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映像ジャーナリスト 鍋 潤太郎の随筆による、ハリウッドVFX情報をいち早くお届けします。

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ここロサンゼルスでは、ACM SIGGRAPHの地方分科会である"LA SIGGRAPH"の月例会が毎月開催されている。内容は毎月異なり、新作映画のお披露目やメーキング講演だったり、目新しいテクノロジーの紹介だったりする。

この月例会には誰でも参加出来、会員(年会費$25.00)になれば参加費は無料、非会員でも会場で10ドルを支払えば参加する事が可能だ。

今月の会場は、ビバリーヒルズにあるアカデミー財団(アカデミー賞の主催でおなじみ)の施設である、Samuel Goldwyn Theaterという由緒正しき試写室が使用された。この場所での開催は久しぶりである。

ただ、場所が場所だけに、入り口にはテロを警戒する金属探知ゲートが設置され、参加者全員がセキュリティー・チェックが義務づけられるという、LA SIGGRAPHにしては珍しく厳重な警備の下で行われた。

アカデミー財団だけあって、試写室のステージ両脇には金色の巨大なオスカー像がそびえ立ち、いつになく格調高い豪華な雰囲気。なんだか自分が急に出世したかのような錯覚を覚えたのは、筆者だけではないだろう(笑)

さて、5月のテーマは、日米でほぼ同時公開となり大ヒット中の「Xmen2」のメーキング講演&特別試写会であった。

ホストは、この作品の主要エフェクト・ショットで使用されたHoudiniの開発&販売元でおなじみ、Side Effects Software。

ミーティングの冒頭では、同社の米国代表を務めるTony Cristiano氏が挨拶に立ち、Houdiniの最新Version6.0のリリースに関するコメントと、ラインナップの簡単な紹介、そしてSIGGRAPH2003でのユーザーミーティングの告知を行った。

今年7月にサンディエゴで開催されるSIGGRAPH2003では、7月27日の日曜日にHoudiniの国際ユーザー会が予定されているとの事。

申し込みはWEBで受け付けているそうなので、参加希望の方はwww.sidefx.com で予約すると楽しいかもしれない。

さて、前置きが長くなってしまったが、それでは今夜の模様を簡単にレポートする事にしよう。

ちなみに、まだ映画をご覧になっていない方でも、下記にはストーリー上の「ネタばれ」は含まれていないので、安心して目を通して頂きたい。


L.A. ACM SIGGRAPH presents

A presentation and screening of "X2: XMen United"

Hosted by Side Effects Software

Tuesday May 20th

6:30-7:30pm Social Hour
7:30-10:30pm Presentation and Screening

Location:
Samuel Goldwyn Theater
Academy of Motion Picture Arts & Sciences
8949 Wilshire Blvd.
Beverly Hills, CA 90211
between Doheny Dr. and Robertson Blvd

This event is free to L.A. SIGGRAPH members and $10 for non-members.


As one of the most anticipated summer releases, X2: XMen United opened this
month to the biggest worldwide boxoffice return in history.

Our meeting will feature "making of" presentations of the film's visual effects
as well as a special screening of the movie.

Artists from Cinesite and Rhythm & Hues will be on hand to discuss the creation
 of innovative effects from Nightcrawler's teleportation to Storm's tornado's.

パネラーの顔ぶれ
 
  Greg Anderson  / CG Supervisor  - Cinesite Hollywood
  Arnon Manor / CG Supervisor -  Cinesite Hollywood
  Craig "X-Ray" Halpern / CG Effects TD  - Cinesite Hollywood

  Doug Bloom / Tornado Effects Lead  - Rhythm & Hues
  Mike O'Neal  / Lead Effects Animator  - Rhythm & Hues

 

~メーキング・オブ・Xmen 2~

○Arnon Manor / CG Supervisor -  Cinesite Hollywood

ミュータントの1人であるナイト・クローラーの、瞬間移動(テレポーテーション)のエフェクトについて説明する。このエフェクトは「どのように見せるか?」が最大のチャレンジだった。
 
「瞬間移動」という設定なので、たった7フレームで表現しなければならなかった。 

その為「タイミング」が命。ワイヤーで吊った俳優Alan Cummingの回し蹴りショット、そしてグリーン・スクリーンで撮影した「顔を蹴り飛ばされる警備員」、そしてCG素材の全てが、最終的にはタイミングよく合っていなければならない。

撮影素材は、それぞれがタイミングがまちまち。これらをタイム・コンバージョンした上に、それを7フレームという、ほんの1瞬の中にうま~く当てはめるのだから、これはなかなか大変だった。

また、この「瞬間移動」のエフェクトは、全部で50-60回も登場する。その為、何度見ても不自然に見えない、しかもリアルで新鮮なエフェクトである事が要求された。

我々がストリーマー・レイヤーと呼んでいる煙状のレイヤーでは、タービュランスPOPと自社開発レンダラの組み合わせ。そしてVEXのボリュームレンダラも使用している。  

ナイト・クローラーの全身から、200万個のパーティクルが飛び出す。ショットによっては3000万個のパーティクルを使っている。

最終的に監督からOKをもらったのは、昨年の12月だった。


○Craig "X-Ray" Halpern / CG Effects TD  - Cinesite Hollywood 

 私は最近、日本資本の研修施設、デジタル・ハリウッドのサンタモニカ校の校長に就任した。近々に、Houdiniのマスタークラスもオープンするつもりなので、興味のある人は是非WEBをチェックしてほしい。

