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映像ジャーナリスト 鍋 潤太郎の随筆による、ハリウッドVFX情報をいち早くお届けします。

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画像:第80回アカデミー賞/科学技術賞の縦を手にする社長のステファン トロジャンスキー氏と、日本人エフェクト・アーティストの村上勝和氏
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ハリウッド映画のお膝元であり、様々な規模のVFXスタジオが競合し合うロサンゼルス。

この激戦区にドイツのVFX会社「スキャンラインVFX」が新規参入し、程なくハリウッド映画の大作数本のVFXを手掛けた。少数精鋭の製作体制を採っている同社には、日本人のアーティストもいた。そこで、同社でエフェクト・アニメーターとして活躍する村上勝和氏に、お話を伺った。

ロサンゼルスのカルバーシティからマリナデルレイにかけては、ソニーピクチャーズ・イメージワークス、ZOIC、リズム&ヒューズ、そして古くはセントロポリス(2002年に閉鎖)等、VFXスタジオが比較的多く存在するエリアだ。

この一角に、スキャンラインVFXはスタジオを構えている。

スキャンラインVFXは、シーグラフ2008にて12日(火)午後に開催された「Talks - Raging Waters:ナルニア物語2」のメーキング講演で、リアルな流体シュミレーションによる制作手法で注目を浴びた他、この自社開発の流体シュミレーション・ツールFlowlineの開発が評価され、今年のアカデミー賞の科学技術賞を受賞した事でも知られている。

 アカデミー賞の科学技術賞 受賞者一覧
 http://www.oscars.org/scitech/2007/winners.html

同社はもともと過去20年間ほど、ドイツのミュンヘンを拠点にドイツ、ヨーロッパ映画、テレビを中心としたCGを制作してきており、今年の1月にロサンゼルスにも拠点をオープン。ハリウッド映画を中心に映像制作を開始した。

現在、ドイツの本社では100人ほどが働いているそうだが、ここLAスタジオのスタッフは少数精鋭で、ドイツ人1人、アメリカ人5人、カナダ人1人、そして日本人が1人という国際色豊かなクルー構成だそう。

LAスタジオで最近手掛けた映画には『ポセイドン』『ナルニア国物語2』、『300』、『アイアンマン』等があるが、ドイツ本社と共同で制作した『ナルニア2』に至っては、「ドイツ本社で17人、LAスタジオはたったの8人という少人数で24ショットを完成させた」という。

ドイツ本社では、数年前から日本のプロジェクトも受注、現在制作中の日本映画のプロジェクトも進行中だという。一方LAスタジオでは、2009年公開予定のハリウッド映画「2012」の制作に対応する為、この10月頃までに10数人のスタッフを増員する計画もあるという。

同社のウリは、アカデミー賞を受賞した自社開発のFlowLine(前述)で、これを用いて流体シュミレーションを行なう。特に水、炎、煙等の流体シミュレーションを得意とし、海や水しぶき等のVFXには定評があるという。

このFlowLineはMayaとMaxの両方で稼動するが、ドイツ本社ではMaxを使用するアーティストが多い事から、その流れでLAスタジオでもMaxを使用しているという。

FlowLineの強みはシュミレーション・エンジンが非常に高速な点で、学生時代にHoudini等のエフェクト・ツール学んだ経験を持つ村上氏も、初めて使用した時には「その処理速度の速さに驚いた」そうだ。

村上氏はLAスタジオの立ち上げと同時期に参加しこのツールを駆使、『ナルニア国物語2』の終盤のシーンで、川の神(RiverGod)が現れるシーン等を担当。川の流れや、塔門が壊される際の飛沫、波、泡、水煙などのエフェクト・アニメーションを手掛けた。

同社は少人数で効率良く作業を回していく為、そのワークフローにも独特の工夫を凝らしているという。

まず、各アーティストは、VFXスーパーバイザーから担当ショットに必要な基本的なセットアップを受け取る。それをシーン毎にカスタマイズしながら、調整を重ねる。続いて、VFXスーパーバイザーの意見を反映しつつ、プリビズのクイックタイム・ムービーと比較しながらエフェクトを徐々に作りこんでいく。

作業が後半になると、コンポジターと合成結果を何度も確認しながら、CGスーパーバイザーのコメントを反映しながら細部を詰めていき、最終的に完成となる。

仮合成のチェックはAfterEffectsで行い、本番合成はShakeで行う事で作業の効率化を図っている。

少人数ゆえの苦労もあるそうだ。作業後半はスーパーバイザーが忙殺され、なかなか話し合うタイミングが図れなかったり、出勤すると夜までにショットを仕上げるよう指示され、プレッシャーの中で作業を行った事もある。また、控えの人間がいない事もあり1人1人の責任も重く、締め切り日になるとかなり緊張するという。

