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映像ジャーナリスト 鍋 潤太郎の随筆による、ハリウッドVFX情報をいち早くお届けします。

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 さて、今月もLA SIGGRAPHが開催されました。

今回のホストはDIGITAL DOMAINで、映画『タイタニック』のメーキング紹介でした。

会場は、先月と同じく、UCLAのホールでした。UCLAならば30分以内で行けるので、少し時間に余裕を持って出掛けました。

車で Sunset Blvdを西へと向かったのですが、途中から渋滞。それも、左車線だけ。右車線はガラ空きです。UCLAはSunsetを途中で左折して、すぐの所にあります。

…っつ~事は、この車、全部 LA SIGGRAPHへ行く連中?

予感は的中し、車の列はUCLAまで続きました。UCLAに着いたら着いたで、今度はパーキングに入るところで大渋滞してます。

どひゃあ。

こんなの、見たことない。いつもUCLAでやる時はラクラク入れるのに......

やっとの事で車を止め、会場のホールに行きました。すると、今度は長蛇の列。

うひゃあ。

でも、この行列はメンバー以外の参加者の待ち行列である事がわかったので、メンバーである僕は先に入る事が出来ました。

『空いているお席はおつめください』というアナウンスが流れる程で、ホールは完全に満席でした。

チケットはとうとうSOLD OUTになり、中に入れなかった人も多数出た模様です。

内容が内容だけに、西海岸中のCG野郎が集まったのでしょう。

かくして、波乱と狂気のLA SIGGRAPH は幕開けになりました。

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LA SIGGRAPH Presents, Tuesday, January 13th

DIGITAL DOMAIN

6:30-7:30 Social Hour(食べ物、飲み物で懇親会)
7:30-9:00 Program (講演)

At UCLA MacGowan Hall

Speaker:
Matthew Butler - Data Integration Supervisor
Andre Bustanoby - Performance Capture Supervisor
Richard Kidd - Digital Water Supervisor
Daniel Loeb - Charactor Supervisor
Erik Nash - Visual EFX Director of Photography
Kelly Port - Digital Paraphenalia
Daniel Robichaud - Animation Supervisor

参加費:
メンバーは無料(年会費$25 / 約3250円)←日本なら1万円はするな
ノンメンバーは$5.00 / 約650円 ←日本なら2千円はするな

このテの講演ではいつもそうですが、笑いの絶えない、非常になごやかな雰囲気で進められます。

今回も、最初に挨拶したデジタルドメインの人が、

『UCLAに来たのは20年前に願書を出した時以来で(って事は落ちたのか)、そんなオレがUCLAのホールで講演出来るなんて、光栄だ!』

 とスピーチし、会場を湧かせました。 では、その内容をかいつまんでご紹介。

(かいつまんだと言っても、今回のレポートはけっこう長めです)


○CGによるタイタニック号のクルーと客のキャラクター・アニメーション

◇今回、船の上の客、クルー等をCGでやった。

◇CGによるキャラクターアニメーションは2割がモーチョンキャプチャだが、残りの8割は手作業でアニメーションをつけた。

◇モーションキャプチャは、デジタルドメインのすぐ近くにある、ベニスのHouse Of Moves社で行った。

◇役者に60個のマーカーをつけ、それを取り込んで動きを自動抽出するという方式。

◇モーションキャプチャによるシーンは、比較的早い時期から、日本人のCGアニメータ、山口圭司がキャラクター・アニメのテストに望んだ。

◇映画の最初の方に出てくる、甲板の上を客が歩いているのが見えるシーン等はモーションキャプチャによるもの。(お母さんが女の子を抱いて、前方の海を指さしているシーンのメーキング映像等が流れた)

◇また、沈没する船から人がバラバラ落ちる部分も、CGで表現している。

◇人がロープに捕まってブラ下がっている部分は、CG。モーションキャプチャで動きを抽出。

◇周りでボロボロ落ちる人もCGだが、動きは手作業。引きのシーンだし、暗いから、アラはそれ程目立たない。

◇垂直になった船尾から人が落ちるロングのシーンは、スタントマンに、カラーバーのような模様の入った、目立つ色のウエット・スーツ(後で動きが見えやすいように)を着せ、クレーンでつり上げたゴンドラの上からエアマットに飛び降りてもらい、それを撮影。ロトスコープして動きをつけ、CGに置き換え。

◇シーンによっては、主役の2人以外、背景で落っこちそうになって動めいている人は全部CGだったりする。(すげぇ)


○タイタニック号

◇メキシコに実際に作ったほぼ実物大(90%スケール)のタイタニックのセット、ミニチュア(5種類あるらしい)、CGの使い分け。

◇映画冒頭の、海底に沈んでいるタイタニックは、大西洋に沈んでいる本物をキャメロン監督が海底で撮影したものと、ミニチュアをスタジオで撮影したのを使い分けている。

◇部分的に、WindowsNTのプラットフォームで動く、LightWave3Dも使っている。船の側面や、海中シーン、最初に出てくる沈没シュミレーション等。

(Cinefexには、LightWaveのプラットフォームはDECのAlpha Processors、本編で LightWaveが使われたのは3ショットだけ、船のモデリングとテクスチャの作業に6ケ月かかった、とありました)