さて、ここではサイクロップスの目から出るビーム攻撃のショットを説明しよう。
 
今、ご覧頂いているシーンは、サイクロップスのビームで4駆が横転するシーンの撮影オリジナルショットだが、これは少々間延びした感じだ。これをタイム・コンバージョンして速度を上げた上で、かなりのレイヤーのエフェクトを加えた。
 
このエフェクトには、Houdiniのノイズ・シェーダーを多用している。 

また、次のショットはビームで警備員が吹っ飛ぶという設定だが、警備員は背中にワイヤーをつけてあり、それを引っ張って吹っ飛ぶ演技をしている。

だが、役者が壁にぶつかった瞬間、セットなので壁が揺れてしまっている。これを監督が気にした為、この揺れを後処理で静止させる作業が発生し、これにはけっこう時間をとられた。

この上にビームのエフェクトを加えた訳だが、監督に満足してもらう為に、かなり多くのバージョンを作った。

 (そのテスト映像が流れる。中にはアニメチックなものや、調整途中で不自然なものが含まれており、参加者の笑いを誘っていた)


○Greg Anderson  / CG Supervisor  - Cinesite Hollywood

これは、ダムの水力発電所でジーン・グレイが、彼氏であるサイクロップスから攻撃を受け、それを必死に防ごうとするシーンだ。

2人の戦いの衝撃によって揺れる発電機はミニチュア。パーツ別にワイヤーを貼って動かしている。これだけだと不自然なので、CGでかなり作り足している。その上に、閃光、プラズマ等のエフェクトを加えた。
 
エフェクトだけでも13-15レイヤーをテストしたが、最終的には3~4レイヤーにまとまった。

ビームのレイヤー、爆発の衝撃のレイヤー、閃光のレイヤー、そして発電機から出るプラズマ等。これらを合成して、ファイナルの状態に持っていった。

最後に登場する湖面のショットは、実写をトラッキングした上で、CGの水面に差し替えた。水面はオリジナルソフトで作った。HDRやレイトレーシングも採用した。

このテスト映像では、なぜか湖面にネッシーが合成されているが、これは単なる冗談だ(場内爆笑)

 
○Doug Bloom / Tornado Effects Lead  - Rhythm & Hues

私は、戦闘機のドッグファイトに襲い掛かる竜巻ショットのリード(日本でいうチーフ)を務めた。

この一連の作業で一番大変だったのは、ジオメトリのマネージメントだった。

具体的には、アニメーション部門が作った竜巻のアニメーション・データが、我々エフェクト部門に渡される訳だが、アニメーション部門は自社ソフトを使っていて、エフェクト部門はHoudini。なので、このデータのマネージメントを成功させる事が今回の最大のチャレンジだった。

これらは全部で32ショットもあり、全部で108本の竜巻が登場する。
 
こんな作業は初めてであり、オンタイム(スケジュール通り)で完成させる為のデータのやり取り及び管理、と言ったパイプラインのマネージメントが重要だった訳だ。

アニメーション部門では、専門のアニメータが竜巻の動きをつけ、監督のOKをもらって、その結果が我々に回ってくる。まずは、この動きやタイミングを元に、ラフな竜巻を構築してみた。この段階のコンバートは8割はうまくいったが、残りの2割の、「痒いところ」に上手く手が届かなかった。

テストを見た監督から「もっとダイナミックに」という意見が出た事もあり、これに応える為に自社開発のプラグインも開発した。

これは、空間を漂うパーティクルが、自動的に一番近い竜巻を見つけ、それに巻き込まれるように動くというもの。結果は、ご覧のように上々だった。

Houdiniは非常にフレキシブルで、このようなカスタムツールの開発がやり易い点が最大の強みだと思っている。
 
レンダリングにはJigのボリューム・レンダラを使用した。

背景は実写ではなく、すべてCGとマットペイント。実写が登場するのはパイロットが登場するショットの1箇所だけだ。

この竜巻ショットは、6人のエフェクトTDが、4ケ月掛かりで完成させた。


○Mike O'Neal  / Lead Effects Animator  - Rhythm & Hues

ジーン・グレイが「水分け」をするショットの解説をしたい。全部で40shotもあり、大変な作業だった。

今、映写されているのは予告編のバージョン。この予告編は、木曜日に話が来て、週明けに必要だというので3日で作った(笑)なのでファイナルとは見た目が異なるが。

このショットでは2タイプの水を用意した。ジオメトリとパーティクルによるものだ。 

「水分け」のショットでは、飛行機に跳ね返る細かい水滴や、飛行機に迫る滝のような水流の部分に、かなりの種類のボリューム・レイヤーを足して、質量や質感を向上させたり、レイヤー同士の境界が馴染んで目立たなくなるように工夫した。
 
これは、映画のラスト近くでの、決壊したダムの上を飛行機が去っていくショットだが、ここでは全部で14レイヤー程を使っている。
 

質疑応答:

 Q:あの~、合成ソフトは何を使っていますか?仕上がりが大変美しかったので。

 A: CineSiteでは、自社開発のCineonの合成システムとソフト。そしてShakeも使っている。
 A: R&Hはインフェルノ。後はオリジナル合成ソフト。

…と以上のようなプレゼンテーションが行われた後、映画「Xmen2」の試写会が行われた。


今夜の月例会の参加者は、テーマがメーキングと試写会という事もあり、大手のエフェクト・ハウスで働く人の姿が多かった。筆者にとっては顔見知りや、久しぶりに再会する友人も多く、楽しい夜であった。


 

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(C)1997-2009 All rights reserved  鍋 潤太郎  
 


 

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