その反面、社内の雰囲気はアットホームで、自分のデスクから全員の顔を見渡しながら作業が出来るのも、少数精鋭のスタジオならではだと言う。

映画のVFXを手掛けるスタジオは、対規模パイプラインで大人数で制作するスタイルが主流になりつつあるが、少数精鋭でハイレベルのエフェクトを手掛ける同社は、まったく異なるアプローチでハリウッドに参入してきた。

スキャンラインVFXの今後の活躍が楽しみである。

関連記事:
 「2012」を担当 ScanlineVFX 村上勝和氏に聞く(12/24/2009)


 


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著者に無断での転載、引用は固くご遠慮下さいますよう、
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(C)1998-2009 All rights reserved  鍋 潤太郎

 

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<絶賛発売中>ハリウッドCG業界就職の手引きcghollywood.jpg   海外をめざす方の必読本!


 



[B-DIGITALの洗練されたデザインのロビー]
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 タイのバンコクに、MAYAやレンダーマンをハリウッド水準で本格的に学べるCGスクールがある事をご存知だろうか。

 しかも、経営しているのは日本人女性とそのご主人だ。

 タイの文部省からも認可を受け、タイのCG教育機関として最先端を行く専門学校B-DIGITALをご紹介しよう。


○ハリウッドでの経験を生かし

 筆者は5月、自著「ハリウッドCG就職の手引き」のプロモーション講演ツアーの一環として、タイのバンコクにあるCGスクール、B-DIGITALを訪問した。筆者の英語による講演では、約90人の学生が聴講に訪れるなど、同スクールの盛況ぶりを物語っていた。

IMG_2812.jpg バンコク国際空港から車で30分、鉄道BTSの戦勝記念塔駅からも程近い便利な場所に、B-DIGITALはスタジオを構えている。

 設立は2006年。ハリウッドのデジタル・ドメインで3Dアーティストとして映画「ザ・デイ・アフター・トゥモロー」「ステルス」等に参加した経歴を持つアンドリュー・ブナグ氏と、夫人の笠井睦子氏が経営している。

 笠井氏自身もロサンゼルスの大手ゲーム・デベロッパーPandemic Studioで「スターウォーズ バトルフロント2」「マーセナリー」等の数々のゲーム作品の制作に参加した経歴を持つ。

そんなハリウッドでの現場経験をフルに生かし、B-DIGITALはバンコクでのCG教育分野では稀有な存在となっている。

 日本を含め、アジアにはCGスクールは幾多もある。しかし、ハリウッドの現場や北米のゲーム市場で、「本場の、そして本物の経験を積んだアーティストが直接教える学校」は、筆者の知る限りではB-DIGITAL以外には存在しないのではないだろうか。


○"タイで唯一"レンダーマンを教える専門学校

  インストラクターはブナグ氏と笠井氏を始めとする5名が担当。学校としては小規模ではあるが、カリキュラムは充実している。

IMG_2818.jpg MAYAの入門クラスから始まり、コンセプト・デザイン、モデリング、テクスチャリング、ライティングとレンダリング、キャラクター・モデリング、Zブラシによるモデリングなど、クラスは多彩だ。

 「LAの美大アートセンターと同じように、伝統的な手描きのスキルや、コンセプト・デザインにも力を注いでいます」と笠井氏。

 
 中でも特筆すべきは、ハリウッドでは定番のレンダーマンによるライティングのクラスだ。

 ブナグ氏のデジタル・ドメインでの経験を生かし、学生達はレンダーマンを駆使したHDRによるフォトリアリスティックなライティング・テクニック等を学ぶ事が出来る。

 また、モデリングとライティングに重点を置いたカリキュラムが、ブナグ氏のバックグランドを象徴している。

 筆者の印象では、ハリウッドにある有名CGスクール、Gnomonに極めて近いスタイルとカリキュラムを採用しており、ハリウッド水準のCGをタイのバンコクで学べるという、大変ユニークなCGスクールと言える。 

 

○タイで学校を設立したねらい

 タイでは、これまで映画VFX、またはゲーム業界のニーズに合わせた、最新のカリキュラムを提供するようなCGスクールは存在しなかった。

 B-DIGITALは、タイ国内だけでなく、世界で活躍できるような有望な人材を育成する事を目指しており、卒業生も既に、Gnomon, Savanah college of Art and Design, School of Visual Arts等に留学し、アメリカでキャリアを積むために励んでいるという。

