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b9ef2be4.jpgハリウッドの各メディアが2月9日付で報じたところによれば、昨年全世界で公開された"香港版"フルCG映画「アストロボーイ(Astro Boy)」を制作したImagi Animation(香港)が、この程正式に閉鎖された事がわかった。

Imagi Animationは2000年に設立された香港を本拠地とするアニメーション・スタジオで、アメリカで大人気を誇る「ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ」(2007)のフルCG映画を制作、ワーナーの配給によって全米公開し、興行的に成功した事で知られる。

その後も「スーパーヒーローもの」路線を採り、最近ではLAにも制作拠点「Creative Studio」を構え「アストロボーイ」の一部がここでも制作され、昨年10月23日(金)に最新作「アストロボーイ」が全米公開された。

しかし、本欄でもレポートしたように、「アストロボーイ」の米ボックス・オフィスの数字はかなり厳しい結果に終わった。

米報道によれば、「アストロボーイ」全米公開直前である昨年9月末の段階で、Imagi Animationは米ドルで$93.4million(日本円にしておよそ84億円)の損失を計上していた。

また「アストロボーイ」のプロダクションが進行中だった昨年1月~2月には、資金難によってCreative Studioでの制作が3週間に渡って中断するという事態も起こっていた。

映画「アストロボーイ」の制作予算は$65million(約58億円)だったが、全米公開の売り上げは$19.5million(約17億円)にしか到達しなかった。

これらのビジネス的な失敗の影響を受け、香港の本社、そしてLAのCreative Studio(従業員数約30人)も、残念ながら完全に閉鎖されるに至った。

同スタジオでは、日本の作品「ガッチャマン」「鉄人28号」のフルCG映画のプリプロ&デベロップも進められていたが、こちらは現時点では制作が白紙or継続される等の詳細は不明だという。

ただ、一部報道によると「同社の本拠地があった中国、及び制作コストが低い近隣諸国にアウトソーシングする形で、開発と制作は継続される可能性がある」という情報も流れている。

昨年12月の段階では『「ガッチャマン」はフルCG立体映画として公開する』というプランが同社から打ち出されていただけに、今後の動向が注目されるところだ。

フルCG映画の成功には、

 ・長い歳月に及ぶプロダクションの制作資金の確保
 ・優れたアーティスト&エンジニアの雇用
 ・大規模ディストリビューション(配給)を実現出来る映画会社との提携
 ・優れた脚本とストーリーをデベロップ&実現出来る監督の手腕

このどれが欠けても、ビジネス的な成功はなかなか難しい。

その意味では、これまでのハリウッドにおけるフルCG映画の成功事例は、その殆どが巨大資本力を持つ米メジャー・スタジオ系列のスタジオだ。

しかし、このImagi Animationが行った『香港主導で、世界配給を前提とし、アメリカでの人気度が高い「日本の作品」をモチーフにフルCG映画を制作する』という他に例を見ない革新的なビジネス・スタイルは、実際のところハリウッドでも注目されていた。また、米アニメーション業界では"業界の発展"という視点から、彼らを支持する声も出ていた。

「アストロボーイ」の場合、インターネットにおけるアメリカ人観客の書き込みを読むと、

 「予想外に良かった」
 「期待しないで観たが、良い意味で裏切られた」
 「自分の子供達も喜んでいた」
 「素晴らしいファミリー映画だ」

というポジティブな感想も見られたものの、

 「古くからのTezukaファンとしては、落胆した」
 「"本物"のアトムを全く知らない人であれば、楽しめるだろうが」

と言った辛口の意見も多く、それがマイナス要因に繋がった可能性は否定出来ない。

ただ、香港のスタジオがビジネス面でハリウッドに切り込み、実際に大規模配給まで漕ぎ付けたという実績と、その結果の興行的な失敗は、今後のハリウッド・ビジネスの中では評価と教訓として生かされていく事だろう。

ちなみに、米映画史上では、フルCG映画のビジネス的な失敗により制作スタジオが完全閉鎖に追い込まれた事例には、スクウェアUSA・ホノルル・スタジオ(ハワイ州)、Fox Animation Studios(アリゾナ州)等がある。

関連記事:

 「アストロボーイ」全米公開 米ボックス・オフィスは厳しい数字 (10/27/2009)

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