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映像ジャーナリスト 鍋 潤太郎の随筆による、ハリウッドVFX情報をいち早くお届けします。

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[ハリウッドのエル・キャピタン・シアターにて 筆者撮影]

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○はじめに

10月2日(金)より、「トイストーリー」&「トイストーリー2」の3D立体版が、特別上映という形で全米公開の運びとなった。

これは2週間限定という特別企画で、「トイストーリー」ファンにとっては、まさに"垂涎モノ"のリバイバル公開である。

今回は、その話題を皆さんにお届けする事にしよう。

フルCG映画「トイストーリー」は1995年に、そして2作目の「トイストーリー2」は1999年にそれぞれ公開され大ヒットしたが、今回はこの2作品をすべて"3D立体バージョン"で再レンダリングし、立体映画としてリバイバル公開したもの。

3D版での公開は全米1,745館規模で行われているが、今回は"ダブル・フィーチャー"と銘打って、1枚のチケットで2本を続けて鑑賞出来るのがミソだ。


○ハリウッドのエル・キャピタン・シアターでは特別な演出が楽しめる

その中でも、ハリウッドにあるエル・キャピタン・シアター[El Capitan Theater] は、ディズニー直営映画館という事もあり、おそらくは全米で最も気合の入った(?)スタイルでの上映が行われている。

そもそも、このエル・キャピタンはディズニー作品を専門に上映する、ハリウッドでも珍しい映画館で、世界的に有名なチャイニーズ・シアターの斜め前に鎮座している。

普段はディズニーの最新劇場公開作の他、過去の名作のリバイバル上映を頻繁に行う事でも知られている。最近では「白雪姫」(1937)のデジタル・リマスター版が公開されており、この秋にはハロウィン・シーズンに併せて「ナイトメア・ボフォア・クリスマス」の3D立体版なども上映される予定だ。

さて、ここエル・キャピタンへ足を運ぶと、まず上映前に、ディズニー作品の名曲の数々がオルガンの生演奏によって披露される。

[オルガンの生演奏。ライブはやっぱり違う!]
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その後には、「トイ・ストーリー」のキャラクターが出演するミュージカル・ショウ(!)が上演され、ハリウッドにいながらディズニーランドさながらの豪華なショウが楽しめるのだ。

また、VIPチケット(指定席/$24.00)購入すると、ポップコーンとドリンクが漏れなく付いてくる。しかも、お代わりが自由だ。これで$24.00は安いと言えるだろう。

楽しいミュージカル・ショウが終わると、いよいよ映画の上映である。場内は完全に満席で、多くの家族連れで賑わっていた。

映画2本分を鑑賞するので、1回の上映には3時間近く掛かる。1作目と2作目の間には10分間の休憩が挟まれ、休憩中にはスクリーンに「トイストーリー」関連のクイズが出題されるなど、待ち時間中も観客を徹底的に楽しませる心ニクイ演出が行われていた。


[VIPチケットを買うと、こんなバケツに入ったポップコーンがついてくる]

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○ピクサーが3D版を再レンダリング オリジナルを忠実に再現

今回の「トイストーリー1&2」の3D立体版だが、2D処理による擬似立体視化ではなく、レンダーマン上で右目&左目のカメラを設定し全コマを再レンダリングしなおすという、読んで字の如くの正確な「3D化」が行われている。

話題作のリバイバル上映という意味では「スターウォーズ スペシャル・エディション」が思い出されるが、同シリーズの再公開時のような追加ショットや、部分的な変更などは一切加えておらず、オリジナル作品公開時の映像を「そのまま」立体化して再現している。

その中で、最新シェーダーやレンダリング・テクニックを用いて「絵のクオリティ向上させる事」に取り組んだのだそう。

立体視の設計は、いたずらに画面から飛び出すスタイルではなく、スクリーン面からの奥行きを強調しており、映画館で2本連続で鑑賞しても、然程目が疲れなかった。

バズ・ライトイヤーの頭部の透明なヘルメット部分がクローズアップ・になるショットで、画面の広い範囲に屈折や反射が及ぶと、立体視がややしずらい箇所が1~2ショット見受けられたが、それ以外は殆ど立体視や視差の問題は気にならなかった。

ちなみに、ここエル・キャピタンでは、ReadD方式による立体上映が行われていた。


○テクノロジーの進化が生んだ立体版

年月が経つのは早いもので、「トイストーリー2」は、かれこれ10年前の作品、「トイストーリー」に至っては14年前の作品である。

1作目当時のレンダリング時間は1フレームあたり2~15時間を費やしたそうだが、現在の大規模プロダクションには不可欠の「レンダー・ファーム」が世界に先掛けて導入されたのも「トイストーリー」だった。

サン・マイクロシステム製の100台以上のレンダー・クラスターがフル稼働した事も、当時は大きな話題の1つとして注目されたものだ。

9月4日付のウォールストリート・ジャーナル紙も、「『トイストーリー』制作当時は1フレームの計算に1時間以上かかった計算も、今では瞬時に終わる時代となった」というジョン・ラセター氏の談話を紹介していたが、今回の立体化作業には果たしてどの位の時間を費やしたのだろうか。

この立体化は、専門チームを立ち上げ、最新設備の元に進められたが、それでも過去のデータを掘り起こし、最新のレンダーマンで計算出来る状態まで持っていくのに約4ケ月、右目左目の立体視画像のレンダリングに(各作品で)6ケ月づつを費やしたそうで、テクノロジーが進化したと言えども、かなり大変な作業だった事が伺える。

ちなみに、今回の3D立体版のエンド・クレジットは、その立体化専門チームのクレジットが追加されているが、それ以外は昔のままで、サン・マイクロシステムズに加え、シリコン・グラフィックスなどの社名も当時のまま登場しており、懐かしさを感じさせられた。


○「トイストーリー3」のプロモーションも兼ねた、今回の3D立体リバイバル

[ハリウッドの町中にあった、巨大なビルボード]
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今回の特別上映は、来年の6月18日に全米公開を控えている「トイストーリー3」のプロモーションも兼ねているという。

「トイストーリー3」の予告編は今回、本編の上映前に立体で登場し観客を喜ばせたが、3作目はIMAXシアターでの立体上映を考慮し4K解像度でレンダリングされる予定だという。公開が今から大変楽しみである。

このように、話題性充分の「トイストーリー」&「トイストーリー2」の3D版が、特別立体上映だが、気になる日本での3D版の上映はいつなのだろうか?

日本では、まだ少し先ではあるが、来年(2010年)5月からの公開が予定されているとの事。

「トイストーリー」を14年前に観た方も、初めて観る方も、是非ともお誘い併せの上、映画館に足を運んで頂きたい。

この3D版の上映は見逃すと一生後悔する事になるかも……?
どうか、来年5月のチャンスをお見逃しなく!!
 

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