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映像ジャーナリスト 鍋 潤太郎の随筆による、ハリウッドVFX情報をいち早くお届けします。

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イメージ・ムーバーズ外観    Photo by Johnny Duguid 
IMD_outside.JPG
 

 
 










●はじめに
 
米国西海岸時間の3月12日午後2時19分、筆者の元に1通のEメールが届いた。
 
差出人はサンフランシスコに住む友人からである。
 
そこには「つい先ほど、イメージ・ムーバーズ・デジタル(以降IMDと表記)で、全社員に対して来年1月をメドに会社を閉めるというアナウンスがあった。今動いているプロジェクトが終了次第、閉鎖という事らしい」という驚くべきニュースが書かれていた。
 
このメールが届いてから1~2時間後、全米各メディアは、米ウォルト・ディズニー・スタジオ(以降、「ディズニー」と表記)がメディア向けに発表したプレス・リリースを、続々とWEBで報道し始めた。
 
このように、LAのVFX業界の現場は、米メディアが報道する数時間前にこの事実を知っており、大きなショックを受けたのであった。
 
 
●IMDとは
 
IMD(Image Movers Digital)は、ディズニー100%出資のアニメーション・スタジオである。
 
元々は映画監督のロバート・ゼメキス監督が1997年に設立した映画制作会社だったが、「ポーラー・エキスプレス」「ベオウフル」等のパフォーマンス・キャプチャーを駆使した長編フルCGアニメーション映画の成功により、2007年にディズニーが買収し子会社化した。
 
オーナーシップは、ディズニーとゼメキス監督、スティーブ・スターキー、ジャック・ラプキー、ダッグ・チェンがシェアする形で運営している。
 
サンフランシスコの金門橋を渡って更に北上したノバトにスタジオを構え、ここで「クリスマス・キャロル」が$175millionを投じて制作された。同作品は2009年11月、感謝祭~クリスマスシーズンに世界同時公開され、ワールドワイドで$324millionの収益を上げる大ヒットとなった。
 
現在は、次回作「Mars Needs Moms」を2011年3月公開をめざして制作中であり、ゼメキス監督もビートルズのアニメ「イエロー・サブマリン」(1968)のリメーク版のデベロップを進めている最中であった。
 
昨年の「クリスマス・キャロル」制作中から、IMDは大規模なリクルーティングを展開し人材を獲得し、現在は450人余りが働いている。

著名な映画監督、ロバート・ゼメキス氏の下で映画数本を制作し、長期契約による安定したポジションが得られるという事もウリだった。

スタジオがサンフランシスコにある為、地元ではILMを辞めて移籍したり、「ベオウフル」等に携わったクルーがLAからわざわざ引っ越したりもした。
 
そんなIMDで、一体何が起こったのだろうか?
 
 
●サンフランシスコでは
 
米メディアは、このニュースを「Very unexpected news(非常に予想外の、寝耳に水のニュース」として報道。文字通り、本当に寝耳に水だった。

しかし、一番驚いたのは当の社員達だろう。
 
筆者が取材を進めるにつれ、IMDで閉鎖がアナウンスされた時の生々しい状況が伝わってきた。IMDのクルーは、筆者の取材に対してこう語っていた。
 
~閉鎖のアナウンスがあった時の状況を教えてください。
 
今朝までは「Mars Needs Mams(以降、MNMと表記)」 の後に予定されている、新しい映画のスクリーン・テストが行われていました。
 
確かにこれ迄にもバジェット・カットはありましたが、映画が中止になるという感じの印象はありませんでした。もちろん、その映画の撮影も順調に進んでいました。うちの部署では、先々週に入ってきた人もいたくらいです。
 
実のところ、何が起こったのか、よくわかりませんでした。
  
今朝、突然「Airman's Club」 と呼ばれる場所で全社ミーティングが行われると、連絡がありました。「ゼメキス監督や役員達が来る」という事でした。
 
そこでは、テレビ会議も繋がっていて、役員の話をクルー全員が聞く準備が出来ていました。
 
最初に、ジャック・ラプキー社長が「悪い知らせ」があると前置きして、ゆっくりとした口調で MNMを最後に会社が閉鎖になる、と言うニュースを、涙ながらに伝えました。
 
その後に、ゼメキス監督も涙を流しながら、「この事実は、悔しい。IMD が成し得て来た仕事は正しかった」と繰り返し、「今回のこの結果は、決して今までの映像制作が失敗だったという言う事ではない。」とスピーチしました。
 
何人かの女性クルーのすすり泣く声も聞こえていました。 
 
創設者の1人、ダグ・チャンも、「理由は全くわからないし、この決定は納得がいかない」と強い口調で語っていました。 彼は、この全社ミーティングの後、社員の顔を見るのがつらくて、部屋に篭ってしまいました。
 
