewolf in Paris"での毛の表現 - Santa Barbara Studio

今月の25日から公開される、映画"An American Werewolf in Paris" の狼女をCGで作った、サンタバーバラ・スタジオの講演です。

ここは、"SPAWN" でも地獄のシーンのバケモノのCGを担当しました。

今回の講演の内容は、夏のSIGGRAPH'97 のSOFTIMAGE ユーザーミーティングの時の内容とほぼ同じ内容でした。

同社はSoftimage をベースに製作を行っており、それにAlias PowerAnimator やDynamation等も並行して使うという、各ソフトの長所を組み合わせた形体で作業を行っているようです。

この映画では、狼女の表現でCGを使っており、その毛の表現の為に独自のレンダラ(Fur Rendererと呼んでましたね)を開発したそうです。

このレンダラは計算が早く、テストの際には精度を下げて(本数を少なくして)計算する事も出来るそうです。

最終的な狼女には48万本の毛を生やしたそうです。

ViewPoint Data Labでモデリングしてもらった狼をSoftimage でアニメートし、そこにグレースケールをマッピングし、Fur Rendererはそのグレースケールから、毛の量や長さ等を読み取るのだそーです。

この方法は、映画『不倫と石』、否、『フリントストーンズ』(自爆)のペットのトラの毛の表現でILMが使ったのと同じアプローチですね。

これと、PowerAnimator のスケルトンとExpressionの組合わせにより、アニメータがアニメートしたスケルトンの方向を毛に割り当てる事が出来、体の動きに併せて動く毛の方向を、アニメータが視覚的にコントロール出来るようです。

これに、Dynamationも組み合わせているようです。

レンダリングはメンタルレイと、レンダーマンの使い分けだそうです。
社内に強力な開発部隊を持っているようですね。

アニメーションにもうひと工夫あれば、もっと良くなるのになぁ、と思いましたが、かなり頑張っていると思いました。
 

◇"Mouse Hunt"での毛の表現 - Rhythm&Hues Studios

今度の週末から公開の、DreamWorksのコメディ映画"Mouse Hunt"でのネズミのCGのメーキング。

演出が非常によく、公開を楽しみにしている人も多いです。

講演は、CGは業界ではおなじみのチャールズ・ギブソンが直々に行いました。アカデミー賞を取った『ベイブ』をはじめ、数々の作品のビジュアルエフェクツ・スーパーバイザを務めた方です。

Rhythm&Hues の設立者の1人でもあります。
日本びいきでも知られている方です。

この"Mouse Hunt"は、古いお屋敷を買った2人の男と、そこに住み着いているネズミの戦いを描いた実写のコメディです。

今回は、本物のネズミ、CGのネズミ、アニマトロクスのネズミを使い分けているらしいです。アニマトロクスは、老舗のスタン・ウインストン・スタジオ(T2やJurassic Park でおなじみ)の担当だそうです。

まずは、劇場の予告編のプレビュー。これは、今劇場で流れているものですが、演出が上手く、この会場でも充分ウケてましたね。

それから、メーキング紹介。

今回は、実製作に入る4ケ月も前から、プリプロやデベロップを開始した
そうです。

まずは本物のネズミを撮影して、お勉強。倍速のフィルムで撮影してスローモーション再生し、動きを研究したりもしたそうです。

ネズミは小さい動物なので、研究も大変だ、とギブソン氏。

スタンのスタジオでは、クローズアップのショット用に本物のネズミの4倍スケール大のアニマトロクスのネズミを作ったりしたそうだす。

ネズミの毛は、シェーダーべースのものと、ジオメトリべースを両方試したところ、ジオメトリの方がコントロールもろもろの都合で良かったのでジオメトリでやる事にしたそうです。

Rhythm&Hues のソフトは殆んどが自社開発ソフトを使っていますが、今回のレンダラも、同社のレンダラを全てプログラミングしている、加藤俊明氏によるものです。

シーンによって、すべてCGのネズミのカットと、体は本物だけど顔の表情をつける為に顔だけマッチムーブでCG製を被せ、オメメをパチパチさせたり、目元を変形させたりしたカット等を使い分けてます。

CG、マッチムーブ、合成、いずれも素晴らしく、非常に完制度が高い出来になっています。

我々プロが観ても、殆んど違和感のない仕上がりになっています。

メーキングでは数々のシーンの説明がありましたが、ネズミがドレスの女性の胸の谷間に飛込むシーンでは、

『ネズミを頭から飛込ませるか、ケツから飛込ませるかで悩んだんだけど、場所が場所だけにやっぱフツーは頭から飛込むだろう、って事になって、頭からにした』

という解説があり、場内は爆笑になってました(笑)


おわり♪
 


○余談 『ポケモン』のニュース、アメリカでも

余談ではありますが、日本では、『ポケモン』を見た子供達が病院に運ばれて、大変だったようですねぇ。

僕は『ポケモン』が、どのような作品なのかを全然知らないのですが、日本の知人の子供さんが大好きで、毎回見ていると言ってました。

16日(米国)の夜10時のチャンネル5のニュースを観ていたら、

『日本でアニメを観た子供達が病院へ運ばれる』

という、アニメの映像の1部が入ったニュースが流れていました。

しかし、

ゲームで遊んで発作、というのは聞いた事がありますが、テレビ番組で、というのは日本の放送業界史上、初めてではないでしょうかね?

