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著者注:2012年の記事です。

写真:ロサンゼルスのデジタルドメイン(筆者撮影)

ロサンゼルスのデジタルドメイン

■DDMGが中国の映画市場に参入

 昨年
10月28日付の本欄で、デジタルドメイン・メディアグループ(本社フロリダ / 以降DDMGと表記)[http://ddmg.co/]がロンドン、インド、そしてシドニーにスタジオをオープン予定という話題をご紹介したのは記憶に 新しいところだが、この程DDMGがアナウンスしたところによれば、DDMGは中国の北京小马奔腾传媒股份有限公司(以降、小馬奔騰と表記) [http://www.htvfilm.com/]と業務提携する形で、急成長する中国のフィルムマーケットに参入、北京に新スタジオを新設する事で合 意したという。

 

これが実現すれば、「米国大手VFXスタジオ主導による中国本土でのVFX制作」は初の試みとなるが、これまで破竹の勢いでグローバル化を推進して来たDDMGは、これによって「最も低価格でハイエンドな映像を提供出来る環境」を手に入れる形となる。




■現地プロダクションと提携。フロリダスタジオと同等の規模

 DDMGと小馬奔騰のパートナーシップによる新スタジオは、VFX、アニメーション、そしてプロダクション・サービスを、映画とテレビ、そして関連メ ディアに提供していくのが狙いで、既にフロリダ州ポートセントルーシーで劇場用長編アニメーション作品を制作中の「デジタルドメイン・フロリダスタジオ」 と同等の規模をめざす。

北京にオープン予定の新スタジオは、DDMGと小馬奔騰がそれぞれ50%づつをシェアする。

 DDMGがテクノロジー面やVFXスタジオの管理&運営、そして社員教育および人材育成を担当し、小馬奔騰はスタジオの土地提供と新スタジオ建設費を負担し、中国の資本市場(キャピタルマーケット)における資金調達も担当する。




■ねらいは中国の映画市場

 今回のジョイント・ベンチャー(戦略的提携)による新スタジオがオープンした後の当面の目標は、まず、急成長する中国のフィルムマーケットへ第1歩を踏み入れ、小馬奔騰と共に米国の映画業界の中核へのアクセスをめざす事にあるという。



 ちなみに筆者が過去数年来、米VES関連のシンポジウムやセミナー等に参加した際、そのパネル・ディスカッションの席で「中国本土へのスタジオ進出につ いてどう思うか」という問い掛けが出された事があった。これに対して「興味を持っている」「注意深くリサーチを行っている」と回答していた大手VFXスタ ジオは複数社あったが、そう言った動きがいよいよリサーチの段階から現実になる時代に差し掛かって来たという実感がある。

 

これ迄に筆者がレポートしてきたように、DDMGによるグローバル化推進は業界を驚嘆させる勢いで進んでいる。DDMGはロサンゼルス、サンフランシスコ、フロリダ、バンクーバー、ロンドン、ムンバイ、シドニー(予定)の世界7箇所にスタジオを持ち、そして今度は北京と、開設予定の拠点も含めると世界8箇所目のスタジオをオープンしよう としている。

またDDMG関連の話題としては、11月18日(金)に実施された新規株式公開(IPO)がある。公開初日は予定株価を16~17%近く 下回るスローな滑り出しだったが、「映画の視覚効果会社の株式上場」は異端児という事もあり、直前にはFOXビジネスニュース等でも話題を呼んでいた。

 

急成長を遂げるDDMGの動向を「大丈夫かな?」と心配する声は、ハリウッドの制作現場でもよく耳にする。特に、80年代のCG業界を知る筆者の世 代には、カナダのオムニバスの事例が脳裏に浮かぶ。最もオムニバスとは時代も状況も全く異なるのだが、CG黎明期の出来事として、規模拡大の末に倒産した オムニバスの顛末は、「急成長」という言葉を聞くと思わず連想してしまう。

いづれにせよ、DDMGのグローバル化戦略が、「時代を先取り」したビジネ ス・モデルになりうるのか、今後の動向からますまず目が離せない今日この頃である。



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リズム・アンド・ヒューズのロサンゼルス本社
リズム・アンド・ヒューズのロサンゼルス本社