 
~IMDでは450人のクルーが働いているそうですが、もうレイオフが始まっているのでしょうか。
 
レイオフは、まだ始まっていませんが、週明けから1人ずつ面談が行われ、いつまで雇用されるか通達がありました。

私は年末位まで雇用される事になりましたが、既に作業が終わっている人はレイオフになる可能性があると思います。
 
 
●ロサンゼルスのモーション・キャプチャー施設では
 
ロサンゼルスのマリナ・デルレイには、IMDのモーション・キャプチャー施設がある。

ここは「クリスマス・キャロル」のほか、ジェームズ・キャメロン監督の「アバター」のモーション・キャプチャーが行われた事でも知られる。
 
「クリスマス・キャロル」のモーション・キャプチャーは全てここで行われ、データをノバトのIMDへ送り、アニメーション制作が行われていたそうだ。
 
閉鎖に関する発表が行われた時の様子について、関係者の1人は次のように語っていた。
 
 
~ロサンゼルスでの発表は、どのように行われましたか。
 
金曜日の正午、IMD社員のモーキャップ、トラッカー、エグゼクティブ・プロデューサーのアシスタント等が、LAオフィスの大会議室に集められ、サンフランシスコのIMD 本社からのポリコムによるテレビ会議の形で、IMD解散の発表が行われたようです。
 
我々、現場スタッフはポリコムには参加する事が出来ず、その発表がどのような内容だったのか、残念ながら詳しい事は分かりません。

その前の午前11時半にエグゼクティブ・プロデューサー のオフィスに呼ばれて、彼から直接説明を受けました。
 
 
~閉鎖の直接の原因は、何だったのでしょうか。
 
ディズニーでは、昨年夏にディック・クック氏が会長職を辞任し、その後任となったアラン・バーグマン氏 が、積極的にディズニーのファイナンス立て直しを遂行しています。
 
その一環として、製作費が掛かり過ぎる割に、思うように興行収入が伸びなかった 「クリスマスキャロル」を製作した
IMDが、もはやディズニー のビジネス・モデルには合わない、と判断された事が大きな原因のようです。
 
(筆者注:米メディアも同様の報道をしていた)
 
 
~LAのモーション・キャプチャー・スタジオのクルーの皆さんの反応は、いかがでしたか?
 
我々プロダクション・サイドの人間は、2週間前から薄々と察知していた部分もあったので、さほど驚かなかったのですが、サンフランシスコのIMD本社は、何も知らない人達が殆どだったようで、この発表に対してのショックは大きかった様子です。
 
ここLAでは、ポリコム終了後に多くのIMD社員が、外の駐車場に出て、携帯電話で話していました。
 
その後のランチには、殆どのIMD社員は来ず、グループになって話し込んでいました。
 
金曜日という事もあり、その後はグループ毎で、どこかに飲みに行ってしまう人達が多く、モーキャップ、トラッキングのステーションは、空っぽという感じでした。
 
今後は、ヒューマンリソース(人事部)の人たちが、今後の話を一人ずつしていくという事です。
 
今日も、IMDのセクションには重苦しい空気が流れています。
 
 
●繰り返される、ディズニーによるスタジオ閉鎖やレイオフ
 
冒頭で述べたように、「クリスマス・キャロル」はワールドワイドで$324millionの収益を上げる大ヒットとなった。しかし、ディズニーはもっともっと大きなヒットを期待していたようだ。それが今回のIMD閉鎖に直結した事は間違いないだろう。
 
日本では意外と知られていないが、ディズニーによるアニメーション・スタジオの閉鎖は、実は今回が初めてでない。
過去にも、何度も繰り返されてきた事なのだ。
 
ディズニーは、90年代後半にも独立VFXスタジオ「ドリーム・クエスト」(映画「アルマゲドン」等で有名)を買収し、映画「ダイナソー」のVFXを制作する為にディズニー社内に立ち上げたVFXスタジオ「ザ・シークレット・ラボ」と統合させたが、2001年の「VFX事業からは徹底する」というトップの判断で「ザ・シークレット・ラボ」の閉鎖を決定、1000人近いクルー全員を解雇し、物議を醸し出した事があった。
 
特に買収され、オフィスを引越したあげくに解雇されたドリーム・クエスト出身者の落胆&反発は大きく、車のバンパーにディズニーロゴと同じ書体で「Disappointed(がっかりした)」というステッカーを貼って走っていた知人もいた程だった。
 
また、世界に3拠点あったディズニー・フィーチャー・アニメーションのスタジオも、2003年にフランスのパリを、2004年にフロリダのオーランドを閉鎖、大勢のアニメーターが職を失い大問題に発展した。
 
ディズニーは、優れた作品を世に贈り出し、そして優れたビジネス手腕で大成功を収めているが、その陰で泣いている大勢のアーティスト達の存在を、我々は忘れてはならないだろう。
 
今回の閉鎖は突然発表されたが、発表が行われた3月12日(金)午後、プレスリリースが全メディアに一斉に発表された用意周到さを考えると、この閉鎖自体はかなり前から計画されていた事が伺える。
 
上記インタビューでもLAの一部社員は空気を察していたようだが、ゼメキス監督ですら当日まで何も知らされていなかったのは驚きだ。
 
我々はディズニー作品を観て夢を与えられ、素晴らしい感動に酔いしれるが、その舞台裏の現実は厳しい。そして、夢の代償は、あまりにも大きい。
 



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