○海

◇ミニチュアの船体、CGの船体に絡んだ海は、すべてCG製。Arete Image Software社のRenderWorldやDigitalNatureTools等。水泡はPrismsのパーティクルシステムや、スクリプトベースの自社開発のオリジナルソフト。Rendermanも活躍したそうです。

○ローズおばあちゃん

メーキング映像の説明の際『これはCG』『これはミニチュア』『これは実写』という細かい解説が入ったのですが、ローズおばあちゃんのアップのシーンで、

『これは、本物です』

という解説が入り、ウケてました(笑)これが、もしデジタルのリアルなオバアちゃんだったら、大変ですよねぇ。バーチャン・リアリティ、なんちゃって(自沈)


○デジタル・コンポジット

◇モーション・コントロールカメラと実写の絡みが多く、苦労した。

◇作業の流れをフローチャート化し視覚的に理解し易くするなど工夫した。素材の絡みや、モーフィングチームとの連係など。

◇素材はそのままただ合成するのではなく、種々の後処理が加えられている。フォグ、影、ボケ、モロモロ。

◇膨大な合成レイヤーを処理した。

◇解像度は大体2K。

◇カットによってはキー・ライトの位置の関係やセッティングの時間の都合等から、グリーンマットで撮らず、後ろが全部映った『素』で撮り、後でマスクを起したカットもある。

 

◇タイタニックが出港するシーンは、

 ・船→ミニチュア
 ・甲板から手を振る客→実写の素材を適材適所に合成
 ・海→CG素材
 ・しぶき→CG素材
 ・背景のタグボート→マット画
 ・タグボートの煙→パーティクル
 ・桟橋の建物→マット画
 ・桟橋の客→実写の素材を適材適所に合成
 ・その他

などの膨大な素材の組合わせによるもの。

ちゃんとカメラも動いているし、止っている絵がひとつもないんですねぇ。

すげぇ。

◇甲板でくつろぐ客に、カメラが海方向からクレーンで寄るシーン

・ほぼ実物大のセット(メキシコ)で撮影 ・タイタニックのセットの左側側面の下部は支柱がむき出し(桟橋側はよく映るのでちゃんと作り込んであるが、反対側は上部だけしか作ってない)で、下を歩くスタッフや、背景にメキシコの山等も映っている。

・それを、デジタル合成で山を消して空を差し換え、支柱の上にCG製の船の側面をのせ、スタッフを消してCG製の海を合成、煙突の煙、フォグ、モロモロを加えると、完成。


○プロダクション運営

複雑多岐に及ぶプロセス、大人数のスタッフをうまく『回す』にあたり、

◇キャメロン監督←→現場

◇3D部隊←→2D部隊

◇遅番←→早番

等の『風通し』の方法を工夫したそうです。


○目的不明のジョーク・ビデオ

講演の一番最後に、『MAKING OF TITANIC』と称するビデオが流れました。メーキングとは名ばかり、目的不明の、冗談テンコ盛りの、内輪ウケねたばかりを集めてMTV 風に編集したビデオです。これが大爆笑になっていました。

どんな内容かというと、

・タイタニックの客の中に、なぜかセサミ・ストリートのキャラクターが合成されている。

・緑色のカエルのキャラクタ、カーミットが、タイタニックの屋根に腰掛けて、足をブ~ラブラさせている。

・タイタニックのブリッジから、エルモ達が顔を出している。

・人が落ちる際、クマちゃんが同じ動きをしながら一緒に落っこちる。

・船体が2つに割れるシーンで、なぜか巨大な赤ん坊が出てきて、目からレーザー光線を発射。船はそれが原因で沈む。(爆笑)

・出港するタイタニックのシーンで、艦首に、なぜか張り紙が合成されてる。『SINK ME』(意味:私を沈めて...)

・キャメロン監督が潜水服を着て、海底からご挨拶。

・なせか、セットで皿を割り続けるスタッフ。

・沈みかかったタイタニックの甲板で、なぜか船員が平然とデッキの掃除をしている(他のシーンの素材を合成してある)。

・タイタニック号の遥か後ろの水平線に、パラマウントのマークが後光になって輝いている。(お上に対するヨイショか?)

などなど。

おそらくは打ち上げパーティ用だと思いますが、すべてきちんと合成され、カメラパスもご丁寧に合せてあるのです。

ここまでやるか、フツー?

アメリカ人ですねぇ(笑)

----

この『タイタニック』のデジタル・エフェクツには、僕の知人の3人の日本人スタッフが参加しています。

・山口圭司氏 / DIGITAL DOMAIN - Digital Artist

僕のリンクス時代の先輩で、タイタニックでは船の客のキャラクター・アニメーションを担当。

・塩沢敏明氏 / DIGITAL DOMAIN - Digital Artist

都内の大手CGプロダクション、イマージュを経てデジタルドメインに移籍された塩沢氏は、タイタニックでは『リアルなCGの海』を担当。

・インターン生 曽利文彦氏 / 東京放送 開発局 マルチメディアセンター CG担当

TBS社員の曽利氏は、TBSと南カリフォルニア大学の交換留学生として昨年1年間在米。その間、山口氏との親交からデジタルドメインのタイタニックにインターン生として参加。山口氏と共に船の客のキャラクター・アニメを担当。現在は留学の終了に伴い日本に戻られ、東京のTBSでご活躍中です。

この3名の方々は、エンドロールにしっかりと名前が載っています。

それでは、また。


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(C)1998-2009 All rights reserved  鍋 潤太郎

 


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