僕も映像制作者のささくれ(自爆)として、今回の原因については非常に感心があります。

再発を防ぐ為にも、是非とも原因を解明して頂きたいものです。

ではでは。


 

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この週末、知人の仲間の友だちで、SONYPICTURES IMAGEWORKS でCGをやってたんだけど最近リストラされちゃったという韓国系のアニメータに会う機会がたまたまありました。(ややこしくてすいません)

彼は現在公開中の"STARSHIP TROOPERS" の宇宙のシーンを担当したという事で、いろいろ話を聞せてくれました。

読者の大半の方は来年ご覧になる映画ですので、内容には触れません。

また、映画を観ないと何が何だかサッパリわからないように書いておきますので、未観の方でも安心して読んでください。

映画を観てから、もう一度読み返してみると楽しいかもしれません。

"STARSHIP TROOPERS"の、SONYがやった宇宙のシーンについて

某CGアニメータ(名前聞くの忘れた...)さん曰く。

○宇宙船はミニチュアがメイン

宇宙船は比較的大きなミニチュア(数メートル)をアームに固定し、モーション・コントロールで撮影したとの事。

宇宙船から発進するシャトル等の付随的な要素はCGによるもの。

○パーティクルはDynamation

パーティクルによるエフェクトは、Alias|Wavefront のDynamationによるもの。

Dynamationは表現の幅が広く、
リアルな表現が可能なので重宝しているそうです。

『虫爆弾』等で頻繁に活用したという事で、

『虫爆弾』は4つのレイヤーから成っていて、芯や、周りをとりまく光子、その他。これらを合成して『あの』斬新な虫爆弾が出来たそうです。

○コンポジットは、Composer

合成は、AWのComposerで行ったそうです。

これに、プラグインのPrimatteを載せて、ブルーマット等の合成に活用したそうです。

Cinefusionも使ったが、モーション・ブラーが含まれている映像にはPrimatteットの方がキレイに抜けた、との事です。

※ちなみに、Primatteは日本で開発されたものです。

開発と発売元は日本のフォトロンで、
僕の知人のエンジニア、三島氏によって開発されたのです。

○『宇宙船パックリ』は4・5人がかり

『宇宙船パックリ』は4・5人がかりでデジタル合成したそうです。

SONYには実写の炎のデジタル画像ライブラリがあり(これだけで膨大なDISKを使っているらしい)それを元に、あの7階層位のフロアに火が回っているものスゲ~リアルなシーンを作ったそうです。

その炎のライブラリがこの映画用なのか、
もともとあるものなのかは、聞くのを忘れました。

○『命中シーン』はCGとミニチュアの組合わせ

『虫爆弾』が目の前で命中して、さぁ大変(なんだそれ)というシーンでは、ミニチュアの宇宙船とCGの破片等を組み合わせてるそうです。

このシーンもすげぇ良く出来ていました。

○後処理によって複雑で繊細な効果をねらった

モーション・コントロールによる宇宙船、背景、虫爆弾、そして他の船の爆発の照り返し....非常に複雑な絡みの映像が頻繁に登場する、見せ場が沢山ある作品なのですが、マタドール等によるレタッチや後処理を頻繁に使っているそうです。

宇宙船の手前を虫爆弾がかすめるシーン等は、宇宙船はミニチュアによる普

通の素材ですが、これに爆弾の照り返し等をレタッチしたそうです。

このようなちょっとした後処理を組合わせ、複雑かつ繊細な映像作りを行ったという事です。

合成レイヤも20とか40とか、とんでもない数だったそうです。

デジタル合成部分のレゾリューションは2Kだそうです。

○後処理の利点はフレキシブル

作品によっては撮影の際にストーリーボードとにらめっこしながら、ミニチュア周りで起こっている爆発の照り返し等をライトでつけて撮影、というケースもありますが、今回は後処理が多いらしい。

後処理の利点はフレキシブル。素材をいじりながらいろいろ調整出来る為、試行錯誤をしながらクオリティを高められる、との事。

だいたい、このような裏話でございましたですね。

このアニメータは門外不出のビデオテープを見せながら説明してくれました。
僕は友人達と、口をあんぐり開けたまま、ビデオに見入っていました。

ではでは。

 


 
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