 
○充実したカリキュラム タイ文部省の認可も 

 世界水準のニーズに合わせた最新のカリキュラムを提供するため、MAYAアドバンスのクラスは「ワークショップ」と呼ばれ分野別になっている。

 カリキュラムの構成としては、まずMAYAの入門クラス、そして分野に分かれてモデリング、テクスチャリング、ライティングとレンダリングのワークショップを個人の要望によってピンポイントで習得できるようになっている。

 授業の水準は高く、課題の量の多さもアメリカ大学レベルで、中には授業についてこれない学生もいるそうである。

IMG_2820.jpg スクールはオープン以来、どのクラスも好調だという。受講生は現地の大学生の他、社会人も多く、企業やNPOからの特別クラスの依頼も受けており、昨年は現地でのACM SIGGRAPHからレンダーマンによるライティングの特別クラスの要望にも対応した。

  タイの美大や有名大学のマルチメデイアの学部と比較しても、MAYAのアドバンス・スキルをしっかり教えている学校は無く、B-DIGITALは最先端を行く存在だ。

 また、タイの文部省の認可も受けている事も特徴と言えるだろう。


○学校の今後の展望、日本からも留学可能 学費はリーズナブル

 近い将来、次世代ゲームの開発に不可欠な、デベロッパーからのアウトソーシングのニーズに対応できるようにB-Digital Productionsを近々に起動させる予定だという。

 タイ国内の学生はもとより、日本を含む国外の学生を増やしていく予定。近々に英語または日本語のMAYA入門またはアドバンスの「ワークショップ」短期集中講座を考慮中との事なので、ご興味のある方は是非、問い合わせてみると良いだろう。

 要望にあわせてマンツーマンの個人レッスンにも対応できるという。

 ちなみに日本からB-DIGITALへ入学する場合は、今の時点では観光ビザでを取得してからの渡航となるが、将来留学ビザでの受け入れ体制も考慮中だという。

 気になる学費だが、現在、MAYA入門クラスは計42時間で、2万5千バーツ。タイ現地では決して安くない授業料だが、日本とタイとの為替の関係で、日本円に換算すると8万円相当(!)と、学費としてはかなりリーズナブルだ。

 これに滞在費を入れたとしても、アメリカのCGスクールに短期留学する半分以下の予算でMAYAとレンダーマンが本格的に学べてしまう事になる。

 しかも、教えてくれるのは元ハリウッドの現場とゲーム制作会社で活躍していたアーティストだ。

 平日はMAYAとレンダーマンを学び、夜は本場のタイ料理やジャズのライブ・ハウスでナイトライフを楽しむ。そして、週末は寺院めぐりやチャオプラヤー河で観光。

 そんなCG留学も捨てがたく、魅力的なのではないだろうか。


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(写真右)ヴィラッジ アンドリュー ブナグ [Viraj Andrew Bunnag]  
 
 タイで生まれ、香港、シンガポールで育つ。パリの美大ESAG Penninghenで美術の基礎を学び、卒業後バンコクでアーキテクトとして働いていた経歴を持つ。その後、米パサデナの美大Art Center College of Designにて3DCGの基礎を学び、デジタル・ドメインに入社。映画「ザ・デイ・アフター・トゥモロー」「ステルス」等のハリウッド映画に参加した後、タイのバンコクに戻り、CGスクールB-DIGITALを設立。


(写真左)笠井睦子 [Mutsuko Kasai Bunnag]
 
  父親の転勤で小学生で日本を離れ、ロスで育つ。Rhode Island School of Designで美術の基礎を学び、卒業後パサデナの美大Art Center College of DesignのArt Center at Nightにて3DCGの基礎を学ぶ。2003年にPandemic Studioへ参加し、数多くのゲーム作品に参加。中でも 「スターウォーズ バトルフロント2」が有名。現在ご主人と共に活動拠点をタイのバンコクに移し、B-DIGITALを経営。タイでのCG教育分野で活躍中。

笠井氏のPandemic Studio時代のインタビューは「海外で働く映像クリエイター」で読むことが出来る。

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  B-DIGITAL SCHOOL  (2008年現在)

 -CGクラスのパソコン台数は16台(1クラス生徒の人数は16人まで受け入れ可能)

 -MAYA入門クラス:計42時間。
   MAYAアドバンス・ワークショップ:計12-18時間。

 -Autodesk MAYA, Pixar's Renderman for MAYA, Adobe Photoshop のライセンスを所有。

 ※未だ不法ライセンスが蔓延するタイの社会において、正規のライセンスをパソコン台数分きちんと所有しているのは「極めて稀有」なのだそう。

 

この記事は2008年現在のものです。学校の連絡先、住所等は予告なく変更になる事もございますので、ご了承ください。
 


 


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