■200人規模の雇用を計画 人材育成・トレーニングも実施

 この程、ハリウッドの大手VFXスタジオ、リズム&ヒューズ(本社:ロサンゼルス、以降R&Hと表記)は、台湾の高雄市(たかおし/カオシュ ン)に新たにVFXスタジオを新設する事を正式に発表した。高雄市は台湾南部に位置するが、R&Hはこの地に新しいVFXセンター(VFX Center)を設立する予定。VFXセンターでは、約200人規模の台湾人デジタル・アーティストの雇用が見込まれ、R&H主導による人材育 成&トレーニングも行われ、ここでハリウッド映画のVFX制作を行う予定だという。

 新スタジオは、台湾最大の電気通信企業である中華電信股份有限公司(Chunghwa Telecom)と、同じく台湾のパソコンメーカー大手の広達電脳(Quanta Computers)、そしてR&Hという3社のパートナーシップによって運営される。

 3社は、昨年の暮れが押し迫った30日に台北で、また翌31日には高雄市という合計2箇所で調印セレモニーを開催。これは、台湾において最初のステップを踏み出すオフィシャルな場となった。


■ハリウッドのメジャー映画への投資ファンドも設立へ

 また、R&HとMOEA(台湾対外経済局)は共同で、ハリウッドのメジャー映画作品に対する投資を行う為の「East Grand Films」と呼ばれる映画投資ファンドを設立。

 同ファンドは、R&Hとハリウッド映画業界が持つ太いパイプをフルに活用し、VFXをふんだんに使った映画作品への投資を行う事により、台湾の投資家へのプロフィット・シェアリングを目指す。


■カナダ、インド、マレーシアに次ぐ海外拠点設立で1300人の大所帯に

 R&Hは現在、ロサンゼルス国際空港のすぐ南隣にあるエルセグンドに本社と制作拠点を構えており、アメリカ国外にはカナダのバンクーバー、イン ドのムンバイとハイデラバード、そしてマレーシアのクアラルンプールなど4箇所の海外拠点を持ち、全クルーは1300人にも及ぶ。

 世界各地に制作拠点を持つ事により、ワールドワイドのプロダクション・パイプラインによって文字通り「24時間稼働」の制作体制が既に実現している。ここに台湾スタジオが新たに加わる形となる。

 台湾スタジオには、VFX及びアニメーションのプロダクション・サービスに特価した、クラウド・コンピューティングを駆使した次世代のプロダクション施 設を構築する構えだという。このクラウト・ベースのソリューションによって、新しいプロダクション施設は「グローバル化に対応した次世代プロダクション・ パイプライン」の実現を図る。


■グローバル化を進めるハリウッドVFXスタジオ各社 各国の優遇策を活用


 過去数年、ハリウッドでは大手VFXスタジオによるグローバル化の波が押し寄せ、筆者がこれまでにレポートしたようにデジタル・ドメイン等が海外に多くの拠点を構えているが、R&Hは早い時期からインドにスタジオを構えており、グローバル化の先駆けと言える。

 さて、このグローバル化に「不可欠」なのが、各国が推進している様々な優遇策だ。カナダのバンクバーにしても、オーストラリアにしても、ロンドンにしても、各国政府からハリウッドへ「ラブコール」があり、グローバル化が進んで来たのだ。


R&Hの台湾スタジオも例外ではなく、この背景にはデジタルコンテンツ業界への投資に積極的な取り組みを見せる台湾政府の姿勢がある。また R&Hが現在21世紀フォックスから受注しVFX作業の真っ只中にある映画「LIFE OF PI」(今年12月全米公開予定)のアン・リー監督の推薦による後押しも大きい。

 R&Hフィルム部門代表のリー・バーガー氏は、「アン・リー監督のご推薦によって、我々は未来のビジョンを、監督と台湾政府と共にシェアする形 となりました。監督はMOEAに対する門戸を開いて下さり、台湾政府には類を見ない優遇措置を提供して頂きました。」と述べた。

 またR&H設立者&社長のジョン・ヒューズ氏は、「台湾政府とこのような素晴らしい計画を進められる事はこの上ない慶びです。末長く、良い関係を築いていきたいと願っています。」と付け加えている。


 このように、ハリウッドのVFX業界で急速に進むグローバル化だが、残念な事に、その矛先に日本は依然として含まれていない。日本政府からハリウッドにオファーがあるのは、いつの日になる事だろうか。


 



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